もくじ
前編
ー 911にとって最大の脅威であったR8
ー 環境性能も意識した911
ー セグメントを超えた勝負
ー GT-Rの圧倒的な速さ
回顧録 日産GT-R vs ポルシェ911 vs アウディR8 前編
後編
ー なぜ911は敗れたのか
ー RRの優れたトラクション
ー エンジン、ステアリングはR8が優位
ー 全てを制するGT-R
ー 新たな王者の誕生
なぜ911は敗れたのか
まずいうべきことは最初に言っておこう。911のキャビンについての話だ。
なぜかポルシェは911のダッシュボードをまともに造れないようで、ごく控えめに言ってもその設えには少々混乱させられる。
エルゴノミクスに欠落したところがあるとは言いたくないが、しかしR8のように洗練されたルックスとほぼ完璧に近いレイアウトのコクピットを相手にすると、哀れなほどそれが際立ってしまう。
相変わらず911は無意味な場所にスイッチがある。「design logistics(デザインの論理学)」と記されたドアの内側にあるすべてがあまりよろしくないことをさらに証明したければ、ステアリングホイール上にあるPDKのスイッチを見れば良い。ポルシェがなんと主張しようとも、PDKの操作方法は直感的とはほど遠いものだ。
おおよそすべてのメーカーのクルマにおいて、右側のパドルがシフトアップであり、左側はシフトダウンである。それが911ではステアリング両スポークの表にシフトアップのボタンがあり、そして同じく両方の裏にシフトダウンのボタンがある。つまり、あの奇妙奇天烈さで(悪)名高いティプトロニックと同じレイアウトになっているのである。
1日かけてライバルと伍してカレラSを運転したあとでもまだ、われわれの誰ひとりとしてその操作に慣れることはできなかった。コーナリングを撮影するときなど、3速から2速にシフトダウンしようとして、誤って4速にシフトアップしてしまったほどだ。
これは一歩間違えば大事故になりかねないし、この種のクルマではどう考えても容認できるものではない。だからこそポルシェはすでにボタンデザインの変更を進めているのだが、これはジャーナリストや顧客から批判や不満の声が殺到したからに違いない。
RRの優れたトラクション
混乱したエルゴノミクスのその先に目を向けてカレラSを運転し始めれば、今でもこのクルマは数少ない真の実力を備えているからこそ残念で仕方がない。その魅力の素晴らしさを、今さらあえて説明する必要はないだろう。
確かにステアリングのフィールはひと頃ほど繊細ではなくなったかもしれないし、荒れた路面でのタイヤノイズは19インチのホイールとミシュラン・パイロットスポーツのタイヤを履いているとかなり耳ざわりだが、正確な走りと見事な動力性能はまさに「ポルシェかくあるべし」という素晴らしいものだ。
加速性能は十分すぎるほどで、それには911伝統のリアエンジンならではのトラクションもおおいに貢献している。R8を抜き去って追いつかせないだけのものがあり、これはポルシェにとっては重要な大躍進と言っていいだろう。
PDKシステムのギアチェンジ性能も、シフトボタンさえ気にならなくなれば実に素晴らしいレベルにある。これのおかげでカレラSのドライバーは、手動でシフトレバーをこねくり回さねばならないうえに、時にゲートに指を挟むこともあるR8のドライバーより圧倒的な優位に立てる。
エンジン、ステアリングはR8が優位
その一方で、いつもは911ならではの美点で、ライバルとの差別化となっていたエンジンのサウンドは、リファインという名のもとにほとんど消されてしまい、そのバトンはR8に手渡された。
R8の4.2ℓV8のサウンドはどの回転域でも911よりはるかに魅惑的で、そして音量も勇ましかった。このカレラSがいかにも911らしいサウンドを奏でるのは高回転域でフルスロットルにしたときだけで、そしてそのときのエグゾーストサウンドも、加速とともに増してくるタイヤノイズの音量に、ともすれば紛れてしまいがちである。
それよりも困ったのは、今回の個体の911はさまざまな理由から、われわれが期待したほどハンドリングが甘美ではなかったことである。また、さらに重大なのは、今回のウェールズ山岳地帯のワインディングロードを、R8と対等にこなし切ることができなかったという事実だ。
ターンインの際に発生するボディロールがあまりに大きく、その点をわれわれ全員が好きになれなかった。グリップと安定性のレベルにはほぼ文句の付けようがなかったものの、R8のほうが走りが流麗で、そして全体的なバランスも優れていたことには疑問の余地がない。
5人のテスター全員がR8のステアリングのほうを推奨しており、それは限界直前では911ほどフィールにダイレクト感もしくは一体感がないことを差し引いても変わらなかった。
全てを制するGT-R
カレラSはR8に敗れた。しかもかなりの差をつけられての敗北だ。それについて否定の余地はない。
きわめて優秀なPDKトランスミッションと、パワフルでクリーンかつリファインされた新型エンジンにもかかわらず、少なくとも今回の個体においては、この新型911はオールラウンドな魅力を持つR8に斬り込みきれなかった。
それではGT-Rはどうか。これほど円熟したライバル2台を前にして、言い換えるなら世界最高のスポーツカー2台を向こうに回して、いったいどのように渡り合ったのか。
GT-Rはこの2台を破壊しつくし、屈服するまで圧倒し、プライドを完全に引き裂き、側溝に脱輪するまで容赦なく攻め立て、そして地平線のはるか向こう側へ悠然と去って行った。
動力性能の点ではライバルと目されるひと通りのクルマと同等の劇的な破壊力を備えており、しかもそれをすべての道路上で、ウェットでもドライでも、スムーズでもラフでも、路面の違いをまったく問わずに発揮できる。いかなる場所を走っていても、そこに君臨するのはGT-Rなのだ。
新たな王者の誕生
真の意味でGT-Rに目を見張らずにいられないのは、それを毎日の足としてなんの苦労もなく使えるだけの上品で洗練された振る舞いと引き替えにせず実現していることだ。
実際に高速道路では911よりも静粛性で優っており、さらに今回の個体は以前に試乗したGT-Rよりも乗り心地もはるかによかった。
これはおそらく英国日産がダンパーに手を入れて、英国の荒れた道路に合わせて完璧にチューンしたのではないかと思う。
ほかのライバルより300万円以上も安いという最後の事実は、ほとんど副次的な問題でしかない。むしろほとんど関係ない。本当に途方もないクルマだ。新たな王者の名は日産GT-Rである。
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