MotoGP第16戦日本GPが終わり、今週末は赤道を一気に下ってメルボルン郊外のフィリップアイランドサーキットで第17戦オーストラリアGPが開催される。そして、その翌週は赤道直下のセパンサーキットで第18戦マレーシアGP、と〈フライアウェイ〉シリーズの慌ただしさがいよいよここから本格化する。
だから、というわけでもないが、次の2連戦を前に先週末の日本GPで発生した出来事などを少し整理しておこう。
■MotoGPコラム:表彰台までは何マイル? 日本勢、母国戦は厳しい1日も”糧”を得る
日本GPの走行映像を見て気づいた人も多かっただろうが、第16戦のMotoGPクラスFP2から、選手の心拍数が画面に表示されるようになった。関係者によると現在はあくまで実験的な導入で本格的な運用ではない、とのことで、心拍数を画面に表示するためのセンシング/モニタリングとデータ転送システムの詳細などについても訊ねてみたのだが、回答は得られなかった。
どうやら、まだ公表段階には至っていないようだ。バンク角やスロットル開度等の機械的情報と違ってこのようなパーソナルデータの場合は、様々な情報を数字のなかから読み解いていくことも可能になるため、選手によっては公開を快く思わない場合もひょっとしたらあるのかもしれない。
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上位を走行していたわけではないので大きな話題にはならなかったが、日本GPにワイルドカード参戦したスズキのテストライダー、シルバン・ギュントーリ(スズキ)に対し、金曜FP1/FP2の走行を失格にする、という処分が土曜に発表された。ギュントーリのマシンに搭載された2020年用エンジンが、テクニカルレギュレーション[2.4.6.2]に違反しているため、というのがその理由だ。
この条項[2.4.6]は、ワイルドカード参戦選手のマシン仕様等について定めた項目で、その第二項で「選手が使用するマシンのメーカーに適用される技術規則を遵守したエンジンでなければならない」(大意)と規定されている。つまり、ギュントーリのエンジンは、今シーズンのスズキ陣営に課されるエンジン技術規則に則ったものでなければならない、ということだ。
これはすなわち、シーズン開幕前にテクニカルディレクターに対して申請し封印されたサンプルエンジンの仕様(3スペックまで許可される)と合致していなければならない、ということを意味する([2.4.3.1.4.c]より)。
だが、日本GPの金曜のFP1/FP2で使用したエンジンは、プロトタイプの2020年スペックであったために、結果として上記のルールに違反してしまった、というわけだ。
ギュントーリのチームは、土曜午前のFP3でエンジンをレーシングライダーと同様の2019年型に乗せ換え、以降のセッションと決勝レースを走行した。
この失策について、スズキの技術監督・河内健は土曜の夕刻に、「ワイルドカードのエンジンレギュレーションに関して我々の誤解があり、シルバンのFP1とFP2が失格になってしまいました」と話した。
「金曜にシルバンの使用したエンジンはMotoGPのレギュレーションに合致したものなのですが、レーシングライダーと同じでなければならない、というところに我々の誤解があったため、FP3から2019年仕様にエンジンを戻しました。レースディレクションの今回の裁定は受け入れますし、シルバンにも申し訳ないことをしてしまいました」
だが、過去を振り返れば、ワイルドカードでエントリーしたメーカーのテストライダーが翌年のプロトタイプ仕様で参戦することは、今までに何度も見られた風景だ。じっさいに、上記の「ワイルドカード用技術規則」は2017年までのテクニカルレギュレーション内には存在していなかった。
これは、2018年シーズンに発効した条項なのだ。一方、スズキ陣営は2018年にコンセッションルールを適用されていたため、開幕前のエンジン申請/封印の義務がなく、ワイルドカード参戦に関する規定も緩やかだった。
以上のような込みいった背景事情があったため、河内の述べたような誤解が発生してしまった、ということなのだろう。
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ゴシップに類する話では、中上貴晶(LCR Honda IDEMITSU)の代役としてヨハン・ザルコが次戦オーストラリアから最終戦までの参戦を走行することが決定したため、彼が先ごろまで交渉していた来季ヤマハテストライダーのポジションは事実上扉が閉ざされた、とも言われている。ヤマハモーターレーシングのある関係者は、ヨナス・フォルガーが有力候補だろう、とも述べている。
また、ザルコが中上の代役として終盤3戦を走るのは、来年にホンダで空きシートができた場合に備えて自身の高いパフォーマンスを披露しておくため、という深読みも一部であるようだ。だが、この一連の話の引き金になったホルヘ・ロレンソ引退説については、HRC野村社長が「来季のホルヘに期待している」というコメントをスペインメディアに発して、噂を否定する形になっている。
ただ、この噂はそもそもの始まりが、〈火のないところに煙が立った〉といっていいようなところから今に至るまで延々とくすぶっている状態なので、来年2月のセパンテストまでトーンの高低差はありながらも、まだ今後しばらくは薄い煙がたゆたい続けそうである。
最後に、ロレンソに関するこの一連の噂話についてあくまで個人的な心情を表明させてもらうとすれば、アルベルト・プーチの述べた「シーズン中にそのようなことを話題にすること自体がホルヘに対して失礼」という意見に完全に同意する、と申し上げておきたい。
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