「前の晩から具合が悪そうで、それで夕食もいっしょにしなかったのよ」
そう語るのは、ピエール・ガスリーの母パスカルさんだ。ガスリーはメキシコGP土曜日にウィルス性胃腸炎に感染し、一時は予選出走も危ぶまれた。そんな状態でトップ10に入る速さを発揮したのはさすがだが、セッション後のガスリーは別人のようにやつれ切っていた。
F1 Topic:ピットイン&アウト時のタイムロス防止のため、ひと工夫されたピットボックス
「メキシコではとにかく水に気を付けろと、部下たちにも注意していた」というのは、ホンダのレッドブル担当チーフエンジニア、デビッド・ジョージだ。
「水道水を飲まないのはもちろん、冷たい飲み物に氷は入れない。ハイボールも注文しないほうがいい。氷もソーダも、水道水で作ってることが多いからね」
幸いホンダのスタッフに、不調を訴える人はいなかったという。
しかしメキシコGPパドックの『フォーミュラ・メディシン』のオフィスには、この週末次から次へと体調不良者が訪れた。
「毎年けっこうな数の病人がやって来る」と語るのは、パオロ・バリオ医師である。
「去年のメキシコGPは156人に治療や投薬を施した。それが今年は、土曜日までで200人を超えたから、ちょっと多い。大部分は下痢や腹痛、発熱、そして呼吸障害、軽い高山病だ。大気汚染と空気の薄いことが原因だね」。
たとえば2週間前の鈴鹿は、87人だったという。
「それでも例年より多い。ヨーロッパからの長旅の疲れと、気温の上下が大きくて、風邪をひいた人が多かった。ヨーロッパのグランプリは、平均して鈴鹿より少し少ないぐらい。それらと比べると、メキシコはやはり多いね。高地の特殊な環境と、水や大気が汚染されていることで、どうしても具合の悪い人は多くなる。全21戦の中では? もちろんぶっちぎりで一番多いよ」
診療所を訪れるのはチームスタッフはもちろん、ジャーナリスト、カメラマン、ゲストたちまで、多岐に渡る。とはいえほとんどは24時間様子を見れば、症状が軽減する。病院に運ばれる例は、ほとんどないとのことだった。
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