現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > セレナe-POWER EV並みの静粛性を求めるユーザーのために、「美術館並みの静かさ」に挑戦

ここから本文です

セレナe-POWER EV並みの静粛性を求めるユーザーのために、「美術館並みの静かさ」に挑戦

掲載 更新
セレナe-POWER EV並みの静粛性を求めるユーザーのために、「美術館並みの静かさ」に挑戦

シリーズハイブリッド方式の日産e-POWER。ノートに続いてセレナに加わったe-POWERトレーンだが、セレナではコンパクトカーのノートとは別次元の「静粛性」が求められた。「美術館並みの静かさ」を実現するために、日産開発陣は何をしたのか?TEXT&PHOTO◎世良耕太(Kota SERA)

日産セレナe-POWERのウリは「加速」と「燃費」と「音」だという。加速が良く、燃費が良くて、静かなクルマだということだ。加速の良さは、100kWの最高出力はもとより、発進時や低車速時などで威力を発揮する320Nmの最大トルクが利いている。

新型RAV4、3月末のニューヨーク・国際モーターショーでワールドプレミア、日本導入もあるか

320Nmの最大トルクは、ガソリンエンジンにあてはめれば自然吸気3.0ℓ級だ。しかも、エンジンの場合はある程度回転数を高めないと最大トルクを発生しないが、モーターは理論上回転数ゼロで最大トルクを発生する。だから、アクセルペダルを踏み込むと間髪入れずにスッと加速する。これ、一度味わうとやめられない。

燃費の良さは電動パワートレーンによるものだ。セレナe-POWERはエンジンとモーターの両方を搭載しているが、エンジンは発電専用で、前輪に力を伝えるのはモーターのみである。エンジンをできるだけ効率のいい領域で使うようにし、減速時のエネルギーを電気に変換してバッテリーに蓄えることで、燃費のいいクルマに仕立てている。


音に関しては神経質なまでにこだわった。先にノートe-POWERを出してわかったことだというが、e-POWERを求めるユーザーは、電気自動車(EV)並みの静粛性を求める傾向が強いのだという。開発する側にとっては酷な話で、「いやいや、エンジンかかるんですけど」と反論したい気分だったろう。

とはいえ、開き直るわけにはいかない。だからまず、エンジンがかかっても音が目立たないよう、セレナe-POWERはノートe-POWERより回転数を低くした。街乗りで周囲の流れに合わせて走っているようなとき、e-POWERはバッテリーに充電する目的などの要求から、唐突にエンジンが始動することがある。その際、エンジンにとって最も効率のいい回転数は2400rpm弱で、ノートe-POWERはその回転数を保って発電を行なう。

一方、セレナe-POWERは2000rpmに抑えた。一段高いギヤで運転するイメージだ。音圧レベルで言えば、およそ1~2デシベル違うという。
「ノートe-POWERのお客様の反響を見ながら、これくらいだったらいけるだろうという手探りも含めて開発したのが、セレナe-POWERです。違和感なく『普通』に乗っていただけることを目指しました」
と、振動騒音の専門家である手島聡氏(日産自動車株式会社 Nissan第二製品開発本部 Nissan第二製品開発部 音振性能グループ)は説明する。


遮音・吸音対策は徹底した。フロアカーペットはフロント、センター、リヤの三分割になっている。リヤは基準車(ガソリンエンジン搭載車)と同じだ。運転席の下に位置するセンターは吸音/遮音性を徹底的に高めている。なぜなら、この下にバッテリーを搭載しており、素子などからキーンという高周波の音が出るからだ。この高周波音が室内に侵入しないよう、ゴム系の硬い材料が2層追加されている。

フロントのカーペットはエンジン音の侵入を防ぐ目的で、やはりゴム系の材料が追加されている。フロント、センター、リヤのカーペットを、ドアをノックするように叩いてみると、フロントとセンターは明らかに硬いのがわかる(その上にフロアマットが載っている)。

エンジンルームには、主に吸音材が追加されている。エンジン回転数を低く制御しているとはいえ、エンジンがかかれば音は出る。その音の車室内への侵入を少しでも弱める目的だ。コックピットモジュールを構成する部品にも吸音材を追加した。

エンジンが発する音は、エンジンルームと車室を隔てる隔壁を通じてだけでなくボンネットフードを突き抜けてフロントウィンドウ越しにも侵入してくる。そこで、遮音フイルムを挟み込んで静粛性を高めた。さらに、フロントサイドウィンドウは板厚を3.5mmから4.0mmにアップさせている。


それだけではない。ルーフには制振材を追加した。「柔らかい板はスピーカーのように音を鳴らす」(手島氏)からだ。制振材を追加し、ブルブルとふるえないようにしたわけだ。

ルーフの制振材はエンジンの音に対応したのではなく、タイヤへの対応だ。「燃費」がウリのひとつだと冒頭で説明したが、その燃費を稼ぐためにセレナe-POWERは低燃費タイヤを装着している。低燃費タイヤは転がり抵抗を低くしている。転がり抵抗を低くしようとするとトレッドは硬くなる(変形しにくくなる)ため、「ゴー」とか「ザー」という音が出やすくなる。

これらの音(一般的に120~400Hz)を含めて広い周波数に対して反響を抑えるため、ルーフに制振材を追加したわけだ。e-POWERではフロアにアスファルトシートを追加したが、これもタイヤ起因の音対策である。


こうして音に対して細かく手当をしていくと、これまで気にならなかった音が気になるようになる。その一例が燃料タンクの中でガソリンが前後に揺れることによって発生するパシャパシャ音だ(そんな音が気になるほど静かなクルマに仕上がっているということだ)。
「開発後期に静粛性に対する目標を一気に上げたのですが、その段階で燃料タンクの音も出てきて、『これは良くないね』ということになりました」(手島氏)

パシャパシャ音を消すため、セレナe-POWERは燃料タンクにバッフルプレートを追加した。 55リッターの燃料タンク容量は基準車と変わっていない。

エンジンはかかるにもかかわらず、EV並みの静けさを実現するためにありとあらゆる音対策をしたのが、セレナe-POWERだ。その効果はあり、とくに街乗りでのエンジン停止走行時は、日産が自信を持って説明するように「美術館並みの静かさ」を体感できる。


セレナe-POWERハイウェイスター
全長×全幅×全高:4770×1740×1865mm ホイールベース:2860mm 車重:1760kg JC08燃費:26.2km/ℓ 駆動方式:前輪駆動 サスペンション:Fストラット/コイル Rトーションビーム/コイル 発電用エンジン 形式:直列3気筒DOHC エンジン型式:HR12DE 排気量:1198cc ボア×ストローク:78.0×83.6mm 圧縮比:12.0 最高出力:62kW/6000rpm 最大トルク:103Nm/3200-5200rpm 使用燃料:レギュラー

駆動用モーター 型式:EM57 種類:交流同期電動機 最高出力:100kW (136ps) 最大トルク:320Nm 電池:リチウムイオン電池


日産セレナe-POWER ハイウェイスターV 2WD:価格340万4160円
メーカーオプション
セーフティパックB:24万3000円
(SRSカーテンエアバグシステム&サイドエアバッグシステム(前席)、踏み間違い衝突防止アシスト、インテリジェントパーキングアシスト、標識認識機能、インテリジェントアラウンドビューモニター(移動物検知機能付き)、インテリジェントDA(ふらつき警報)、フロント&バックソナー、インテリジェントルームミラー、電動パーキングブレーキ、オートブレーキホールド、プロパイロット、インテリジェントLI(車線逸脱防止支援システム)、ヒーター付きドアミラー、ステアリングスイッチ
ブリリアントホワイトパール(3P)、ダイヤモンドブラック(P)、2トーン
:7万5600円
オートデュアルエアコン+前席クイックコンフォートヒーター付きシート+ステアリングヒーター+寒冷地仕様:8万3160円
メーカーオプション合計:40万1760円

ディーラーオプション
ナビレコツインモニターパック(MM517D-L)+ETC2.0:42万2259円
フロアカーペット(e-POWER車用)(エクセレント、旧遮音・消臭機能付き、ブラック 超ロングスライド用:6万4584円
ウィンドウ撥水12ヵ月:1万1048円
ディーラーオプション合計:49万7891円

こんな記事も読まれています

変なあだ名のクルマと言わないで! あだ名は[愛されキャラ]の証なんです
変なあだ名のクルマと言わないで! あだ名は[愛されキャラ]の証なんです
ベストカーWeb
メルセデスの「SL」の始祖は「300SL」だった。ル・マン24時間でも優勝したアイコンはなぜ生まれ、どのように発展したのでしょうか?
メルセデスの「SL」の始祖は「300SL」だった。ル・マン24時間でも優勝したアイコンはなぜ生まれ、どのように発展したのでしょうか?
Auto Messe Web
「4EVER Untamed」のキャッチを掲げた第6世代の新型トヨタ・4ランナーが米国デビュー
「4EVER Untamed」のキャッチを掲げた第6世代の新型トヨタ・4ランナーが米国デビュー
カー・アンド・ドライバー
フォルクスワーゲン「ポロGTI」誕生25周年!記念モデルを227台限定で発売
フォルクスワーゲン「ポロGTI」誕生25周年!記念モデルを227台限定で発売
グーネット
ヒョンデ 新型高性能EV「アイオニック5N」発売!50台限定の特別仕様⾞も設定
ヒョンデ 新型高性能EV「アイオニック5N」発売!50台限定の特別仕様⾞も設定
グーネット
日産 コネクテッドサービス「ニッサンコネクト」が進化!アプリから操作できる機能が倍増
日産 コネクテッドサービス「ニッサンコネクト」が進化!アプリから操作できる機能が倍増
グーネット
メルセデス・ベンツ 「GLCクーペ」PHEVモデル登場!電気モーターのみで118キロ走行可
メルセデス・ベンツ 「GLCクーペ」PHEVモデル登場!電気モーターのみで118キロ走行可
グーネット
マツダ、新型電動車セダン「MAZDA EZ-6」とSUVコンセプト「MAZDA 創 ARATA」を北京モーターショーで初公開
マツダ、新型電動車セダン「MAZDA EZ-6」とSUVコンセプト「MAZDA 創 ARATA」を北京モーターショーで初公開
月刊自家用車WEB
加藤陽平TD、転倒後も「表彰台にはチャレンジできるなと思っていた」。新加入ダン・リンフットの印象も/EWCル・マン24時間
加藤陽平TD、転倒後も「表彰台にはチャレンジできるなと思っていた」。新加入ダン・リンフットの印象も/EWCル・マン24時間
AUTOSPORT web
ダッシュボードは大改善 フォルクスワーゲンID.5 GTXへ試乗 「7」と同モーターで339ps
ダッシュボードは大改善 フォルクスワーゲンID.5 GTXへ試乗 「7」と同モーターで339ps
AUTOCAR JAPAN
「ミウラ」「カウンタック」「ストラトス」はガンディーニの作でした! オートモビルカウンシル2024で「追悼展示」が急遽開催
「ミウラ」「カウンタック」「ストラトス」はガンディーニの作でした! オートモビルカウンシル2024で「追悼展示」が急遽開催
Auto Messe Web
クルマの買取もグーネットアプリにおまかせ!相場価格がわかる新サービス、3つの便利なポイント
クルマの買取もグーネットアプリにおまかせ!相場価格がわかる新サービス、3つの便利なポイント
グーネット
「お金なさすぎて家賃払えなくて…」大阪出身“売れっ子芸人”が高級SUV「Gクラス」を納車! 東京で“人生初”の車購入「盛山さんがベンツ購入って感慨深い」「夢あるなー」と反響
「お金なさすぎて家賃払えなくて…」大阪出身“売れっ子芸人”が高級SUV「Gクラス」を納車! 東京で“人生初”の車購入「盛山さんがベンツ購入って感慨深い」「夢あるなー」と反響
くるまのニュース
キドニー・グリルからキンクまで 「BMWらしいデザイン」とは何か 8つの特徴を紹介
キドニー・グリルからキンクまで 「BMWらしいデザイン」とは何か 8つの特徴を紹介
AUTOCAR JAPAN
マツダ、北京モーターショーで新型電動車2機種を初披露。2024年中に1車種を発売
マツダ、北京モーターショーで新型電動車2機種を初披露。2024年中に1車種を発売
driver@web
3/4サイズの「セブン」は50ccの原付きカー! ワンオフで製作してナンバー取得済み。左足アクセル仕様の理由とは【マイクロカー図鑑】
3/4サイズの「セブン」は50ccの原付きカー! ワンオフで製作してナンバー取得済み。左足アクセル仕様の理由とは【マイクロカー図鑑】
Auto Messe Web
「しっとり」と「猛烈」の共存 BMW i5 M60 xドライブ 電動の旗艦が見せた幅広い守備範囲に脱帽
「しっとり」と「猛烈」の共存 BMW i5 M60 xドライブ 電動の旗艦が見せた幅広い守備範囲に脱帽
AUTOCAR JAPAN
自動車のカタログ好きは集まれ! ACC・JAPANが東京交歓会を開催
自動車のカタログ好きは集まれ! ACC・JAPANが東京交歓会を開催
driver@web

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

144.8268.3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

4.8309.0万円

中古車を検索
ノートの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

144.8268.3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

4.8309.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村