現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > ケイマンGT4 vs MRスポーツのランドマーク 前編

ここから本文です

ケイマンGT4 vs MRスポーツのランドマーク 前編

掲載 更新
ケイマンGT4 vs MRスポーツのランドマーク 前編

もくじ

前編
ー 5つ星のケイマン、数十年後も特別か
ー 欧州を震撼させた日本の雄、NSX
ー マラネロの新世代の開拓者、F355
ー 最新か伝説か 同じ予算で選ぶなら…
ー 進歩する技術と時を超えるオーラ
ー 初期のデジタルと熟成のアナログ
ー 機械の不備を忘れさせる跳ね馬の官能性

ポルシェ・ケイマンGT4 海外市場

後編
ー 高品質でカリスマ性も備えるフラット6(9月17日公開予定)
ー 史上屈指のハンドリングマシン、NSX(9月17日公開予定)
ー 繊細にしてリラックスした日本製スーパースポーツ(9月17日公開予定)
ー 活気はあるが古典的なF355(9月17日公開予定)
ー 先例たちとは異なるバランスが印象的なGT4(9月17日公開予定)

5つ星のケイマンは数十年後も特別か

ポルシェ・ケイマンGT4は今年、忘れられない強い印象を残した。路上とサーキットでの走行テストや動力性能の計測で5つ星を獲得し、£100,000(1505万円)以内のスポーツカーの中でのベストという結論に至った。

イギリスにおける今年のベスト・ドライバーズカーの候補としても十分だ。その選考も近づいてきた中で、過去のライバル2台と比較しながら、少し冷静に判断してみたい。

まず今回明らかにするべきテーマは、このクルマがどれほど素晴らしいのか、その印象はどれほど強いものかを確認することだ。2015年に待ち望んでいたGT4というクルマが、2025年や2040年にも「世界基準」「ジャイアント・キラー」「ランドマーク」だったと評価できるだろうか。

これらの答えは新しい流れを生むと共に、今後20~30年、普遍的なスポーツカーの意味付けを行うことでもある。20年前は珍しくなかったリトラクタブル・ヘッドライトやカセットデッキなどは、今となっては古いロックバンドを録音したカセット・テープと同様にレアな存在となってしまったが。

欧州を震撼させた日本の雄、NSX

ホンダNSXは現在、アメリカ製の後継モデルを発表し、話題となっているクルマだ。ハイブリッドシステムを搭載した新型も、1990年に発表された初代NSXのように、スポーツカーの世界に大きな影響を与えるクルマとなるだろう。

初代NSXはアルミニウムのボディ構造を開拓し、日常的な使い勝手の良さを持ち、驚くほどのコストパフォーマンスで、イギリスではベスト・ドライバーズカーに選出された。日本の技術の見本市のようなクルマだった。

今回の1台は、イギリスに現存する中ではもっとも状態が良いものだと思う。3200ccエンジンとマニュアル・ギアを搭載した2005年登録の最終型モデルで、走行距離はわずか4万km。ホンダUKが所有し、維持管理しているものだ。

欧州の一部の自動車メーカーにとっては、NSXに並ぶクルマを作るのに10年ほどが必要となった。一方で、当時のフェラーリの反応はとても期待されていた。マラネロの328と348が当時のホンダのベンチマークだったからだ。

マラネロの新世代の開拓者、F355

そして1994年にF355が発表される。ルカ・ディ・モンテゼーモロの指揮の下で生産された初のフェラーリで、これは1980年代の不調から脱するモデルとなった。その後のマラネロの業績は加速を続け、経営難から脱出するが、やがて自動車業界の長者番付に名を連ねるセルジオ・マルキオンネがフェラーリの会長となった。

フェラーリをスーパーカーの設計において近代化に導いたのがF355だと言える。348の持っていた運動性能の不具合を改善し、パワーステアリングやアダプティブ・ダンパー、F1パドルシフト・セミATなどを搭載し、幅広い層がフェラーリのオーナーとった。

低走行距離で右ハンドル、ベルリネッタ・ボディのマニュアルギアとなると、イギリスでは£80,000(1204万円)はくだらないが、左ハンドルの後期モデルでパドルシフト仕様なら、£15,000(226万円)ほど安く手に入る。今回のテスト車両は、1997年式の走行距離66,000kmで、ブランズ・ハッチにあるフェラーリのディーラーで販売している中古車だ。

最新か伝説か 同じ予算で選ぶなら…

そして今、£65,000(978万円)を払うなら、ケイマンGT4を選ぶか(ディーラー車に限定される)、ホンダNSXを選ぶか(最終型の低走行モデルが見つかるはず)、フェラーリにするか(左ハンドルのF1パドルシフト・セミAT仕様だ)。それぞれ善し悪しがある。しかし、われわれが知りたいのは、ケイマンGT4のドライビング性能が過去の名車と同様に確かなものかどうか、という点だ。

伝説のスポーツカーに乗りたいのなら、希少で、特別で、限りなく楽しいクルマを選ぶべきだ。ホンダが管理する貴重な1台のNSXは、ジェット戦闘機を連想するキャビンフォワードなコックピットと、目を引く技術が盛り込まれている。

フェラーリは非常に美しいボディに魅力が凝縮されている。フライング・バットレスを持った少し古風なリア周りのスタイリング、斬新な曲面、ワイドなスーパーカーらしいプロポーション。ミッドシップのフェラーリの中でもベストなデザインの1台だといえる。

スポイラーやウィング、ブレーキに20インチホイールなど、ケイマンGT4は先の2台と競合しているようには思えない。素晴らしいクルマに違いはないが、他の2台のようなオーラは感じ取れないが、それはわれわれがケイマンのデザインを見慣れてしまっていることもあるだろう。ほかの2台は、20年ほど昔の希少なクルマというだけで、違った目で見てしまう。ケイマンとは異なる。

進歩する技術と時を超えるオーラ

とはいえケイマンGT4は、メカニカルな部分ではまったく劣っていない。3800ccフラット6は、NSXの3200ccV6に対して馬力もトルクも勝っている。NSXの場合、驚くことに新車当時でもスーパースポーツと呼べる馬力はなかった。対して3500ccのマラネロ製V8エンジンは、8500rpmからレッドゾーンとなる。凄いエンジンだ。

ケイマンは、この3台の中では明らかにもっとも速い。F355に比べ比較的ロングギアであるにも関わらず、中回転域でも十分な加速をするし、NSXと比べれば全回転域で有利だ。ただし、自動車業界の進歩を過小評価している人もいるかもしれないが、現代のホットハッチにはF355より0-100km/h加速で優れているモデルもあるほどだ。

とはいえ、スピードはそれほど重要ではない。3台とも今でも十分速いクルマだ。重要なことは、GT4のエンジンは、フェラーリの40バルブV8エンジンと、ホンダのスペック上は非力なV6エンジンのように、時代を超越した特別な何かを感じられることだ。この3種類のエンジンは、それぞれ不思議な魅力に溢れ、こちらの要求に常に反応してくれる。

初期のデジタルと熟成のアナログ

NSXのV6は、この中ではもっとも古く非力なため、肩を並べるのが難しいという言い訳もできる。しかし、それは不要だ。低回転では大人しく無表情な印象だが、全域にわたってスムースで洗練されている。頭の直後で聞こえるエンジンノイズは、4500rpmから心地よくなり、8000rpmまで実際の加速と操作との一体感を保ちながら駆け上がる。

ギアチェンジは最高に楽しい。ペダル類とステアリングホイールの重さの設定も完璧だ。そして、アクセルペダルのストロークの長さと独特の感触は印象的。現代のバイワイヤ方式では、それは持ち合わせていない。ただ皮肉なことに、NSXのスロットルはバイワイヤによるデジタル制御で、システムとしては初期にあたる。この豊かな感触を生み出すには、かなりの労力を費やしたはずだ。

一方、機械的にリンクされたF355のスロットルのフィーリングは、NSXのデジタル制御と変わらず完璧なもの。少し前のクルマがほとんどそうだったように、フェラーリのペダルは潤滑油が必要でもあるが、直接ケーブルで接続されている。

低速域は安楽だ。高速道路でのクルーズでは、ギアチェンジするかペダルを若干踏み込む程度でほとんどが事足りる。現代のクルマではこうはいかない。当時のクルマに比べれば、操作感覚は半分ほどが削がれている。見方にもよるとは思うが。

機械の不備を忘れさせる跳ね馬の官能性

フェラーリにムチを入れると、エンジンの回転上昇に合わせて独特の色気あるノイズが響きわたる。余りの華やかさに、他のモノゴトは目に入らなくなるほどだ。感情が高ぶる。F1セミATとの組み合わせはマニュアルほど完璧ではないが、壊れにくいし、遅いわけでもない。

ただし、ほんの数km飛ばしただけで、水温計の針が100℃に近づき、少し減速させることになる。NSXでは起きないことだ。そしてコーナーでは、フェラーリのエンジン重量を意識することになる。(後編に続く)

こんな記事も読まれています

安い? 高い? トヨタ新型「ランクル250」は520万円から!「無骨すぎて」カッコいい!? 原点回帰モデルに反響集まる
安い? 高い? トヨタ新型「ランクル250」は520万円から!「無骨すぎて」カッコいい!? 原点回帰モデルに反響集まる
乗りものニュース
【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第3回】温かい歓迎を受けた春の鈴鹿。悔やみきれないミスと、1ストップ戦略で得た自信
【F1チームの戦い方:小松礼雄コラム第3回】温かい歓迎を受けた春の鈴鹿。悔やみきれないミスと、1ストップ戦略で得た自信
AUTOSPORT web
レッドブルF1は2025年も現在のコンビを継続か。パフォーマンスを改善したペレスがシート争いをリード
レッドブルF1は2025年も現在のコンビを継続か。パフォーマンスを改善したペレスがシート争いをリード
AUTOSPORT web
初の中国GPに臨む角田裕毅。手強い週末を予想も「自信はある。Q3進出と入賞を狙いたい」/F1第5戦
初の中国GPに臨む角田裕毅。手強い週末を予想も「自信はある。Q3進出と入賞を狙いたい」/F1第5戦
AUTOSPORT web
ゴツすぎる新型「“軽”SUV」実車公開! ワイド化&オシャグレーがカッコイイ! まるで装甲車なスズキ「ハスラー」に反響も
ゴツすぎる新型「“軽”SUV」実車公開! ワイド化&オシャグレーがカッコイイ! まるで装甲車なスズキ「ハスラー」に反響も
くるまのニュース
日産 "武士の甲冑" デザインの新SUV公開 「キャシュカイ」改良新型、欧州で今夏発売へ
日産 "武士の甲冑" デザインの新SUV公開 「キャシュカイ」改良新型、欧州で今夏発売へ
AUTOCAR JAPAN
スズキ「カプチーノ」や「アルトワークス」が激走! 軽自動車だけで争う200分の戦い「東北660耐久レース」が開幕
スズキ「カプチーノ」や「アルトワークス」が激走! 軽自動車だけで争う200分の戦い「東北660耐久レース」が開幕
Auto Messe Web
「ガンディーニ追悼」に初の「アメリカンヘリテージ」の企画など大人が楽しむ「オートモビルカウンシル2024」閉幕。過去最高の3万9807人が来場しました
「ガンディーニ追悼」に初の「アメリカンヘリテージ」の企画など大人が楽しむ「オートモビルカウンシル2024」閉幕。過去最高の3万9807人が来場しました
Auto Messe Web
【殺人チャイルドシート】 違法チャイルドシート買った人に返金はある? アマゾンと楽天の対応は?
【殺人チャイルドシート】 違法チャイルドシート買った人に返金はある? アマゾンと楽天の対応は?
AUTOCAR JAPAN
高速SA・PAのNo.1「ハイウェイめし」決定! 「高級志向にしたくない」担当者の思い  1位のメニューは“ごはんノンストップ”!?
高速SA・PAのNo.1「ハイウェイめし」決定! 「高級志向にしたくない」担当者の思い 1位のメニューは“ごはんノンストップ”!?
乗りものニュース
海外ライターF1コラム:24戦の理不尽なカレンダーが招く問題。人材不足が深刻化、“根無し草感”で疲弊するドライバー
海外ライターF1コラム:24戦の理不尽なカレンダーが招く問題。人材不足が深刻化、“根無し草感”で疲弊するドライバー
AUTOSPORT web
スズキが「謎のクルマ」実車公開! めちゃゴツい“骨組み”に「Sマーク」装着! “強靭な構造”で未来を支える「新型ユニット」に期待!
スズキが「謎のクルマ」実車公開! めちゃゴツい“骨組み”に「Sマーク」装着! “強靭な構造”で未来を支える「新型ユニット」に期待!
くるまのニュース
マツダ、2024年スーパー耐久シリーズに3台で参戦
マツダ、2024年スーパー耐久シリーズに3台で参戦
レスポンス
マイチェンしたいすゞ・ギガが2024年問題の救世主に! 低床3軸でドライバーの負担も軽い
マイチェンしたいすゞ・ギガが2024年問題の救世主に! 低床3軸でドライバーの負担も軽い
WEB CARTOP
ポルシェ963最新ファクトリーの利点を語るロッテラー「ピット作業のスピードと精度が上がった」
ポルシェ963最新ファクトリーの利点を語るロッテラー「ピット作業のスピードと精度が上がった」
AUTOSPORT web
SPKがシミュレーター機材の研究施設「シミュレーターラボ」を開設 企業や行政、eスポーツイベントに場所提供も
SPKがシミュレーター機材の研究施設「シミュレーターラボ」を開設 企業や行政、eスポーツイベントに場所提供も
くるまのニュース
トヨタ ランドクルーザー250 をモデリスタがカスタム…都会派もアウトドア派も
トヨタ ランドクルーザー250 をモデリスタがカスタム…都会派もアウトドア派も
レスポンス
なんで芝生が燃え広がったんだ?? FIA、F1中国GPの火災再発防止のため詳細な調査を実施へ
なんで芝生が燃え広がったんだ?? FIA、F1中国GPの火災再発防止のため詳細な調査を実施へ
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2420.02794.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

600.05900.0万円

中古車を検索
NSXの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2420.02794.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

600.05900.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村