1979年の登場以来、39年間に渡りアップデートを繰り返してきたメルセデス・ベンツGクラスがついに新型モデルに切り替わった。外観こそキープコンセプトだが、ほぼ新設計となる新型の実力はいかに? 大谷達也が南仏のオフロード/オンロードを存分に走って確かめた。TEXT◎大谷達也(OTANI Tatsuya)PHOTO◎Daimler AG
NATO軍、前ローマ教皇のヨハネ・パウロ2世、そしてアーノルド・シュワルツネッガー。まるで関係がないように思える彼らの間に少なくともひとつの共通点が存在する。それはメルセデス・ベンツGクラスの愛用者であることだ。
なぜ、こうも幅広い層から支持されてきたかといえば、それはGクラスが傑出した悪路走破性と耐久性を備えていることに加え、直線的で力強いスタイリングがタイムレスな魅力を放っているからだろう。軍関係者からハリウッドのセレブリティにまで愛されたのは、ここに最大の理由があるのではないか。
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しかし、デビューから39年を経て、さすがのGクラスにも時代遅れな部分が散見されるようになった。例えば乗り心地が洗練されているとはいえず、ハンドリングも大ざっぱな印象が拭えない。これらはフロントサスペンションにリジッドアクスルを採用しているのが主な原因で、ここを改めない限り、乗り心地とハンドリングを現代的なレベルで両立させるのは難しいと推測された。
そこで新型ではフロントに4リンク式サスペンション(実質的にはダブルウイッシュボーン式)を採用したが、ロワアームは前後スパンをできるだけ長く、ロワアームとアッパーアームの間隔も大きくとることでソフトなゴムブッシュを用いながら正確な位置決めを実現。快適性とハンドリングの両立を図った。
さらに、ロードクリアランスの制約となりかねないデフの搭載位置をできるだけ高くできるよう駆動系のレイアウトを工夫したほか、定評ある耐久性を守るべく、いかにも頑丈そうなフレームやアーム類を使用。この辺は、オンロードモデルとプラットフォームを共用するSUVには真似ができない、専用プラットフォームを用いるGクラスだからこそ実現できた設計といえる。
南フランスのペルピニャン周辺で行われた国際試乗会でまずステアリングを握ったのはAMG G63 。ちなみにGクラスは全体の1/3ほどをAMGが占めるメルセデスでも異例のモデルだそうだ。
走り始めてすぐ気づくのが、前後サスペンションの軽快なストローク感。足まわりのドタバタしたこれまでの印象がすっかり消え去り、路面の凹凸に滑らかに追従している。ロードノイズも大幅に減少。続いて高速道路に入ると、最初は従来型と変わらないと感じた風切り音も、強く吹いていた横風が収まった途端にすっと静かになり、最新SUVと大差ない水準となった。
私は「平面ガラスでこの静粛性を実現するとはすごい」と驚いたが、エンジニアに確認したところ、平面に見えるフロントウインドウも実は中心部が4mmだけ盛り上がった3次元ガラスであることが判明した。その目的は空力特性の改善というよりもデザイン性の向上が強いとの由。聞けば聞くほど、手が込んだモデルチェンジであることがわかってきて実に興味深い。
高速道路を下り、ゆったりしたペースで一般道を流す。微妙なステアリング操作にも正確に反応するうえ、そこからさらに切り増したときのリニアリティも高い。いずれも現行型では望めなかったキャラクターといえる。これはワインディングロードでの走りが楽しみだ。
(後編に続く)
※本記事は2018年GENROQ7月号より転載。
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