もくじ
前編
ー ネオヒス・スーパーカーのススメ
ー アストンの救世主
ー 英国紳士のごとき振る舞い
ー 黒いドレスの美女
ー じゃじゃ馬慣らしもまた一興
後編
ー カルト的古典
ー スーパーカー界の万能選手
ー 結局どれを選ぶべきなのか?
ー ストレスフリーさに軍配
カルト的古典
高評価が実車を追い越してしまっている感がなきにしもあらずだが、1974年に初めて911にターボが搭載されて以来の付き合いのなかで、911ターボは代を重ねるほどに前モデルをはるかに凌ぐ速さを手に入れ、そして格段に戦闘力を増してきたのはまぎれもない事実だ。
タイプ993のこのモデルは1995年に発売された。もちろんわれわれの評価は最上級に近い。フルタイム4WDを採用した初めてのポルシェ・ターボであり、レスポンスに優れるツインターボを導入したのも初めてであり、伝説の空冷式水平対向エンジンを搭載した最後のクルマでもある。
ここに用意されたダークブルーの911ターボは1996年式である。13万2000kmという走行距離に不安がなかったわけではないが、ほかの2台との価格差をできるだけ少なく抑えるためにはこういう選択をするほかなかった。
塗装の状態もよく、斬新なルックスのホイールを履いたこの911ターボは、間違いなく最後期に作られたものだ。だが、右ハンドルのため、各ペダルはかなり左側にオフセットしており、スイッチ類の配置も見事なほどわかりにくい。水冷になって以降の911にしか乗ったことがない人にとっては、驚くべき仕立てに見えることだろう。しかし目の前にあるこのクルマは、多くの当時のほかのドイツ車たちと同様に、冷酷なほどに過剰な技術が投入されている。
スーパーカー界の万能選手
フラット6を始動するとフェラーリと張り合えるほどの注目を浴びるが、それはオプションのスポーツエグゾーストを装備しているからだ。そしてそのサウンドにふさわしく、このクルマは実に速い。出力特性がピーキーなF355や、エンジン性能が車重に足を引っ張られているDB7のあとで乗ると、1500kgのボディに408psと54.0kg-mを載せたこのマシンの走りは筋肉そのものだ。
ターボのタイムラグは最小限に抑えられており、4WDのトラクションのおかげで、たとえ路面が滑りやすい状況でも躊躇なく路面にパワーを叩きつけることができる。もちろん、スイッチ類の操作をちゃんと覚えられればの話だが。
例によってこのクルマは911特有のリアエンジン・レイアウトを採っているため、そのクセを征服して乗りこなすという魅力に満ちている。エンジンの重量がほぼそのままのしかかるリアアクスルと思い切り軽いフロントアクスルの組み合わせは、ほかのクルマにはない特徴的ドライビングフィールをもたらす。これに慣れるにはある程度の時間と、それに耐える忍耐力が求められるが、コツをつかんでしまえばコーナーを抜けるたびにスピードは増していき、アストンやフェラーリをはるか後方に置き去りにすることも可能だ。
911ターボは徹底的に運動効率が高く、センセーショナルなサウンドを発し、カリスマ性を備えたブランドが多いドイツ車のなかでも特に際立った存在だ。今回の3台のなかではもっとも実用性が高く、そしてあらゆるシチュエーションで最速を誇り、ドライビングに満足感がある。このクルマこそが、24時間365日の使用に耐える最高の中古スーパーカーである。
結局どれを選ぶべきなのか?
買ったクルマの値段が下がっていくのは悲しいことである反面、おかげでわれわれはこの垂涎の3台を格安で手に入れることもできる。どんなエンスージァストであれ、このうちの1台を入手すれば、例えば新車のポルシェ・ケイマンよりもはるかに充実したカーライフを楽しめるはずだ。
だが、この3台はそれぞれのキャラクターがまったく異なっているので、どれが皆さんにとってベストなのかをアドバイスするのはむずかしい。間違いなくいえるのは、800万円の投資が可能でランニングコストを負担できる経済力があるなら、それはとても幸運であるということだ。そんな幸運の持ち主の参考になるかどうかはわからないが、私自身の選択をここで披露しよう。
私はまず、DB7ヴァンテージを除外することにした。確かにお買い得な物件であり、しかもオリジナルの直6モデルよりも格段によくなっているのだが、本気で12気筒のスーパーカーを買おうと考えているのであれば、この選択はない。このクルマではドライバーに真のドライビングプレジャーを与えられないからだ。
その意味でフェラーリは、とても誘惑されるクルマである。特にF355は信頼性が高く、整備記録がきちんとしていればなんの問題もないとディーラーでも断言されるほどだ。
ストレスフリーさに軍配
にもかかわらず、私はまだこのクルマを信じるかどうかは賭けだとしか思えずにいる。また、別の点から見ると、このクルマの強烈な魅力は実用性の妨げにもなる。例えば自分のF355をコインパーキングに停め、平気でその場を離れられるだろうか?
以上の理由から、私が選んだのは残る911ターボである。いつもの筋書きどおり? 結果的にはそうかもしれない。けれど、私としてはそんなつもりはないし、それは各車の走行距離の違いを見ていただいてもわかるはずだ。
ポルシェの品質を考えれば、このクルマはこれからも状態良好なまま年を重ねていくだろう。大事に扱ってさえいれば、メーターを丸ごと新品に交換されても気がつかないほどかもしれない。
今回の3台のなかでは精密機械という表現がもっともふさわしく、しかもあらゆる天候で路面を問わないスーパーカーであり、なのに子供用とはいえリアシートが付いていて、そして乗り手の心と一体化するなにかを秘めている。これだけ揃えば、ほかを選ぶほうが不自然というものだろう。
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