もくじ
ー 革新的な排ガス処理技術を発明
ー 低温時にも効果を発揮
ー まもなく実車でのテストを開始
ー 失敗から学ぶことも多い
ー ACCTの原理
英国のチームがディーゼルのNOx問題を解決 2年以内に実用化
革新的な排ガス処理技術を発明
「ロケット科学みたいに難しいことではありません」と革新的な排ガス処理ACCTの発明者であるジョナサン・ウィルソンはいう。現代のディーゼル・エンジンのNOxフリーを実現する画期的な技術である。
偶然だが、ロケット科学の弾道学研究所は立て込んだラフバラー大学のすぐ隣だ。この大学の地下にあるウォルフソン機械工学大学院で、ウィルソンと彼の共同研究者であるグラハム・ハーグレーブ教授は、ACCTを早く実用化すべく全力で取り組んでいる。
われわれAUTOCARは、世界を変えるかもしれないこの発見を2018年の栄誉あるスターメー・アワードに選定した。この名前は本誌の筆頭創立者で編集長だったヘンリー・スターメーに因んだものだ。彼は思い立った数日後にこの雑誌を創刊。世界最古の自動車雑誌となった。1895年のことである。
ACCTについて初めて彼らと議論したのはほんの数か月前だ。もっとも難しい状況においてもディーゼル排気中のNOxを無視しうるレベルにまで低減できるACCTの素晴らしい能力が明らかになって以来、開発メーカーやユーザーの関心は高まるばかりだ。
世界中の自動車・トラックメーカー、大手部品サプライヤー、トラック運営会社、それに自治体の交通局がウィルソンとハーグレーブに連絡してきた。企業、政府のお偉方の来訪も相次いでおり、ふたりは忙しくて対応に苦慮している状況である。
低温時にも効果を発揮
昨今では、技術に通じたACCTの潜在的クライアントは、その本質的な単純性を理解し始めている。実際、ACCTはありふれたアド・ブルーをはるかに効率的な後処理剤へと簡単に変換することができるのだ。
なぜこれに気づかなかったのか、ずっと規模が大きく資金も潤沢な企業の研究所を差しおいて、なぜ英国の大学の研究者がこのような重要なプロセスを発見したのか、みな不思議に思っている。
最新の実験結果によると、従来のSCR触媒装置が働かない場合、つまりゴーストップを繰り返すような、エンジン負荷が軽くて排気が低温である場合においても、ACCTを用いた排気システムは99%のNOxを除去することができる。
ACCTへの関心は非常に高く、ハーグレーブとウィルソンの記事をオンラインで公開したその日に8万人がこれを読んだ。翌日も同様。以来、さらに多くの人がこの記事を読んでいる。色々なところからの問い合わせをやっと読み終え、興味本位のものは破棄したのだが、ふたりの発明者はまだ100以上の真剣なアプローチに対応しなければならない。
うれしい悲鳴だが大変だ。「誰がこの技術を一番早く広めてくれるか、懸命に考えているんです」とハーグレーブはいう。「大学の知財の専門家はとても頑張っていますが、簡単だとはとても言えませんね」
まもなく実車でのテストを開始
問い合わせに対応していないときには、ハーグレーブとウィルソンは発明の改善を続けている。最近はもうひとり、助教のマット・カッパーも加わり、大学からACCTのテストカーを買う補助金も取得した。テストカーはEU6規制以前の(かつSCR以前の)ファミリーセダンが理想的であり、フォルクスワーゲングループのモデルにするのが重要だと思っている。
現在の候補は2輪駆動のアウディA4 TDIである。センター・トンネルがクアトロ・モデルの4×4用に作られており、二輪駆動モデルでは「空っぽ」なので、排ガス実験装置を組み込むのに都合がいいのだ。
今月末までに、クルマを購入して装置を取りつけ、調整してデータを集める。計画ではACCTの実験結果をウェブサイトに掲載し、関心のある人がリアルタイムで性能を閲覧できるようにする。システムの有効性を実証する一番良いやり方だろう。世界をひっくり返すような結果が得られるに違いない。
素晴らしい成果を得るには、ふたりの生産的な協力関係がとても重要だったということで、ACCTの発明者は意見が一致する。「ジョナサンがとても頭がいいことは初めからわかっていました」とハーグレーブはいう。
「われわれはとても難しい問題に取り組んできましたが、彼は本当に素晴らしい。彼は1年間パーキンス・エンジンにいて排ガスの後処理問題を学んできました。そして戻ってくると、ぼそっとこう言ったんです。『僕がこの問題を解決できたら素晴らしくないですか?』とね」
失敗から学ぶことも多い
「彼はたくさんの方法を試し、たくさん失敗しました。そんなある日、解決策になるかもしれないといってわたしのところにデータを持ってきたんです。彼はとても意志が強く、基礎物理と化学が得意で、それを実システムに応用するのも上手でした」
「われわれはこの机で特に有望なデータを丹念に検討しました。そしてわたしは顔を上げて言ったんです。『なんてことだ、ジョナサン。やったじゃないか!』」
一方のウィルソンは、ハーグレーブの指導と励ましがなければ「絶対に成功しなかった」と言い張る。「最初は先生のことを良く知りませんでした。でも周りの人はみな立派な方だというんです。グラハムの教育方法は素晴らしく多彩でした。鋭い判断、たくさんの励まし。でも何より素晴らしいのは、口出しせずに生徒に失敗をさせることで学ばせるやり方ですね」
「わたしはたくさん失敗しましたが、ある日、データを精査していると、正しい順序で起こるふたつの反応を見つけたんです。これはいけるかもしれないと思いました。結果を見せると先生はこう言ったんです。『素晴らしいアイデアだ。さっそく研究室でやってみようじゃないか』本当にふたりで一緒にやったんですよ」
ACCTの原理
基本原理はこうだ。ACCTは単純な(現在は未だ非公開の)コンテナの中で、排ガスの熱を利用して普通のアド・ブルー(SCRが装着されたクルマにはみな積まれているありふれた薬剤)を遥かに不安定な物質であるACCT液(仮称)に変換する。これが排気中に噴出されると、エンジンが低負荷で排気温度が低い場合でも、現在のシステムよりもはるかに効率よく窒素酸化物(NOx)を除去する。
このようなエンジンが低負荷の状態は、現在NOxが大問題となっている混雑した市街地で非常に頻繁に発生するので、ACCTの能力はとても重要なのだ。実走行状態で行った最初のシステム試験では、通常のSCRシステムが65%だったのに対してACCTは99%のNOxを除去した。
またACCTは、トラック運送業者が現在直面している深刻で、ときには致命的な問題を解決する。アド・ブルーを大量に消費する重量積載物車両(HGV)では、排気が低温だとアド・ブルーが完全に分解されないのだ。ACCT液は不安定なので、すぐに蒸発してまったくゴミを残さない。
ACCTは巨大な問題に対する完璧な解決策のようだ。世界中の輸送産業がラフバラに大挙して押し寄せているのも、驚くことではない。
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