今回のマツダ「CX-3」における大幅改良のポイントは、4つの分野で行なわれ操安性、乗り心地、静粛性の進化、Skyactiv ガソリン、ディーゼルエンジンの進化、デザインの進化、そして安全性能の進化という分野だ。試乗してお伝えしたいのは、主に、操安性、乗り心地、静粛性、そしてエンジンのフィーリングという項目で、実際に乗ってみてのレポートをしよう。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>
試乗したのはFFのガソリン車とAWDのディーゼル車の2台。
まずはFFガソリン車から。すでにお伝えしているようにインテリアも高級感が増し、クラストップの出来栄えといっていい。所有欲も含め満足度の高いインテリアだ。クラスを超えプレミアムクラスと比較しても遜色がないと言えば伝わるだろうか。
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■乗り心地抜群のFFガソリン
エンジンをスタートし走り出すと、最初に感じるのは、滑らかに走ることだ。CX-5のフルモデルチェンジで味わった、滑らかで高級な乗り味がCX-3にも、降りてきた感じで、量産大衆モデルの域を超えた滑らかさがある。この滑らかさは誰でも感じることができるほどの違いがあり、まさに大幅な改良が行なわれたことを感じたのだ。
操舵をしてみると、直進からの切りはじめに適度な手応えを感じながら切れる。追操舵まで手応えがずっと続き、ドライバーはタイヤの存在を感じ、安心感につながるフィールが続く。切り戻しも徐々にタイヤの抵抗が減り、手応えが次第に弱まっていく感じもリアルで、自然に感じる。
特に直進の座りをキチンと感じられつつ、切りはじめの手応えが絶妙で、フォルクスワーゲン系のように、切りはじめの抵抗が強く滑らかさを感じないという操舵感ではない。また、センターの存在が薄いタイプでもなく、まさに絶妙な味付けに仕上がっていると思う。
ダンパーは前後ともにサイズアップし、取付け剛性までも変更されているので、しなやかに動く。特にこうした量産クラスで多いのは、ダンパーピストンの微低速域でのフリクションだ。つまり、路面の細かな凸凹に対する減衰が綺麗にできていて、突っ張った感じや擦れるようなフリクションが全くない。市街地、首都高速での試乗は、いわゆる日常使いでの乗り心地であり、その評価としては満足度が高い。高級車に乗っている感触だ。
欧州の量産クラスはすでに、この領域にありCX-3もそのレベルに仕上がっていて、グローバルで戦えるということでもある。さらにインテリアの質感もプラスされているので、欧州車を含めクラスを超えるモデルと評価できる。
その高級な乗り心地に貢献しているのが、新設計のシートがある。新しいウレタン材を採用することでシート減衰の特性も変わり、座り心地としては、ドイツ車とフランス車の中間というざっくりした表現になるが、クルマ好きには伝わると思う。
座った瞬間硬さやしっかり感を感じるドイツ系に対し、ソファに座ったようなシトロエンのシートとの中間で、適度なソフトさと剛性感を感じながら、おしり、腰、太ももの裏側でウレタンの減衰を感じるのだ。走行中の路面からの入力をダンパーが減衰し、ボディに伝わり、最終的にシートでさらに振動を吸収しているといった感じだ。
それと、マツダ専用タイヤの開発も大きく貢献している。どうしても扁平タイヤだと乗り心地が犠牲になる部分もあるが、マツダ独自の新開発タイヤによって、扁平でありながら乗り心地を犠牲にしない、いや、乗り心地が良くなるタイヤを装着しているところも凄い。ちなみに試乗車の装着サイズは215/50R-18で銘柄はトーヨーのプロクセスだった。
だから、クルマに興味のない人でも「このクルマ乗り心地いいね」という感想を持つはずだ。
乗り心地の良さや滑らかさを際立たせているのが、地味だが音の静かさが大きく寄与していると思う。風切り音が非常に小さく、路面からの音も良く抑えてある。この大幅改良前はフロアパネルからの音が少し大きく気になるポイントではあったが、Bセグメントモデルとしてはクラスレベルだったと記憶している。が、クラスを超えるレベルの静粛性になっているのだ。
また、GVC(G-ベクタリングコントロール)の存在も見逃せない。分かりにくい性能、機能ではあるが、直進性の高さや、コーナーでの横Gの少なさは、高級に感じる乗り心地に対して、縁の下の力持ちとして大きく影響していることも間違いないのだ。
1点だけ気になった点として、ここまで滑らかで静かになったことが影響しているのだが、2500rpm付近の時だけ、フロアパネルの振動とステアリングに伝わる振動があったことだ。何か共振するタイミングが存在しているのだろうが、これも僅かなもので気にするか、しないかのレベル。だが、あまりにも他が良すぎるので気になった。
■ディーゼル試乗記
クルマを乗り換えてAWDのディーゼルに試乗する。
エンジンは1.5Lから1.8Lへと排気量アップしているが、かつてのエンジンのように大排気量化してパワー/トルクアップを体感、ということではなく時代に適合させる「効率」という観点から排気量変更が行なわれ、排気量が上がっても実用燃費は向上しているのだ。しかし、エンジン特性としては、全域でトルクアップという特性変更にはなっている。
乗ってみると、1.5Lより、今回の1.8Lのほうが、より滑らかになったという印象だ。加速させるときに、ターボを使うことから加速度にわずかな変化があった。これを力強さと感じているのだが、加速度の変化率を小さくし、途切れなく滑らかな加速を続ける仕様に変わっている。
だから、人によっては力強さが弱くなったと感じるかもしれないが、スーッと連続的に加速をしているからで、それは高級な加速とでもいうのだろうか、加速の質が変わったということだ。
最初に乗ったFFガソリン車の滑らかな乗り味を体験してしまうと、ディーゼルはそれより少しザラツキを感じるところがある。もちろん、乗り比べの環境だったせいもあり、最初にディーゼルに乗れば、そうしたことは感じなかったという小さな違いではある。
また、ガソリン車で感じたフロアパネルとステアリングに伝わる振動が、ディーゼルでは現れない。エンジン自体が違うので、エンジンマウントも異なるためそうしたことも影響しているのだろう。
ステア操作に関しては強いて言うとガソリン車より「重さ」を感じるものの、挙動としてはガソリンFFモデルと全く同じで、ただわずかに違うのは旋回ヨーの中心点が少し前になったという程度の違い。
もう一つ、ディーゼルの音がまたさらに静かになったこともお伝えしたい。走行中のゴロゴロ感はもともと薄く、走行中はディーゼルなのかガソリンなのか区別がつきにくかったが、エンジン始動時だとディーゼルであることがわかっていた。が、この1.8Lは始動するときでもディーゼル感が消えているのだ。
小型車のディーゼルは欧州車も含め、ほぼ皆無な状況で、希少な存在となるCX-3ディーゼルだが、長距離や高速道路を多く走るひと、ワインディングも走るという人には絶好のチャンス。また、送り迎えや近所のチョイノリが多く、たまに長距離、ワインディングという人にはガソリン車がお勧めだ。
試乗を終え感じたことは、フルモデルチェンジではないのに、ここまでやるか!だ。間違いのない一台である。
■価格
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