WRC投入ベースモデルのGRヤリス登場まで
ヴィッツがフルモデルチェンジし、新生「ヤリス」として登場。海外市場向けのモデルと共通の名前を与えたことで、文字通り“世界戦略車”としてトップセラーへの新たな一歩を踏み出すことになりました。また、モータースポーツにおいても世界ラリー選手権(WRC)で活躍している「ヤリス・ワールド・ラリーカー」の次期競技車両のホモロゲーションモデルとなることも決定。量販車や競技車両だけでなく、直接的なベースモデルとなる『GRヤリス』に、一層関心が高まっているのです。
WRC勝利のために! GRヤリス「ラリーコンセプト」が秘めた戦闘力【大阪オートメッセ2020】
TGRFにてサプライズなお披露目
GRヤリスの詳細を見ていく前に、まずは“立ち位置”から確認しておきましょう。GRヤリスは量販モデルのヤリスに対してはパフォーマンスを一層レベルアップさせたホットモデル。そして、世界ラリー選手権(WRC)を戦うヤリスWRC(ワールド・ラリー・カー)の直接的なベース車両でもあります。
すなわち、GRヤリスは量販モデルとWRCの競技車両の間に位置付けされるモデル。先代の3代目ヴィッツ(海外名ヤリス)における”GRMN”と同じで、(来シーズンには新型が導入され、先代となる予定の)現行ヤリスWRCの直接的なベースモデルの位置づけとなっていました。
そんなGRヤリスは、昨年12月に富士スピードウェイで行なわれた「TOYOTA GAZOO Racing FESTIVAL(TGRF)」でサプライズデビュー。WRCにスポット参戦した勝田貴元選手のドライブでピットアウト。コースを1周し、スタンドを埋めたファンの目前で停車しましたが、実車はカモフラージュカラーを身に纏い、詳細発表は東京オートサロン2020までお預けとなってしまったのです。
大阪オートメッセでは数バリエーション展示
ファンが待ち望んでいた正式発表は、予定通り1月10日、東京オートサロン2020の初日に実施。そして翌月の大阪オートメッセには、レッドカラーのGRヤリスが展示されました。
さらに、ラリーコンセプトモデルとアンダーボディのパワー駆動系テクニカル展示もありました。
さて、GRヤリス最大の特徴は、量販モデルにはない3ドア・ハッチバックというボディ形状と1.6リッター直列3気筒直噴ターボの「G16E-GTS」エンジン。そして駆動システムに”GR-FOUR”と呼ばれる新開発のスポーツ4WDシステムでしょう。
チェックすべきは、272馬力の最高出力に対して車両重量は1280kgというパフォーマンスデータ。パワーウェイトレシオは約4.7kg/馬力と高いレベルを達成していることでしょう。
“Vits GRMN”より大幅にレベルアップ
先代のヤリス/ヴィッツにも”GRMNバージョン”と呼ばれるWRC用のホモロゲーションモデルを用意。こちらは1.5リッターの1NZ-FEエンジンにターボを組み合わせた152馬力ユニット(GRMN Turbo)や、1.8リッター直4の2ZR-FEエンジンにスーパーチャージャーを装着した212馬力ユニット(GRMN)を搭載していました。
どちらも既製のエンジンをチューンしたもので、今回のGRヤリスように全くの新規開発エンジンではなく、スペック的にもまだまだ“従順しい”もの。駆動系も量販車と同じFFであり、全日本ラリー選手権でも総合優勝には手が届かず、下位のクラス優勝を争うだけでしかありませんでした。
しかし、今回登場したGRヤリスは、総合優勝を争うに十分なスペックを確保。国内レースの最高峰であるスーパー耐久シリーズでも同様の様相です。GRヤリスはこれまで実力を示してきたラン・エボやスバルWRXと同じST2クラスに編入され、総合でもより上位を争うことを期待されているのです。
トヨタ/TGRの狙いは?
近年、「トヨタ/TGR」は精力的にラリーのサポートを実施。ヤリスによるWRC参戦だけでなく、TMGを介してGr.R1規定の「ヤリス R1」やGr.R3規定の「GT86 CS-R3」など、カスタマー向けのラリー競技車両を販売してきました。
先に触れたように日本国内でもVits GRMN(のラリー仕様)を全日本ラリー参戦者に供給するなど、そのサポートは多岐に及んでいます。最近ではFIA-GT3やFIA-GT-4、あるいはTCRといった市販の競技車両によるサーキットレースが盛り上がりをみせており、トヨタ/TGRはその流れをラリーにおいても実現しようとしているのではないでしょうか。
大阪オートメッセでのラリー仕様と思しき展示車両は“GRヤリス RALLY CONCEPT”とされており、詳細なスペックなどはまだ未発表でしたが、期待は高まるばかりです。
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