モータースポーツ専門誌のauto sport本誌では現在、スポーツカーをはじめ、ホットハッチ、セダン、スポーツクーペなどあらゆる市販ロードカーを“ぶった切る”ピリ辛・市販車インプレッションを不定期連載している。同企画に登場するのは、モータースポーツの中でも、いわゆる“箱車レース”と呼ばれるカテゴリーにおいて、レーシングマシンのベースとなるロードカーたちだ。
今回はそんな『ベースマシン一刀両断!!』シリーズの第14回目ホンダ・フィット“RS”編をお届けする。最新の4代目フィットからスポーティさを訴求するRSは消滅してしまった現在、その価値を振り返るつもりでご覧いただきたい。
面白く使いやすくてバーゲンプライス! 3拍子揃ったホットハッチ、スズキ・スイフトスポーツ【ベース車両一刀両断!!】
* * * * * * * *
ホンダのスポーツグレードといえばタイプRに尽きる。しかしそれより前から、初代シビックで誕生したRSというモデルが存在した。
このRSは“ロードセーリング”の略号。「まるでヨットのように波をいなしながら、ドライビングを楽しむ」というイメージだそうだ。
効率を追求した初代シビックに、ツインキャブのスペシャルエンジンを与えた元祖RSは排ガス規制の影響で短命だったが、そのインパクトは大きかった。現在のRSは、N‐ONEからヴェゼル、ジェイドまで、さまざまなモデルで展開されているが、フィットRSは元祖の直系と言えるだろう。
フィットRSは、2代目から設定された。しかし、当初は「ただ1.5リッターに拡大されたフィット」といった印象で、名前以外に注目点はなかった。それが2010年のマイナーチェンジで刷新され、RSらしく変貌。
オレンジの配色、6速MT、大きめなエンジン音やチューニングされた排気音、そしてリセッティングが施されたサスペンションと、大きく中身が進化した。
現行フィットは3代目(編注:本原稿は4代目の発表以前に執筆されたものです)。エンジンが直噴となったため、遮音性を高めざるを得ず、その結果としてエンジンの存在感が希薄になったこともあって、マイナーチェンジ前の先代RSに戻った印象が強い。
走りに対するマインドを忘れてしまったような感触なのだ。クルマの性能は高く、ボディ剛性もサスペンションの能力も高い。ついでに言えば、スポーティに引き締められながらも乗り心地も良く、結構エンジン回しても好燃費。
■ 走りはスポーティで満足域。内外装の中途半端さが下降路線を加速させた?
フィットなのだから当然、実用性はダントツでクラストップだ。しかし、出木杉くんは、のび太くんほど愛されない。これは真理だ。
1.5リッターの直噴エンジン自体は悪くない。低回転からトルクがあり、レッドゾーンに向かって迫力を増していく。かつてのVTECのような爆発力はないが、現代のエンジンとしてスポーティテイストは充分。
シフトゲートが明確でカッチリした6速MTでこのエンジンを回していくと、ちょっとファットなフィットでも、かつてのスポーツハッチを彷彿とさせてくれる。
一方、足まわりのセッティングは薄味そのもので、エコタイヤを履いていることもあって接地感を得にくい。しかし、基本性能は悪くない。約10万円のモデューロのキットに交換するのもひとつの選択肢だろう。
味つけという意味では、ノーマルの1.3リッターモデルのほうが、“ロードセーリング”的な操縦性だ。ロールを許容しながら、しなやかに旋回してくれる。エンジントルクを最大限に引き出そうとするCVTは滑り感も少なく、性能、フィーリングともに良好だ。
3代目フィットは、初代、2代目よりも販売が低調。ホンダはその原因をヴェゼルのヒットとしたいようだ。たしかにフィット+ヴェゼルなら、2代目と遜色ない販売台数にはなる。
だが、核心はスタイリングではないだろうか? 全グレードでエアロパーツが標準装備となったことで、そのデザインは控えめにせざるを得なかった。それでもベーシックカーらしいスタンダード感は欠落し、逆にRSではスポーティ感が薄い。つまり全体として中途半端なのだ。
内装も全車ブラックベースで、スポーティマインドを主張したいようだ。ベーシックカーはシンプルかつクリーンであるべきで、そうすればこそRSのようなエッジの効いたエアロ付スポーツモデルの存在感が増す。
そろそろフィットも4代目へとモデルチェンジする予定だ。今度は1.0リッター3気筒のダウンサイジングターボがスタンダードになるらしい。そうなるとユニット数が多くスペースを食うハイブリッドが益々厳しくなる。
もっと気になるのはRSの存在で、適当なエンジンは見当たらない。売りやすいものだけに集中したい最近のホンダ流では生き残れないかもしれない。
■ホンダ・フィットRS 主要諸元
車体車名型式ホンダ・DBA-GK5全長×全幅×全高4045mm×1695mm×1525mmホイールベース2530mmトレッド 前/後1475mm/1465mm最低地上高135mm車両重量1070kg(6速MT)/1090kg(CVT)乗車定員5名駆動方式FWDトランスミッション6速MT/無段変速オートマチックステアリング電動パワーステアリングサスペンション前/後マクファーソン式/車軸式ブレーキ 前/後油圧式ベンチレーテッドディスク/油圧式ディスクタイヤサイズ 185/55R 16エンジン型式L15B形式水冷直列4気筒DOHC排気量1496cc内径×行程73.0mm×89.4mm圧縮比11.5最高出力97kW(132ps)/6600rpm最大トルク155Nm(15.8kgm)/4600rpm使用燃料レギュラータンク容量40L
auto sport 2019年9月6日号 No.1513より転載
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
ふたりの偉業達成に、影薄まるドゥカティ勢。ドルナ買収による今後とレースの健全性/MotoGPの御意見番に聞くアメリカズGP
トヨタ、ランドクルーザー新型“250”シリーズの特別仕様車“First Edition”を限定8000台発売
5年ぶり開催のF1中国GP、路面は再舗装ではなくペイントしただけ? 複数のドライバーが不安視。サインツJr.「特殊な状況で処理されているみたい」
ランス・ストロールがトップ。ピアストリ、フェルスタッペン続く。角田裕毅は12番手|F1中国FP1速報
レッドブルF1は2025年も現在のコンビを継続か。パフォーマンスを改善したペレスがシート争いをリード
みんなのコメント
トヨタのマネやないけどユーロRくらいのモデル作ってよホンダさん。このサイズで唯一フィットならファミリーカーにも使えるのだから。
もう少し派手になったら子供っぽくなるギリギリのラインだった気がする。
問題はインテリア。フィットに限らずだけど、ホンダ車でスポーティーなインテリアの印象が無い。過去のタイプRにしたって、ステアリングとシート、シフトノブが大きく違うだけ。メーターパネルはノーマルとほとんど変わらない。