1クラス以上車格が上に感じられる堂々たるデザイン
対峙した瞬間「これはいい」。そんなクルマはなかなか少ない。今回試乗するフォルクスワーゲンの小型SUV「ティグアン」はそのレアなケースだ。対峙した瞬間ということはすなわち見ただけ。
【試乗】ゴルフGTI譲りの2リッターターボを積んだVWパサートR-Line
外観も含めたデザインは主観でしかないから、単に好みなだけ? と思われるかもしれないが、ことティグアンに関してはそうではない。前モデルよりも明らかに車格が上がった印象で、クラスを超えた雰囲気を持っているのだ。
じっくりスペックを見ると、前モデルに比べて全長70mm、全幅30mm、ホイールベースは70mm、実際に大きくなり、逆に全高は35mm引き下げられている。クルマの世界でよく言われる「ロー&ワイド」である。こうした外観上の押しの強さは、SUV好きには嬉しい要素。
最近のSUVは押しが強くも品のある「一流ホテルに乗り付けられるような」高級感が求められるが、それもティグアンはクリア。じつはこの試乗会、東京都心の高級結婚式場を拠点に行われたのだが、そのエントランスにもまったく違和感なく溶け込んでいたことで、実際に検証できた。こうした場所を選ぶこと自体、VWの自信の表れなのだろう。
もちろんボディ拡大は見た目だけでなく、ラゲッジ145リットル、室内超26mm、リヤシートの膝前スペース29mm、前モデルよりも広くなっている。
混み合った東京都心でも運転席ではサイズアップが気にならない
では試乗に移ろう。今回試乗した車両は3グレードで展開されているなかの最上位である「TSI R-LINE(アールライン)」。走りに関する違いはタイヤサイズで、17、18、19インチがそれぞれのグレードに設定され、R-LINEは19インチを履く。
前述した都心の試乗会場から出て、都市部の一般道を走行。東京の都心は知らない人でも想像が付くと思うがゴチャゴチャと混み合い、年がら年中車線変更、信号でのストップ&ゴーにさらされる。もちろん他車の動きにも常に気を配らねばならない。
そんなシーンでは、瞬時の加速や狙ったとおりの減速、簡単にいえば思ったままに加減速できるクルマが非常に嬉しい。精神的な疲れが少ないのだ。そのあたり、ティグアンは合格。VWのお家芸ともいえるダウンサイジングターボの特性は、ゼロ発進でもスッと加速してくれるし、40から60km/hあたりの速度調整も思いのまま。
ティグアンが積む1.4リッターターボは、低回転の1500rpmから最大トルクの250N・mを発生するので街乗りでの使い勝手は抜群というわけだ。もちろん今やVWのみならず欧州メーカーを中心に当たり前になった、デュアルクラッチ2ペダルのDSGの制御もこれを後押しする。
もうひとつ、試乗後、結果的にわかったことだが、ボディサイズ拡大はまったく気にならなかった。小型SUVとはいえ、欧州車は全幅が大きめでありR-LINEは他グレードに比べて20mm大きい1860mmという数値。日本の道路ではけっして小型ではないのだが、運転が苦にならなかったということは、視界を含めて車幅などが掴みやすかったということだろう。
気になるのはステアリングを切り出した瞬間の動きがナーバスな点
一方で気になったのは、続いて走行した首都高速での走りだ。首都高速は速度域が60から80km/h程度で、左右コーナーが連続する場所もある。また、路面はフラットでない上に継ぎ目だらけで、常に路面からの入力にさらされる。
速度を上げ、コーナーに進入する。かなりステアリング操作に対する初期応答が過敏だ。ステアリングのセンター付近で細かく左右に動かすとピクピクとノーズが反応する。わずかな操作で瞬時にヨーが発生するので、曲がり出す瞬間のクルマの動きに滑らかさ、スムースさがない。
正確にいえば、もの凄く慎重に操作することで滑らかに動かすことはできるが常に神経を使ってドライブするのでは日々クルマと付き合って行く上でマイナスだろう。
もちろん反応の鈍いクルマは論外だが、もう少しシットリと動く方が疲れないし、ステアリング操作に気を遣わずに済む。
ただ、曲がり始めたあと、グルッと回り込むコーナーのなかでは一定の舵角で気持ち良くコーナーを抜けられる。コーナリング中、荷重がかかった状態で路面の継ぎ目を乗り越えても姿勢が乱れることなく、タイヤがシッカリ路面に押しつけられていた。
試乗車はハイラインに以上にオプション設定される、アダプティブシャシーコントロール「DCC」を装備していて、モードで足の硬さが変更できる。
コンフォート、ノーマル、スポーツと切り替えると確かに走りの特性が変化し、当然スポーツのほうが硬めだがコーナリングでは安定寄りの特性となる。ただしスポーツを選択しても、過度な硬さはなく、突き上げによる不快感などはなかった。このあたり、シャーシの完成度、ブッシュなどを含めたサスペンションの質の高さのなせる業だろう。
ただし前述の、ステアリングセンター付近の過敏さについては、どのモードでも見られた。コーナリング中の動きや突き上げのいなしなどに問題がないことから考えても、やはり45偏平の19インチタイヤが影響しているのだと思う。
今回は試せていないが、18インチ(55偏平)、もしくは17インチ(65偏平)であれば、もっとシットリとした動きになると想像できる。機会があれば追ってリポートしたい。
さて、高速でのエンジン出力だが、これもまったく不足はなかった。試乗状況は大人の男性2乗+50kg程度の荷物。
合流時の加速、追い越し加速共に余裕を残しつつ行える。同等の出力・トルクをもつNAエンジンに比べれば、踏み込んだ際のエンジンの唸りはあるものの、それを車体側が静粛性や振動を伝えないようにすることでドライバーに感じさせないようにしている。外観で感じた、車格が上がった印象は、実際の走りでも感じられたというわけだ。
カーライフが快適になること間違いなしの先進装備が満載
さて、新型ティグアンは、さまざまな快適装備の充実も注目ポイントとなっている。
まず、通信機能によりフォルクスワーゲンのモバイルオンラインサービス「Volkswagen Car-Net」を全車標準で利用できる。
これはスマートフォンなど通信端末を接続することで、たとえば飲食店情報やガソリンスタンド情報、さらにはグーグルアースやストリートビュー、ニュースなどが利用できるもの。ガソリン価格なども表示されるので、より快適なカーライフを実現できることは間違いない。
さらに注目したいのは、HighlineとR-Lineにオプション装着のパワーテールゲート。両手が塞がっていても足をバンパー下に差し込むことでゲートが開く「Easy Open」を装備する。これだけなら「ちょっと進んだ装備」というレベル。
逆にラゲッジから荷物を取り出す際、「Easy Close」ボタンを押すと、取り出し中はゲートが開いたままで保持され、キーを持ったままクルマから離れると自動でゲートが閉じてロックされるのだ。
つまり両手で抱えるような荷物の場合でも、一旦荷物を下に置いてゲートを閉じ、もう一度荷物を持って移動、という面倒な動作が必要なくなる。
さて、歩行者検知機能付きのプラクラッシュブレーキシステム、アダプティブクルーズコントロール、アラウンドビューカメラ、パークディスタンスコントロールなど、最新デバイスの数々を全車標準化し、安全面でも抜かりがない新型ティグアン。
現時点ではFFのみをラインアップするので、もしAWDが必要ないユーザーが近ごろ人気の高い小型SUVを検討するなら、必ず候補に入れて考えてほしい1台だと思う。
【新型VWティグアン画像ギャラリー】
(写真:小林 健)
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