2018年6月18日、ミシュランのプレミアム・コンフォートタイヤに位置づけられる『PRIMACY 4』が発表された。発表に先立ち、先行試乗させてもらったので、早速その実力をお伝えしよう。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>
プライマシー4は、2013年にデビューしたプライマシー3の後継タイヤで、プレミアム・コンフォートタイヤに位置付けられるタイヤだ。乗り心地や静粛性、ウエット性能を求めるユーザーから支持されるブランドで、ブリヂストン・レグノ、ヨコハマ・db、ダンロップ・ル・マンなどが比較されるタイヤだ。
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タイヤサイズは全36サイズで16~19インチ、195~255幅、40~65シリーズのラインアップなので、スモールカーや軽自動車を除けばほぼ、カバーされるラインアップとなっている。このプライマシーシリーズは欧州、国産車を問わず、純正装着しているタイヤでもあり、今回のプライマシー4はすでにボルボ『VOL』マークの指定を受けたタイヤでもある。もちろん、この先多くの車種からの指定タイヤになるのは言うまでもない。
■製品特徴
日本列島梅雨真っ最中だが、このプライマシー4はウエット性能が超寿命であることが特徴のひとつでもある。そしてプレミアム・コンフォートタイヤとしての静粛性、乗り心地といった基本性能も向上させた、というのがプライマシー4になる。
ウエット性能を高めた技術に、排水性能を高める新溝形状がある。プライマシー3と比べると見た目でもその違いが分かる。溝の形状がV字型からU字型へと変更されていて、排水面積が増えていることが分かる。また、もう一つの製品特徴でもある、摩耗時でも性能劣化幅が小さく、安心の排水性能が長く続くことが挙げられる。
残り溝2mmになったタイヤをプライマシー3と比較しても、溝体積で約22%アップしているというので高い排水性能が維持されていることがわかる。
また、コンパウンドでも改良が加えられ、新配合コンパウンドを採用している。ポイントはシリカの量を増やしたことで、低燃費性とグリップ性能の両立を高い次元に引き上げていることだ。シリカ配合ではゴム弾性を持つエラストマーとの結合がポイントになり、その配合技術において新コンパウンドが開発できたということだ。
プライマシー3との比較では、ウエットブレーキ性能で約4.5%短制動となり、摩耗時のデータでも、約13.3%短く止まれるという実験結果だという。また、プレミアム・コンフォートタイヤの基本性能である静粛性でも約6%静粛性が向上している。
■実走テスト
栃木県にあるGKNのテストコースで、プライマシー4を実際にテストすることができた。テスト車は現行型クラウンで装着サイズは純正サイズの215/55R17とフォルクスワーゲン・ゴルフで205/55R-16のこちらも純正サイズでのテストだ。そしてプライマシー3との比較も行なわれた。
ウエット路面では60km/hからの短制動テストと80km/hからの短制動で、新品装着時とすり減った状態、のこり溝2mmでのテストだ。ちなみに車検では残り溝1.6mmで不合格になる。また水深は0.8mm。
テスト方法としてはGPSを利用した装置で、自車速度、位置を計測して指定速度から10km/hまでの減速距離と減速Gを計測する方法で、パイロンを目標にブレーキを踏むという従来のテストのように、ドライバーのスキルが影響する方法ではないので、より正確性の増すテスト方法だった。
ここでのテストでは、明らかにプライマシー4のほうが、新品、摩耗品、どちらも短距離で止まり、また減速Gにおいても、ブレーキを踏んだ直後、その後排水されての中間減速Gを比較してもプライマシー4が上回る結果になった。メーカー公表値の約4.5%向上を体験した。
また、80km/hからのテストでは、その差はさらに広がり、高速道路の雨天走行をイメージすると、その重要性を身近に感じてくる。
次にテストしたのはドライ路面でのテスト。項目はパイロンスラローム、高速バンク走行で、静粛性や乗り心地、そしてウエットでのハンドリング路でのテストだった。
パイロンスラロームや、Wレーンチェンジのテストでは60km/h、80km/hでテスト。リヤのスタビリティの高さやステア応答性などスポーツタイヤと言っても問題ないと感じるほどだ。またロードノイズ、乗り心地でもレベルの高さを感じさせるものだった。
ウエットでのハンドリング路テストでは、車両のVDCが作動するまで攻めても、操舵応答、横剛性の高さがあり、安心できるハンドリングだった。意図的な追操舵や旋回ブレーキに対しても滑り出しはゆっくりでコントローラブルと言っていい。
トータルでみて、摩耗時のウエット路面での短制動の性能とスポーティさが印象的で、メーカーが言うプレミアム・コンフォートタイヤという位置づけの基本性能を確保しながらのスポーツ性が良かったことが印象に残るテストだった。
■開発背景
こうした性能を持つプライマシー4の開発背景が興味深い。2017年のデータで先進安全技術である衝突被害軽減ブレーキの装着率が60%程度あるという。また、2013年から16年にかけてEV/HEV/PHEVの販売伸び率が50%もあり、EV走行できる車両がものすごい勢いで増えているというデータがある。
これらのデータを背景に、緊急ブレーキ作動時にちゃんとグリップしながらの緊急停止と静粛性、乗り心地の確保という性能が求められていることがわかるのだ。また、ミシュランの自社アンケートでは2018年4月、サンプル数370人ではあるが、タイヤに求める性能の1位が雨天時のブレーキング性能というデータもあるそうだ。
実際ゲリラ豪雨などで怖い思いを経験していると思うが、ウエットではとにかくドライ路面と同じように止まって欲しいものだ。いくら緊急自動ブレーキが作動してもタイヤがグリップしていなければその性能を活かしきれず、衝突してしまう。また、ICE(内燃機関)が稼働しないEV走行時はロードノイズと風切り音がクローズアップされるわけで、そうした状況で静かであることはとても重要な性能だということだ。
こうしたクルマの変化が起きている中で、求められるタイヤ性能にも要求案件が少しずつ変化しているわけで、今回のプライマシー4はそうした、ニーズに応える形でデビューしたタイヤと言えるだろう。輸入車はもちろん、国産車Cセグメントサイズあたりからのモデルにお勧めのタイヤだと思う。
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