もくじ
どんなクルマ?
ー 欧州仕様はV8 5.0ℓコヨーテに10速AT
ポルシェ911ターボが負けた日 英国人の目から見た日産GT-Rの実力 前編
どんな感じ?
ー 室内の質感は、表面的には向上
ー Dレンジに入れて、アクセルを蹴飛ばすだけ
ー ハンドリングも乗り心地も向上
「買い」か?
ー 10速ATも良質だが、叶うならMTで楽しみたい
スペック
ー フォード・マスタングGT5.0 V8 ATのスペック
どんなクルマ?
欧州仕様はV8 5.0ℓコヨーテに10速AT
3年前にフォード・ヨーロッパが導入を決定した、アメリカ車のアイコンとも言えるマッスルカー、フォード・マスタングにフェイスリフトが加えられた。さらに人気を獲得するべく、大幅なアップデートが施されたのだ。
ただし、クーペボディへのスタイリングの変更はそれほど大きなものではない。
今回の目玉は、そのボンネットの下に収まるV8 5.0ℓの「コヨーテ」エンジンで、従来よりも一層力強さを増している。また計器類はデジタルモニター化され、現代のアクティブセーフティ技術もふんだんに導入された。さらにステアリングとサスペンションにも改良が加えられ、トランスミッションは10速ATに進化している。
新しいエンジンとトランスミッションが組み合わさることで、US仕様車の場合、0-97km/h加速を4秒でこなす才能を持つ。ヨーロッパ仕様のモデルがどの程度の出力を発揮するのか、フォードからの情報がないため、この数値は若干変わる可能性がある。
われわれは正式なプレス発表に先駆けて、新しいマスタングのAT車への試乗の機会を、短い時間ながらベルギーで得ることができた。
その印象をお伝えしたい。
どんな感じ?
室内の質感は、表面的には向上
フォードの狙いは、ヨーロッパの嗜好に合うような、パフォーマンス・クーペという存在感や魅力を高めることにある。ただ、大きくたくましく、怒りの感情を表しているかのような迫力に満ちたアピアランスは、以前と変わらない。
マイナーチェンジ後のマスタングには、12インチのデジタルモニターによるインスツルメントパネルが新しく搭載され、選択したドライビングモードにあわせて、計器類の表示も変更されるようになった。
グラフィックや機能に関しては、フォードのプレミアムブランド・モデルが持つ洗練性には届いていないと感じる。おかげで、マスタングの車内はどこか、いま風に合わせただけの、表面的な高級感とでも言える雰囲気が漂っている。
ドアの内張りや、センターコンソール、ダッシュボードなどの素材の質感も同様。上級志向ではあるものの、その効果が充分に得られていない印象は隠せない。
つまり、価格が4万ポンド(600万円)ほどのライバルと比較しても、目で見る範囲なら、明らかな質感の妥協を強いられることはなさそう、と言うこと。実際に触れてみると、実態が透けてしまうとは思うけれど。
Dレンジに入れて、アクセルを蹴飛ばすだけ
マスタングが持つパフォーマンスやハンドリングの真のレベルを探るには、今回の短い試乗では少し不十分だった。追ってしっかりとした試乗レポートもお送りできる予定なので、楽しみにしていただきたい。
しかしながら、新しいエンジンとトランスミッションによって、全開加速がさらに鋭くなったことは明らか。ドライビングモードで「ドラッグストリップ」と「トラックモード」を持つ新しいAT仕様なら、マニュアルを巧みに操作して加速する場合と比較しても、引けを取らない威力を発揮する。
ドライバーは、セレクターをDレンジに入れて、アクセルを蹴飛ばすだけ。新しい10速ATがV8のパワーバンドを保ちながら、素早くシフトアップしてくれる。
0-97km/h(正確には0-60mph)加速テストは、とあるモータージャーナリストが天気のいい日に考えついた方法だが、マスタングの4.0秒というのは少し楽観的な数字だと思う。それほどかけ離れてもいないとも思うが。ちなみにアメリカで計測する場合は、約30cmの助走区間のような部分(ロールアウト)が存在したりする。
ハンドリングも乗り心地も向上
わたしの場合、V8を積んだマスタングに、10速もの変速を持つATを組み合わせるということは、若干理解がしにくい。
この様なクルマの場合、最大の魅力はV8であって、そのエンジンとどれだけ密接にコミュニケーションを取ったドライブができるかが重要だと思う。クラッチペダルを踏み、Hパターンのシフトレバーを操作するという直接的な関わりが得られないATの場合、明らかにその密接さは薄れてしまう。
ただし、ヨーロッパ・フォードはマニュアルの導入も考えている様ではある。
もちろん性能の良いATをラインナップするということは、クルマの機能性と間口を広げ、顧客層を拡大することにもつながる。
実際、このマスタングのものはかなり良い仕上がり。10速といっても10段分のギアが並んでいるわけではなく、4種類のプラネタリーギアで構成されており、変速スピードは速い。急加速時などは、3~4速飛びでの変速も許容してくれるし、特に急いでいない場合でも、振る舞いは極めてスムーズ。パドルを用いてマニュアル操作も可能ではあるものの、DレンジやSレンジでも不満のない変速を披露する。
フォードはさらに、パワーステアリング・システムにも改良を加え、サスペンションにもマグネライド(磁性流体減衰力制御)ダンパーを装備させた。ステアリングフィールは適度な重さがあり、路面を選ばず好印象なもの。また、ボディコントロールやハンドリングバランスに関しても、限られた時間の中での検証ではあったが、全般的に良質なものだった。
この他に、この段階でお伝えできる様な明らかな改善点とすれば、乗り心地の面だ。フェイスリフト以前のマスタングは、上下動が大きく落ち着かない印象だったが、より快適で安定した乗り心地を得ている。
「買い」か?
10速ATも良質だが、叶うならMTで楽しみたい
マスタングはエキサイトさとエモーションを兼ね備えたクルマだと言え、徐々にではあるが、洗練度も増している。近似するパフォーマンスを持つライバルと比較して、4万ポンド(600万円)ほども安価で、明確なキャラクターを持つスポーツクーペであることは間違いない。
実際、フォードの予想よりもマスタングの売れ行きは好調で、このご時世において、ヨーロッパではすでに3万台以上が販売されている。今回のフェイスリフトで新鮮さを取り戻すとともに、モデルラインナップの合理化も図りつつ、販売数を伸ばす計画だ。ボディカラーの選択肢が増え、ホイールやシート、その他のオプションも追加されている。
ポニーカーの中でも駿馬と言えたマニュアルが選択肢から落ち、ヨーロッパ・フォードの技術チームは、新しい2ペダルの10速ATで納得しているようにも思える。しかし、このクルマのベストは、なんと言ってもマニュアルだ。
AT化のメリットのひとつとして燃費もあげられるが、10速ATに搭載されたオーバードライブを駆使しても、6速マニュアルと比較して、NEDCサイクルで0.2km/ℓしか燃費は改善していない。将来のオーナーにとって、この数字は魅力的に映るのだろうか。
実際の使用シーンでは、この差は小さくなると思われるし、運転の仕方によっても大きく変わるはず。マスタングのわずかな燃費の差を気にするほど、クルマを楽しめる人生の時間は長くない。
繰り返しになるが、ヨーロッパ・フォードには、マニュアル版の導入を期待せずにはいられない。
フォード・マスタングGT5.0 V8 ATのスペック
■価格 4万3095ポンド(646万円)
■全長×全幅×全高 ―
■最高速度 249km/h
■0-100km/h加速 約4.0秒
■燃費 8.2km/ℓ
■CO2排出量 270g/km
■乾燥重量 1831kg
■パワートレイン V型8気筒4951cc
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 450ps/7000rpm
■最大トルク 53.6kg-m/4600rpm
■ギアボックス 10速AT
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