新車『RB16』の初日テストを担当したマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は、この日走った15人中最多の168周を走破。首位ルイス・ハミルトン(メルセデス)から0.54秒落ちの4番手ながら、終了直後の囲み取材では終始上機嫌だったそうだ。
『そうだ』と推定形で書いたのは、囲み取材がレッドブルのガレージ裏で行われ、詰めかけた群衆でとても近寄れる状況ではなかったから。スペインでのウィンターテストではよくある光景ながら、その中の半分以上はメディア関係者ではなく一般ファン。なので旧知のオランダ人ジャーナリストから、フェルスタッペンのコメントと話している最中の表情を教えてもらったのだった。
【ホンダ密着】ドライバーからの不満は出ずも、田辺TD「ドキドキ感は3年目も変わらない」/第1回F1バルセロナテスト初日
「信頼性もさらに良くなってるし、とにかく全部がポジティブだった」、「クルマとエンジンも、順調に機能していた。まさにそれを僕らは望んでいた」と、前向きコメントのオンパレード。メルセデスとのタイム差に関しては、「タイムは特に見てない」とのことだった。
冬のテスト、しかも初日のそれに大した意味がないのは、確かにその通りであろう。しかしメルセデスの完全コピーマシンとも言えるレーシングポイントにも負けていたのは少し気になるところだ。ただしフェルスタッペンの自己ベストはハミルトンとペレスより固いコンパウンドのタイヤで出したもので、それを差し引けば彼らとの差はかなり縮まることになる。
では午後に繰り返された2度のスピンは、どう解釈すべきか。最初は午後2時19分、最終シケイン手前ターン13のアウト側の縁石に乗り過ぎてスピン。さらに約1時間後の午後3時22分には、同じコーナーのインに付いたところで再びスピンを喫した。いずれも車体にダメージはなく、問題なく自力でピットに戻って行った。
フェルスタッペン本人は、「限界を探っていて、グラベルにはみ出した」と語っている。一方、ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターによれば、「風の影響だったみたいです。午後になって向きが変わったと、そんな話をしていました」とのことだ。どちらだったのか、あるいは両方の要因が重なってのスピンだったのか。
しかし不思議なのは、その間に走っていた他のマシンによるスピンやコースオフが、いっさいなかったことだ。フェルスタッペンのスピン自体、唐突に挙動が乱れたように見える。2019年前半のレッドブルマシンは、リヤのダウンフォース不足に手こずっていた。中盤以降のアップデートでようやく改善され、それが第9戦オーストリアGP以降の快進撃に繋がったわけだが、フロントの空力を大きく見直した今季のRB16はひょっとすると、まだ前後の空力バランスがちぐはぐなのかもしれない。
盤石の速さと安定性をいきなり見せつけたメルセデスに、追い付くことができるのか。フェルスタッペンの楽観的なコメントとは裏腹に、ちょっと気になる初日のレッドブル・ホンダだった。
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