新生SUVの核となるのはダウンサイジングターボ
スポーティなスタイルで独自の個性をアピールした新型エクリプス クロス。パフォーマンスについても、そのスタイルに見合った特徴を持ち合わせている。魅力的な競合がひしめくクラスのなかで確固たる地位を築くために採用された、エクリプス クロスを形作るメカニズムにおける核心に迫っていこう。
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パワートレインは、新開発の直列4気筒1.5L直噴ターボエンジン「4B40」と8速スポーツモード付きCVTのコンビネーションとなる。エンジンはダウンサイジングターボで、低中速から分厚いトルクを発揮。最高出力110kW(150馬力)/5500rpm、最大トルクは240N・m(24・5kg-m)/2000~3500rpm、圧縮比10対1でレギュラーガソリンに対応する。
ターボ化に加え最新の環境対策、静粛性の向上を図るため、大半のパーツを新設計。エンジンの骨格となるシリンダーブロック部では、高い燃焼圧力に耐えるために、クランクシャフトまわりを大幅に強化した。具体的には、クランクシャフトのクランクピンの軸径を40mmから42mmへと拡大することで、メインジャーナルとのオーバーラップを増やし、曲げやねじりへの耐力を大幅に上げつつ軽量化も実施している。
このクランクシャフトをガッチリ支えるため、ベアリングキャップを一体型構造へ変更。またシリンダーブロックの下半分は、オイルパン上部をロアデッキ構造にすることで、トランスミッションとの結合部も拡大。クランクの軸受には二硫化モリブデンがコーティングされ、フリクション低減やアイドリングストップによる始動停止回数の増加に対応する。
往復運動系となるピストンやコンロッドも、クラストップレベルの軽量化を図ったことで振動自体を低減している。ピストンは冷却性能を高めるクーリングチャンネル付きだ。
注目したいのは、三菱初となる直噴(DI)+ポート噴射(MPI)のデュアルインジェクションシステム。基本的にはMPI用は全域で作動し均質な混合気を生み出し、DIはターボのブースト域で負荷が大きくなってきたときに作動することで燃料冷却によるノッキング抑制効果を生み出すようになっている。
DIのインジェクターはマルチホール式で、噴射圧力は4~20MPa、噴射回数は2回である。またMPIは吸気バルブの洗浄効果があるので、DIで問題となりがちなデポジット(堆積物)を防ぐのに絶大な効果がある。燃焼としてはリーンバーン(希薄燃焼)は廃止し、ストイキ(理論空燃比)燃焼が基本となっている。
シリンダーヘッドは吸排気に油圧式のVVTを搭載し、それぞれクランク角で60度、20度の可変幅を持っている。排気バルブは傘部や軸部が中空で、ナトリウム封入により冷却性が大きく向上している。これはランサーエボリューションXのファイナルエディションでも採用されたタイプだ。排気マニホールドはビルトイン型として、ターボはヘッドに直付けすることでレスポンス向上を図っている。
ターボは斜流タービンを搭載する。立ち上がりのレスポンスがよくダウンサイジングターボでも力強い発進加速性能を備えている。また電動ウエストゲートバルブで過給圧制御性能を上げている。従来のダイヤフラム式のように排圧に負けて途中から開き出さないので、設定ブーストまで素早く立ち上げることができ、ターボの不要な軽負荷領域では開いて排圧を下げてポンピングロス低減も行なっている。
変速機は8速スポーツモード付きのCVT(INVECS-3)で、低容量トルクコンバーターを採用し、エンジン回転数を素早く立ち上げて発進時の駆動力を確保。また、制御を進化させることでATのようにダイレクトで小気味いい走りを生み出している。新エンジンの豊かな低中速トルクを生かし、緩い加速や微小なアクセル操作では回転数の上昇を抑える。アクセル開度が大きな場合は自動的にATのような変速フィーリングが得られる制御へと移行する。また、ロックアップの作動車速を低くすることで、発進時のスリップ感を抑えててダイレクト感を高くする制御も行っている。
操縦性と快適性が調和されたハイレベルな運転感覚を実現
プラットフォームやボディ、サスペンションは、基本的にアウトランダーをベースとしているが、各部の強化と専用部品の採用などで大幅な進化を遂げている。
ボディ前部は、砲塔ガセットでストラットタワーとバルクヘッド側を固め、フロントホイールハウス内はAピラーとアッパーフレームをブレースでつないで剛性を高めている。これらはアウトランダーでも採用されていたものだが、エクリプス クロスでは新たに3点留めのストラットタワーバーやバルクヘッド側にカウルトップリンフォースを追加し、フロントサスペンションタワーまわりをガッチリ固定している。
また、アウトランダーPHEVのSエディションで採用していた構造用接着剤の使用も大幅に拡大。従来はリヤゲートやリヤホイールハウスで採用していたが、サイドパネルのドア開口部にも施すことで、パネルの結合剛性を大幅に向上させることに成功している。
サスペンションでは、リヤのクロスメンバーを専用品として、ゴムブッシュを介して固定する弾性支持に変更。リヤタイヤからサスペンション、クロスメンバーに伝達されるノイズや振動をゴムブッシュ部で低減し、ノイズ低減と乗り心地向上を図っている。アウトランダーPHEVも同方式だが、それぞれ専用品だ。
また、乗り心地と操縦性を高い次元で両立するため、ショックアブソーバーやサスペンションブッシュも専用品としている。ショックアブソーバーはサスペンションの動きが緩やかな領域から減衰力をしっかり立ち上げつつ、動きの速い領域では減衰力を相対的に下げる特性の低速高減衰型を採用。ボディの揺れを早期に抑えることで、高い安定性としっかりしたハンドリングを得ながら乗り心地の悪化を防いでいる。
このセッティングについては、欧州や北米のほかオーストラリアでも走り込みを行い、グローバル統一仕様にセットアップ。なぜオーストラリア? と思うが、現地では住宅地やショッピングセンターなどにスピードバンプという減速を促す盛り上がり部が多くあり、その通過時でも不快な突き上げを起こさないかを調べるために試走を行ったそう。
サスペンションブッシュは、リヤの上下とトーコントロールアームに中間板入りブッシュを採用。上下方向はソフト、横方向はハードという方向性のある特性にし、乗り心地と操縦安定性を向上させている。
卓越した走りは大きな安心のもとに成り立つ
高まる安全性能に対する要求。そして、それに応えるべく、技術も進化していくが、エクリプス クロスは当然さまざまな機能を備え、充実したものとなっている。走りの楽しさなどは、安全にドライブできることが大前提だ。
万が一のときに、警報や緊急自動ブレーキをかけてくれる衝突被害軽減ブレーキシステムのベースとなるのが、カメラと近距離レーザーレーダーだ。加えて電波式レーダーも装備することで、高車速域にも対応している。高速道路などでの運転を快適にしてくれるレーダークルーズコントロールシステムはもちろん、斜め後方からの車両接近の検知を行ってくれる後側方車両検知警報システムが装備可能なのはとても安心できる点である。
もちろん、昨今話題になっているペダルなどの操作ミスによる誤発進についても、誤発進抑制機能が効果を発揮してくれる。また駐車場での後退時に、左右から接近する車両の検知を行ってくれる後退時車両検知警報システムなど、女性ドライバーや初心者、高齢者などでも安心してドライブできる。
そのほか細かいところでは、ブレーキペダルから足を離しても停止を維持してくれるブレーキオートホールドなど、日常でも役立つ運転支援機能も充実している。
どんな状況でも操る楽しさがある三菱独自のS-AWC
4WDシステムは、三菱が長年熟成を図ってきたS-AWCを搭載。エクリプス クロスの4WDシステムは、リヤデフの前方にある電子制御カップリングによって前後の駆動力配分を制御するが、さらにAYC(アクティブヨーコントロール)ブレーキ制御が追加されている。AYCはブレーキを片輪に作用させることで旋回性を高めるものだ。このように駆動力と制動力を統合制御することで、あらゆる路面で不安なく安定した走りを実現している。
ドライバーがステアリングやペダル操作を行ったとき、S-AWCのコントローラーはドライバーの意図を先読みし、車両が狙ったラインをトレースできているかつねに検知しながら4WDやAYCを制御する。
たとえば、ドライバーがステアリングを素早く切り込み始めたときには、より大きな回頭性を求めていると判定して、アンダーステアを出さないようコントロールする。
4WDのモードは、AUTO/SNOW/GRAVELの3種を用意。AUTOモードは、路面の状態や走行状況に合わせ、前後の駆動力配分を自動的に制御。駆動力が前輪寄りとなっている状態でも4WDがスタンバイされていて、フロントがスリップしてからリヤに駆動力が配分されるまでのタイムラグを抑えている。アクセルを強めに踏んだときは、大きな駆動力が発生すると判断してリヤへの配分を大きくするよう働き、前後荷重配分に応じた駆動力配分に近づけることで、無駄なく4輪を使える。
一方、雪上はタイヤの摩擦力が減少して前輪がスリップしやすいため、SNOWでは駆動力をあらかじめリヤで補えるようスタンバイ。前輪のスリップを防ぎ、走行安定性を確保する。とくにこだわったのが雪上の曲がり始めの姿勢で、舵角に反応せずクルマがまっすぐ行こうとする怖い挙動が出ないよう、旋回初期から向きがしっかりと変わるセッティングとしている。
GRAVELでは、悪路での走破性やスタック脱出性を高めるため、リヤへの駆動力配分を大きめにしてタイヤの空転を抑制するトラクション重視型としている。なお、オフロード走行に慣れた腕に覚えがあるドライバーが、電子制御に頼らず、自らの運転技術でエクリプス クロスのパフォーマンスを存分に楽しむことも可能となっている。
乾いた舗装路面/ドライブモード:AUTO 市街地では燃費に優れた駆動力配分で走行する。高速走行時でも、つねに4輪に駆動力を配分することで直進安定性を確保できる。
ウエット路/ドライブモード:AUTO 路面が濡れているような状況で走行中にスリップした場合には、瞬時に4輪の駆動力を最適化することによって安定した挙動を維持する。
雪道/ドライブモード:SNOW あらかじめ後輪への駆動力配分を増やし、左右輪の駆動力と制動力を積極的に制御してタイヤの空転を抑制。カーブでの膨らみを抑えて安定性を確保。
ラフロード/ドライブモード:GRAVEL 後輪への駆動力配分を高めることで、タイヤの空転を抑制。もし空転した場合は各輪の制動力を強め、高いトラクション性能を発揮する。
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