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試乗 フェラーリ488ピスタ 価格1050万円の上乗せ +50psも不変の親和性

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試乗 フェラーリ488ピスタ 価格1050万円の上乗せ +50psも不変の親和性

もくじ

どんなクルマ?
ー 間違いのないスポーツカー
ー 使用素材を厳選し90kgの軽量化
ー 通常の488GTBと変わらぬ乗りやすさ
どんな感じ?
ー フィオラノでは458スペチアーレより2秒速く
ー 一般道でも不安感のない足回り
ー 親和性は高く、楽しさに溢れている
「買い」か?
ー 488の次期型にさえなり得る
スペック
ー フェラーリ488ピスタのスペック

試乗 トヨタ新型クラウン・プロトタイプ ハイブリッド車/2ℓターボ車を比較評価

どんなクルマ?

間違いのないスポーツカー

多くの自動車メーカーは、多かれ少なかれ、ひとつくらいは疑問に持つようなモデルを出すものだ。しかし、間違いのないスポーツカーがふたつある。ポルシェ911GT3 RSと、ミドエンジンにV8を搭載したスペシャルシリーズのフェラーリ。この2台は、期待を裏切らない。

わたしが思うに、恐らくこれらのモデルは、技術者が生み出した純粋なクルマだからだろう。2003年、ポルシェはふたつのサスペンション・リンクのホモロゲーションを取得する目的で、911 GT3 RSを初めてリリースした。また同じ2003年に登場したミドシップのスペシャル、フェラーリ360チャレンジ・ストラダーレも、チャレンジ・レースシリーズを正当化することが目的だった。それ以降、後継モデルが繰り返し登場しているが、評価が落ちたことは今までない。

そして、最新のフェラーリ488ピスタ。

ピスタとはイタリア語で「トラック(サーキット)」や「道を開けろ」といった意味だが、どちらも間違いではなさそうだ。

名前の通り、モータースポーツとの関わりがあるのは明らか。ピスタに搭載されるエンジンは、GT3 RSと同様に、事実上、488チャレンジのレースカーに搭載されているものと同じ。レシピは従来通り。標準の488GTBよりもさらに50psほど上乗せさたマシンで、ワンメイクレースを行い、仕上げにスペシャル・バージョンとして市販化するのだ。

ただスペシャルといっても、生産台数が限定されるわけではない。ピスタは、販売中の488のモデルラインナップに追加されることになる。V8エンジンの3.9ℓの排気量はそのままだが、レブリミッターに当たる8000rpmで発生する最高出力は、720psにまで増強。最大トルクは78.3kg-mを3000rmpで発生する。

ただし、この最大トルクは7速のみの数値で、より低いギアでは制限される。例えば発進加速時などは、最もスポーティな味付けのターボエンジンではあるものの、ターボの効きを弱めて、自然吸気に近いフィーリングになるように設定されている。

使用素材を厳選し90kgの軽量化

トランスミッションは7速デュアルクラッチATで、後輪を駆動。このATが発表された当時、シフトアップする際は、次のギアがクラッチから切り離される前に、変速するギアとクラッチがつながる設定になっていると、フェラーリが話していたのを覚えているだろうか。まだ、その設定は改善を続けているようだ。

実際のところ、変速時間はそれほど短くなった印象はない。何しろ、そもそも変速は瞬時に終わるから、短くするほどの時間も感じられないのだが。

ステアリングのダイヤルを回し、アグレッシブなドライビングモードを選択すれば、シフトアップ時にはオーバーブースト機能が働く。シフトダウン時にはレースカーのように激しい衝撃が加わり、エンジンブレーキの効きも強まる。

カーボンファイバー製のホイールは1万ポンド(150万円)以上もするが、オプションを吟味すれば、ピスタの車重は1358kgとなる。もちろん乾燥重量ではない。488GTBと比較して、90kg以上の軽量化を果たしている。

ちなみにマクラーレンは、675LTの車重を1320kgと公表しているが、このピスタの場合、アルミニウム製の構造体ではなく、カーボンファイバー製のタブを用いている。どちらも数値的には間違っていなさそうだ。

ボンネットやバンパー、インテークマニホールドにリアスポイラーなど、もちろんピスタもカーボンファイバーは多用している。加えて、ニッケル合金のインコネル製エグゾーストや、軽量なフライホイール、リチウムイオン・バッテリーにチタニウム製のコンロッドなどと併せて、車重の削減に努めている。

通常の488GTBと変わらぬ乗りやすさ

エクステリアは、フォードGTにも雰囲気が似ていると感じられるが、スタイリング上の変更は大きくはない。しかし、耐久レースを戦うクルマとして開発されただけあって、F1流のフロントノーズの気流を上方へ流すSダクトや、大きなリアウイングが装備されている。その結果、488GTBと比較してダウンフォースは最大で20%も増強。200km/h時のダウンフォースは約240kgにも及ぶが、空気抵抗は2%しか増えていない。

さらにピスタに装着されるタイヤは、新開発のミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2。激しく走れば、路面にタイヤのゴムが想像以上に残り、コンパウンドの柔らかさをうかがい知ることができる。

軽量でパワフルなピスタは、どんな場所でも488GTBよりも俊敏で速く、一層アグレッシブなドライビングが可能となっているに違いない。

フェラーリのGTエンジニアを率いるラファエル・デ・シモーネによれば、ドライビング自体は難しくないという。このピスタはF12 tdfや599 GTOなどとことなり、どこか懐かしさを覚えるはずで、通常の488GTBのように楽しめる懐の深さがあると話すシモーネ。

GTBの最高出力は670ps。もし700ps以上ものパワーを持つクルマがトヨタGT86のように素直な仕上がりを得ているのなら、それは相当な快挙に思える。

半信半疑でクルマに乗り込んでみたが、それはどうやら本当のようだ。

もはや、暴挙だ。

どんな感じ?

フィオラノでは458スペチアーレより2秒速く

最初のテストドライブは、フェラーリのフィオラノ・サーキット。このピスタは、458スペチアーレのラップタイム、83.5秒よりも、さらに2秒も速く周回する。飛躍といって良いだろう。

もちろん、スペチアーレよりも優れた数字が並び、0-100km/h加速は2.85秒で、200km/hまでの加速ですら7.6秒。スペチアーレはそれぞれ3.0秒と9.1秒だから、目を見張るパフォーマンスだといえる。

場所を選ばず速いにもかかわらず、GTB以上に恐れる必要がないということも、すぐにわかった。ステアリングシステムはGTBと同様。アンチロールバーにも変更はなく、わずかにスプリングが硬くなっており、車高も若干下げられている程度。

GTBが持つ親しみやすい性格は、ほとんど損なわれていないといって良い。ピスタが履く新しいソフトなタイヤはサイドウォールの剛性が高く、ステアリング・レスポンスも神経質などころか、むしろ安定しているほど。わたし好みではないのだが、フェラーリのステアリングレシオはかなりクイックで、ロックトゥロックが2.0回転となる。

つまりGTBと似たハンドリングなのだが、圧倒的に速い。車重を減量したことによって、もともとコーナリングが得意だったクルマは、さらに機敏になった。このフェラーリは電子制御のeディファレンシャル(E-Diff)に加えて、ソフトウエアが見直された最新のサイドスリップ・コントロール・システムも搭載している。

適度なスピードでのコーナリングなら、デフがリアタイヤを引きずる印象もなく、ピスタは非常に美しく曲がっていく。しかし一度パワーを加えれば、強力な駆動力を発揮。トラクション・コントロールがオフなら、リアタイヤはトルクに負けてスライドしたがるが、サイドスリップ・コントロール・システムが、柔軟な姿勢制御を許してくれる。

一般道でも不安感のない足回り

電子制御の類いをすべてオフにしても、ピスタの性格は素直なまま。78.3kg-mという極太のピークトルクは3000rpmから発生し、レブリミットはGTBと同じ8000rpm。スロットルレスポンスは、どんなターボチャージャーを搭載したエンジンよりも優れている。意のままに操れる、レスポンシブなエンジンだ。

ただし、自然吸気で9000rpmまで回るポルシェ911GT3 RSの水平対向6気筒や、ランボルギーニ・ウラカン・ペルフォマンテのV型10気筒ほど、エンジン自体は陶酔するような性格ではない。尺度的には、911GT2 RSやマクラーレンのユニットと並ぶようなものだと思う。

そして最も印象的なのは、サーキット走行に主眼が置かれているのにもかかわらず、一般道の走行にも、乗り心地に関しては、大きな弊害がないということ。しかし、フロアカーペットや防音材が省かれているため、ロードノイズは盛大。タイヤが跳ね上げた小石がボディに当たる音もよく聞こえる。

エアコンの効きが悪いことも覚悟しなければならないし、フロント、リアともに拡張されたボディキットのおかげで、歩道へのスロープやスピードバンプなどでの気遣いも、いつも以上に必要になっている。

ダンパーのセッティングを硬い状態のままに、舗装が古くなったつづら折りの山岳路などを攻めても、ピスタが不安定になることはほとんどないだろう。柔らかい「不整路面」モードであっても、追従性に優れていながら、コントロール性が損なわれることはない。

親和性は高く、楽しさに溢れている

今回走行した山岳路は、488ピスタの開発ドライバーがテストしたルートでもあり、ステアリングがなぜこれほどクイックな設定なのか、フェラーリがeディファレンシャルを好んで用いているのか、理解することができた。急なヘアピンであっても、ステアリングの切り増しのために、手を握りかえる必要がないのだ。

マクラーレンが搭載する、一般的なディファレンシャルギアよりも重量は増えることは事実。しかし、タイトコーナーへの侵入がしやすいようにロックを抑制しながら、コーナーの脱出時には両輪をロックして、鋭い加速を実現している。

設定が詰め切れていないサーキットスペシャルの中には、この様な一般道を苦手にするクルマも少なくない。しかしピスタの場合、巧みに路面をいなすことで乗り心地にも優れ、コーナリングも安定しており、路面状況もつかみやすい。

扱い方によってはアンダーステアにもなるし、派手なペダル操作をすれば、想像以上のホイールスピンで驚くこともあるだろう。しかし、ライバルモデルよりも親和性は高く、楽しさにも溢れていると思う。

オリジナルが持つ、この素晴らしいシャシーを有効に活用するフェラーリ。ビジネス的にも意義があるクルマだといえるだろう。

ただし、少数派の意見だとは思うが、マクラーレン720Sの方がわたし好みのクルマだと感じられたことも事実だ。

「買い」か?

488の次期型にさえなり得る

ピスタの仕上がりは、標準の488GTBと明確な違いは感じられないものではある。標準のGTBに20%増しで、野性味を増した雰囲気とでもいえるだろうか。フロアカーペットを装着して、レース用のハーネスではなく通常のシートベルトを付ければ、サーキット・スペシャルではなく、488の次期型にもなり得る完成度を持ったクルマだとも思う。

このことは、現在V8エンジンを積んだフェラーリのオ―ナーも含めて、購入を検討しているひとにとっては重要なポイントだろう。事前に標準のGTBとピスタとをサーキットで試乗して、しっかり見極めてみると良い。コーナーをいくつか曲がれば、小さくない価格差も踏まえて、判断はつくと思う。

フェラーリ488ピスタのスペック

■価格 25万2765ポンド(3791万円)
■全長×全幅×全高 4605×1975×1206mm
■最高速度 339km/h
■0-100km/h加速 2.9秒
■燃費 8.7km/ℓ
■CO2排出量 263g/km
■乾燥重量 1385kg
■パワートレイン V型8気筒3902ccツインターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 720ps/8000rpm
■最大トルク 78.3kg-m/3000rpm(7速時)
■ギアボックス 7速デュアルクラッチ

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