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これで充分か? まだ足りないか? 新型リーフの試乗で思うEVの未来

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これで充分か? まだ足りないか? 新型リーフの試乗で思うEVの未来

 新型が登場した日産の電気自動車リーフ。たしかにデザインも乗り味もよくなった、と自動車メディアでは話題の1台。しかしながらEVという新しいクルマとしての形に、ユーザーがどこで満足すればいいのか、いったいいつ買い時なのか迷っているのも事実。しかしそこにはマーケティング用語でいう「キャズムの谷」とよばれるものが大いに関係しているという。鈴木直也氏が指摘するプラグインハイブリッドと競合するためのリーフとはいかに!?

文:鈴木直也/写真:池之平昌信

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■日産リーフの走りは大幅に進化を感じる

 久々に難しいテーマの原稿を依頼されちゃったなぁ……。ベストカー編集部イーボシくんからリーフの試乗記執筆を頼まれて、ちょっと考え込んでしまった。さらっとハードウェアや走りを解説するだけなら、そんなに苦労はしない。新型リーフのEVとしての革新の"コア"は、突き詰めれば電池の進化だ。

 バッテリー容量を24→40kWhに増量したことで使えるエネルギーが増える。あわせて、インバーターとパワーコントローラの改良によってモーターに大きな電力を送ることが可能になる。すると、モーター本体は従来と同じものを使っているのに、馬力は80kW→110kW(150ps)、トルクは280Nm→320Nm(32.6kgm)へとアップする。

 結果、全開時のトルク感や高速域での伸びのよさに関しては従来型より明らかにパワフル。劇的とまではいえないけれど、誰が乗ってもその違いがわかるくらい走りが活発になっている。ただし、これがEVのジレンマなんだけれど、ごく普通に街中を流す程度のアクセル開度では、旧型との違いをほとんど感じない。内燃機関だと同じユニットでもチューニングの違いが走りのキャラクターの差となって現われるのだが、電気モーターにはそういう個性は期待できない。

 そのかわり、電気モーターには制御に対して瞬時に正確な反応を示すという美点があって、プロパイロットを使って前車にクルコン追従する時などは効果絶大。セレナではまだるっこしかった静止からの再スタートや渋滞追従が段違いにスムーズに機能する。プロパイロットについては、車線内の"ゆらぎ"が減ってレーンキープの正確性が向上。「ボタンひとつで自動運転」というのは言い過ぎだけど、その理想に一歩近づいている。

 また、ノートe-POWERで好評の1ペダルドライビングモードが用意されたのも、回生ブレーキを自由に制御できるEVならでは。新型リーフは渋滞路では世界一ストレスなく走れるクルマ、そう言っても過言じゃない。 

プロパイロットはたしかに便利な機能。ただ「自動運転」ではないとの指摘も

 

■「キャズムの谷」を超えるには60kWhモデルが必要!?

 というわけで、ここまではすべてハッピー。新型リーフは前モデル最大の欠点だったスタイリングをがらっと模様替えして、エッジの利いたスタイリッシュなボディをまとったこともあり、スポーティさやオシャレ度も大幅アップ。究極のエコカーというイメージに飛びつく新し物好きだけではなく、より幅広いユーザー層にアピールできるEVに進化したといえる。

 しかし、ではそういう"幅広いユーザー層"が新型リーフに飛びついて売れゆきが倍増するかといわれると、やっぱりウームと考え込んでしまうのだ。悩ましいのはいうまでもなく航続距離の問題。新型リーフの航続距離はJC08モードで400kmだが、ご存じのとおり実用上はその7掛けくらいが相場。実際、今回の試乗でもそのくらいの電費を示した。ごくごく普通のユーザーが280~300kmの航続距離で満足できるか。いつもながらそこが問題になる。

 マーケティング用語に"キャズム理論"というのがあって、ハイテクな新製品にはまずヲタク(イノベーター)が飛びついて、次に新し物好き(アーリーアダプター)が手を出す(このへんではまだ普及率は10~15%くらい)。その製品が本当にブレイクするためには、感度の高い一般大衆(アーリーマジョリティ)が買ってくれないとダメなのだが、新し物好きと一般大衆の間には"キャズムの谷"という大きなギャップがあって、この谷を越えるには何か決め手となる強力なセールスポイントが必要とされる。

 何が言いたいのかというと、新型リーフの実用300kmという航続距離は、この"キャズムの谷"を越えるのに充分か、というハナシ。ユーザーの事情は十人十色だから一概には言えないんだけれど、集合住宅住まいで充電設備のある自宅駐車場を持っていないぼくの感覚では、「まだちょっと足りないなぁ」というのが実感なのだ。

 このあたりの"相場観"は人によってずいぶん違うので、最近は会う人ごとに「リーフってどうよ?」と聞き回っているのだが、本誌でもおなじみ国沢センセの「電池容量60kWhくらいにブレイクポイントがあるのでは?」という言葉が、ぼくにとっていちばんストンと腹に落ちる意見だった。なんたって国沢センセ、EVについては業界随一の論客だしね。

 つまり、キャズムの谷を越えるには実用で450kmくらいの航続距離が欲しい。それならば、自宅に充電設備がないぼくのようなユーザーでも、価格次第では乗ってみようと重い腰を上げるんじゃないか、それが実感なのだ。今回試乗したリーフは最上級モデルのGで車両価格約400万円。ここから補助金40万円を引くと、ざっくりプリウスPHVと競合する価格帯にある。

 アーリーアダプター層には今度の新型リーフはかなり訴求力がアップしたのは間違いないが、日産の本当の狙いはキャズムの谷を越えて普通のユーザーを引っ張ってくること。だから、無理を承知で言わせていただければ、標準プリウスと真剣に迷うくらいのアグレッシヴな価格設定か、あるいは400万円で買えるバッテリー容量60kWhモデルが欲しい。そのへんにブレイクポイントがあるような気がいたします。

クルマ好きはEVの走りのよさを認識していても、一般層へのアピールとなるとまだそこには大きな隔たりがある

 

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