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回顧録 ロータス2イレブン vs アリエル・アトム300 vs エルフィンMS8クラブマン vs ケーターハムR400 vs ブルック・ダブルR 前編

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回顧録 ロータス2イレブン vs アリエル・アトム300 vs エルフィンMS8クラブマン vs ケーターハムR400 vs ブルック・ダブルR 前編

もくじ

前編
ー クレイジージャーニーの始まり
ー ロータスとの対話
ー ロータス史上最大級の刺激
ー 恐怖さえ感じさせるエルフィン

長期テスト アウディTT RS(1) 第一印象ならびに支払った金額は

後編
ー ブルックは21世紀のスーパーカー
ー 古典的な味わいのケーターハム
ー 二者択一
ー 勝敗やいかに

クレイジージャーニーの始まり

月曜日の朝4時半。私はロータス2イレブンに乗り込み、ブライトンから西ウェールズへと向かった。そしてその5時間後、世の中のナンバープレートの付いたクルマのなかでは最高に刺激的でクレイジーな4台と合流した。

イングランドの南海岸からウェールズの西海岸まで行って帰ってくると900km近くに達する。もし好きなクルマを選んでいいという選択権を与えられたら、たいていの人はパワフルで快適なサルーンを選ぶはずだ。座り心地のいいシートと高級なオーディオシステム、快適な空調、そして洗練された乗り心地と優秀なハンドリングを備えたクルマ。そう、メルセデスSクラスかジャガーXJあたりだ。  

ここはあえて結論を先に言ってしまおう。私は対極にある原始的なクルマを選んだ。ルーフもなければ、ドアもない。ウィンドスクリーンは一応付いてはいるが、下半身に風が直接当たらない程度の防風性しか持たないハードコアなスポーツカーを。われわれは現行の市販車のなかではもっともクレイジーなクルマばかり5台、とっかえひっかえ延べ18時間に渡って狂ったようにドライブした。

疲れたのは確かだが、安楽なサルーンにすればよかったとは少しも思っていない。もう一度やれと言われたら、たぶん喜んでやると思う。それほどまでに、この手のハードコアなスポーツカーがもたらしてくれるスリルは強烈なのだ。  

ロータスとの対話

この5台にとって理想的な道は、公道ではなくサーキットだという意見はもっともである。しかし、われわれは今回のグループテストの舞台をサーキットにしようとは思わなかった。それよりも18時間走り続けて可能な限り遠くまで行き、あらゆる種類の道路を走らせてみたかった。そうやって『もっともサーキット向きの1台』を決めることにしたのだ。最終的なウィナーは、この年の『ベスト・ドライバーズカー・コンテスト』に、このカテゴリーのクルマを代表して出場することになる。

私は4台と落ち合う約束をした、M4号線を終点まで走って北西にしばらく行ったところまで行く道中で、ロータス2イレブンと互いにさまざまな感情のやりとりをした、実は乗り始めてから暫くのあいだは私はこのクルマのことをまるで好きになれなかった。2イレブンも私を拒んでいたに違いない。  

午前5時、ブライトンのあたりでは雨がパラパラと降り、霧がかかっていた。そんな状況にあって、ロータス2イレブンは理想的な旅の相棒とはほど遠い存在である。まず前方がよく見えない。いや、クルマの視界自体が悪いわけではない。このクルマを運転するには必須のフルフェイス・ヘルメットの着色バイザーが視界を悪化させていたのだ。クリアタイプのバイザーを用意するべきだったと後悔したが、後の祭りである。  

とにかく寒い。ヒーターがないので、私は9月だというのに2輪用の防寒ズボンを履き、上には厚い防水コートを着ている。さらに騒音も酷い。高さ5cmほどしかないエアロスクリーンをかすめてヘルメットを叩き付ける風の音が、ほかの音がほとんど聞こえないくらいに騒々しいのだ。  

そんな過酷な環境に身体をさらしているときの人間の心の作用とは実に不思議なものだ。苦痛が少しでも和らいでくると、そこに喜びを見いだせる。陽が昇り始めてバイザーに雨粒が当たらなくなると、私はとても晴れ晴れとした気持ちになった。あれほど騒がしかった風の音がほとんど気にならない。そしてなによりも、このクルマのドライビングの本質に大いなる歓びを見いだせるようになった。

ロータス史上最大級の刺激

2イレブンは過激なクルマである。単にエリーゼをスパルタンに仕立てただけのモデルではない。事実上、まったくのニューモデルといっていい感覚である。ドライビングポジションひとつとっても、エリーゼやエキシージとはまるで違う。着座位置はとても低く、小さなスクリーン越しの視界と、3つのグループCカー風ミラーが特徴的だ。そしてスロットルペダルを踏み込むと、ロータスのこれまでのいかなるモデルとも違う加速が襲ってくる。エスプリV8のもっとも過激な仕様でさえ、この2イレブンにはかなわない。  

高速M4号線でも、2イレブンはロケットのごとく速く、身軽だった。レーンチェンジのときには、隣にほかのクルマがいなくなるまで待ち、加速するだけでいいのだが、スーパーバイクが追い越し車線を突進してこないことを祈らなければならない。2イレブンには後方視界というものが皆無に等しい。ミラーが3つもあるじゃないかって? 気にする事はない。あれはほとんど飾りだ。  

2イレブンが本領を発揮し始めたのは、ランデブー地点まであと30kmほどのところで高速を降りてカントリーロードに入ってからだった。ハンドリングは驚くほどシャープで、コーナリングスピードも異様に速いが、同時に高いドライビングスキルが求められる。ステアリングは正確だから、コーナーのアペックスにピタリと狙いを定められるし、余計なキックバックもほとんどない。 強力なブレーキのおかげで瞬時にスピードを落とすことができる。ABSの介入が早すぎると感じる場面もあったが、それも飛ばしすぎの警告のサインだと納得できる範疇にある。  

ほかの4台とのランデブー地点に到着して2イレブンから降りたとき、私の目は血走り、心臓はバクバクいっていた。5時間におよぶ2イレブンとのドライビングのラスト30分間は、最高にハードでご機嫌なドライビングだった。最初の使命を全うした私は久しぶりに興奮していた。

恐怖さえ感じさせるエルフィン

今回われわれが集めたマシーンはご覧のとおり、そうそうたる顔ぶれだが、いつものように「偽物」が1台混じっている。それを見分けるのはさほど難しくないだろう。

エルフィンという名前は、カンナム・マシーンに由来するというが、その姿形はほかのクルマと並べて見るとヘタなパクリにしか見えない。大きすぎるホイールとタイヤ、寸詰まりのボディ、まるでトラックのように太いウィンドスクリーン・ピラーの集合体はチグハグというよりほかはない。  

偽物っぽさはコックピットにも当てはまる。ステアリングホイールやシフトレバーは妙に太くて不格好で、操作力も重い。2イレブンとは対照的だ。そして肝心の走りでも、V8エンジンを搭載したエルフィンはロータスとはまるで違うフィールを示す。ステアリング・フィールは、スポーツカーとして最悪の部類に属する。サーボの効きがひどく悪いブレーキも同様だ。

コルベットのエンジンを積んだエルフィンは、常に、特にハードに走らせているときは、なにか重大なトラブルが起きるのではないかという恐怖を感じるクルマだ。それでいて、今回の5台の中でも2番目に高価だから、今回参加したスタッフの誰もが、エルフィンに乗るのを嫌がった。  

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