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【繁浩太郎の言いたい放題】BMW MINI試乗記 MINIブランドの本質は際立った、他にはない良さだ

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【繁浩太郎の言いたい放題】BMW MINI試乗記 MINIブランドの本質は際立った、他にはない良さだ

国内では3ドア、5ドア、コンバーチブル、クラブマン、クロスオーバーと5つのモデル・バリエーションがあるが、今回のモデルチェンジは3ドア、5ドア、コンバーチブルが対象となる。そのデザインなどの変更幅はMINIブランドらしく少ない。フルモデルチェンジでも、大きく変更されないMINIを考えると頷ける。

■MINIのブランド

【コラム】「薄っぺらエンブレムとスタイリッシュなユニオンジャック」~新型MINI

これは、唯一無二というMINIブランドを大切にしているからで、そこから外れるとユーザーから認められなくなりMINIでなくなる。もちろん、時代進化分の性能や装備は十分取り入れている。

MINIブランドについて、世界的に有名な「狩野モデル」(※)の品質概念で説明したい。
※狩野モデル・・・1980年代に東京理科大学教授の狩野紀昭によって提唱された品質要素を分類し、記述したモデル。マーケティングや品質管理の分野に対して多大な影響を与えたモデルであり、世界的にはKano Modelとして知られる。

まず、左上の「魅力品質」とは、無くても商品は成り立つが、あると他社との違いや魅力になる品質。例えば、すごく綺麗なボディ塗装など。
左下の「一元的品質」は、あればあるほどユーザーが喜ぶ品質。例えば、装備や質感、走行性能などが相当する。
そして、右下の「当たり前品質」は、無ければ商品にならない品質だが、あってもユーザーの満足にはいたらない品質。例えば、電線やラジエーターなどの機能構成部品。
これで言うと、今将来のクルマ像として言われている「CASE」などは、いま時点では「魅力品質」だが、そのうちどのクルマもそうなれば、あって当たり前という「当たり前品質」になる。よって普及したアイサイトなどは、今では「当たり前品質」に近い。

■MINIの際立つ魅力

MINIは今回のマイナーチェンジで、当たり前品質になりつつあるものは、確実に取り入れてきているが、一番大切にしているのは「魅力品質」だ。

それはMINI故の「形」や「設計思想」からくる、クラシックミニに由来するあのエクステリア・デザインは、なんとも愛らしく惹きつけられる。また、インテリアはクラシックミニのセンターメーターをイメージした大きな丸型のディスプレイに始まり、遊び心のあるデザインが隅々までいき届いている。

そして、「ゴーカート・フィーリング」と言われる走行性能もそうだ。ボディカラーも非常に綺麗で質が高く、バリエーションも整っている。このように、他車とは全く異なる独自の「魅力品質」が多いのがMINIで、まさにブランドが際立ったクルマなのだ。
フォルクスワーゲン ゴルフとの比較だと分かりやすい。ゴルフは機能性重視の内外デザインから性能、装備まで「一元品質」のレベルは高いが、「魅力品質」は少ない。販売台数の多さを考え万人受けするようになっているからだ。

■好調なMINIの販売

MINIのように「魅力品質」が特化されたクルマは万人受けしずらく、販売台数もゴルフ程はいかないのが普通だ。よって、販売台数増を狙う一般的なカーメーカーは、限られたコストのなかで「当たり前品質」は勿論「一元品質」を上げる方向に向かうので熾烈な競争になる。しかし、これはお分かりのように商品の個性が少なくなる方向なのだ。

しかし、MINIの国内販売台数は、常識をくつがえして伸び続けている。その結果、2015年の「フォルクスワーゲン・ディーゼル問題」の影響はあるとしても、16年度、17年度とMINIが輸入車国内販売台数トップで、2位がフォルクスワーゲン「ゴルフ」、3位がメルセデスベンツ「Cクラス」となっている。
世界新車販売の結果も、2017年MINIは前年比3.2%増の過去最高37万1881台を達成している。

■試乗レポート

まず、今回の少ないと書いたが、主な変更幅をおさらいしておく。


外から見た目としては、ヘッドライト周りのデイライトとターンライトを兼ねたLEDライトの輪が前モデルでは下側が欠けていたのが一周つながったデザインに変更。テールランプの模様がユニオンジャックが描かれ、またステアリングの中央につくエンブレムのデザイン、さらにグリルなども変更されている。しかし、これらはハッキリ言って「間違い探し?」に近いかもしれない。

その他機能関係は、DCTトランスミッション、コネクテッド関係や装備、ナビなども進化している。

さて、試乗車は、クーパーSの5ドアで2.0Lツインパワー・ターボ7速DCT、それにジョン・クーパー・ワークスのアクセサリーがついているものだ。

ドライブ・モードを、省燃費の「グリーン」、ノーマルの「ミッド」、「スポーツ」の3種類の中の「ミッド」でスタート。
MINIは、ゴーカートフィーリングと良く言われるが、まずアクセルペダルの踏み込みと同時にリニアに加速し、切れるハンドリングと相まって、なるほどミニらしい感覚だ。これを省燃費の「グリーン」にすると、アクセルペダルを多めに踏んでから加速する。つまり、「ジェントル」になる。
個人的には、このジェントルなグリーンモードがMINIらしくはないのだが、扱いやすくていい。「スポーツ」モードは、まさに「ゴーカートフィーリング」に近づく。

それにしてもこのDCTは変速がスムーズで、かなり洗練されている。ただ、固めの乗り心地にはこだわりを感じるが、全体としては初代の危険なほどのゴーカートフィーリングはなくなった。
ある意味時代性と5ドアの追加などで、より多くの販売台数を達成するようになってユーザー層も広がったミニとしては順当な進化と思える。

また、当然NVHやシート形状などが特に良いというような一元品質コンセプトの一般的なクルマではないこともよくわかる。つまり一元品質関連は特に何かに特化していないのだ。
内装は、センターディスプレイからスイッチまで、オシャレでセンスよく他車にはない楽しさ満載だ。これは走行中ずっと感じることができ、さらに飽きない。

やはりこの「オシャレでセンス良く、楽しい内外デザイン」と「MINIの走り感」を感じなから走れることが、このクルマの際立った、他にはない良さで、これがMINIブランドなのだ。

■ミニの今後

台数ありきで「当たり前品質」と「一元品質」を頑張り、「魅力品質」の少ない他車が多いマーケットの中で、競合車がない状態になっているMINIは、今後、さらに販売を伸ばしていくものと思われる。

ただ、心配なのはさすがのMINIも、販売台数ありきに少し流れてきていないか?ということだ。

三代目のボディ大型化は、やはり北米や中国マーケットを意識したものと思われる。北米や中国ではこれくらいのサイズでも十分ミニと言ってもらえるとは思うが、MINIの小粋なイメージからはギリギリのとこだろう。また、販売台数がいけるからと、その拡大と収益を考えてプレミアム化していくと、ブランドからもユーザーからも離れていってしまう心配がある。

ブランドを守りながら育てる(販売台数増)ことの難しさの壁をどう乗り越えていくか。これがMINIの最大の課題と思う。

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