徳大寺有恒氏の美しい試乗記を再録する本コーナー。今回は日産フェアレディZ 200ZRを取り上げます。1985年、「Z」に待望のツインカムエンジン(RB20DET)が搭載されました。Zにツインカムエンジンといえば、1969(昭和44)年に誕生したZ432(4バルブ、ソレックスの3キャブ、2カム)が有名で、そのため(Z31型)フェアレディZ 200Rはその復活だ! と、当時大きな話題となりました。
世界初となったセラミックターボは、低回転、低負荷時からタービンが敏感にレスポンスすることが特徴で、これまでの弱点だったターボラグの減少を実現。
当時フェアレディZにはV6 SOHCの2Lターボ(VG20ET)がすでにありましたが、この変更でメーカー公表値で0~400m加速が15秒7から15秒3へと縮まるなど、中間加速が大幅に改良され、見違えるような走りを見せるようになりました。
徳さんが「相当によろこんだ」と結んだ、1985年11月26日号の記事をリバイバルします。
文:徳大寺有恒
ベストカー2017年2月10日号「徳大寺有恒 リバイバル試乗」より
「徳大寺有恒 リバイバル試乗」は本誌『ベストカー』にて毎号連載中です
■過給エンジン革新の荒野を突き進む日産の技術力
「憧れの名車」は今も輝いているか!? NSX、スープラ、GT-R連続試乗
フェアレディZにストレートシックスのDOHC、4ヴァルブエンジンが与えられた。これをフェアレディZ ZRシリーズと呼ぶ。
このエンジンはいわずとしれたRB20DETである。しかし、ターボの型式が新しく、日産が満を持して発表した“セラミックターボ”である。
セラミックターボは製作がきわめて難しいが、レスポンスに優れることで、大いなるメリットがある。
すでに発表済みのジェットターボ(VG20ETなど)を含め、日産の過給エンジンは、そのバリエーションをいっそう広げつつある。
過給エンジンは絶対的なパワーを得るためにはきわめて有効だ。まして、DOHC、4ヴァルブとの組み合わせは現在、多くのレーシングカーに採用されているエンジンなのだ。ブルーバードに与えられるCA18DETといい、このRB20DETといい、日産は次々とDOHCエンジンを発表するが、すべてが過給エンジンであることに興味がある。
VG20ETの170ps(グロス値)を上回る180ps (ネット値)を発生したRB20DETエンジン。グロス換算すれば30ps、3kgmの大幅アップとなった
日本では2000cc、5ナンバー(当時)は税金が安く、過給エンジンはそれなりのメリットがある。とにかく、2LでNET、180ps/6400rpm、23.0kgm/3600rpmのパワーは率直に凄いと思う。
この新しいターボについて、私は率直に高い技術を認めたい。同時にほんの少し前に発表されたスカイラインのRB20DETに、このセラミックターボが与えられなかったことを残念に思う。
15インチのエアロディッシュホイールを採用し、バンパーはボディ同色だ。インタークーラーが上置きとなり、大型エアスクープが装着されることがVG2Lターボとの外観の違いとなる
VG20ETエンジン搭載車との外観上の差はほんのわずかだ。すなわち、エンジンフード上に大きなバルジが与えられていることだ。このバルジの下に空冷式のインタークーラーがあるからこうなるのだ。そのバルジの下にも少し盛り上がったプレスラインがあり、やや“屋上屋を架す”といった感がしないでもない。
200ZRシリーズのボディは、この2シータークーペとWBが200mm大きく、リアシートを持つ2by2モデルだ(ノーマルルーフはZR-1と呼ばれる)。それにTバールーフというタルガトップを採用するモデル(ZR-II)がある。
Tバールーフ装着車(ZR-II)
私はZカーの場合2シーターのほうが好きだ。しかし、私個人が使うとしたら2by2のほうが何かと便利だ。ただ、Zカーの2by2はホイールベースが200mmも大きくなり2320mmから2520mmになることが少々気になる。
このクルマは、もはやレースで勝つことが重要ではない。されど、スポーツカーとしてもハンドリング、運動性能を持たせるならば、ホイールベース2400mm内外の2+2のワンボディでもいいと思う。
コックピットの3本スポークホイールはスポーティだし、メーター回りも明らかにムードはVGモデルよりもいい。
コックピット回りはスポーティな3本スポークで、メーターパネルはブラックの文字盤にホワイトの目盛りとなる
7000回転までセーフティ、7500回転までイエロー(実際は赤が薄くなる)、7500回転からレッドのタコメーターも現在の国産車のなかでもグッドデザインだと思う。
■少々古典的な辛口スポーツ
セラミックターボを与えられたRB20DETはそうとうシャープでパワフルだ。低速からグイとばかりトルクが持ち上がり、そこから7500回転まで一気に登り詰める。いわゆる“ラグ”はほんとうに小さく、一瞬のものであるといえる。
もともとZカーの直進性は文句ない。200ZRもウエットのコースを180km/hで矢のように走る。V6モデルに比べ、サスペンションの形式こそ同じだが、ずっと硬められている。さらにブリヂストンのポテンザRE71Mと組み合わされ、スティアリングのシャープさを得ている。
このサスペンションの強化によるロールの小ささとスティアリングのシャープさで、200ZRはボディサイズをひとまわり小さく感じさせることに成功している。当然乗り心地は硬いが、これでいいと思う。低速でもこの硬さはスポーツカー乗りにとってきついものではないからだ。
徳さん、試乗中のひとコマ
ブレーキもたいへんいい。ウエットコンディションのなかで、180km/hから安定して100km/hに減速できる。しかも、そのフィールがとてもいいのだ。
かくて、200ZRはスポーツ性を大いに感じさせる。それは少々古典的な荒々しい味も感じさせる。
スカイラインがソフトマシンに変身した後、同じ日産からそうとう辛口のスポーツカーが登場する。それでいいんだ。辛口の日産車に乗って私はそうとうに喜んでいた。
DOHC4バルブのストレート6にセラミックターボを組み合わせ、ウエットでも0~400m加速は15秒45と、期待に違わぬポテンシャルを見せつけた
◎日産 フェアレディZ 200ZR-1 2by2 主要諸元
全長:4535mm
全幅:1690mm
全高:1310mm
ホイールベース:2520mm
エンジン:直列6気筒 DOHCターボ
排気量:1998cc
最高出力:180ps/6400rpm
最大トルク:23.0kgm/3600rpm
サスペンション:ストラット/セミトレ
10モード燃費:9.7km/L(5MT)
車重:1320kg
当時の価格:252万4000円
※ネット表記
本誌テスト結果(いずれもウェット)
0~400m:15.45秒
0~1000m加速:28.63秒
0~100km/h加速:8.79秒
最高族度:リミッター
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