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F1 Topic:紆余曲折の末に発給された山本尚貴のスーパーライセンス。足りないポイントを補ったFIAの措置

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F1 Topic:紆余曲折の末に発給された山本尚貴のスーパーライセンス。足りないポイントを補ったFIAの措置

 2019年のF1第17戦日本GPでは、山本尚貴がトロロッソ・ホンダのマシンに乗って、金曜日のフリー走行1回目を走った。日本GPで日本人ドライバーが鈴鹿でF1マシンを走らせたのは、2014年の小林可夢偉(ケータハム)以来、5年ぶりのことだった。

 しかし、山本尚貴の日本GP出走は、直前まで不透明なままだった。理由は、複雑なスーパーライセンス(SL)制度にある。

セットアップに失敗した昨年の反省を生かし8位入賞。ライバル勢と戦えることを証明/トロロッソ・ホンダF1日本GPコラム

 F1をグランプリ期間中に運転するにはSLが必要となるが、現役のF1ドライバーまたは過去3年間F1に参戦したことがあるドライバー以外の者が、グランプリ期間中にF1マシンを運転するには、定められた規定以上のSLポイントを獲得しなければ、SLは発給されない。

 SLポイントはFIAが定めたF1以外のさまざまなカテゴリーを対象に設けられており、SLを取得するには過去3年間で40点以上獲得する必要がある。18年にスーパーフォーミュラ(1位/20点)、スーパーGT(1位/15点)、17年スーパーフォーミュラ(9位/1点)、スーパーGT(7位/2点)、16年スーパーフォーミュラ(7位/3点)の合計41点を獲得した山本はその権利を有しているはずだった。

 ところが、スーパーGTがSLポイントの対象となったのは18年からだったため、山本の17年の2点は有効ではなく、実際には39点しかないことが判明した。FIAはポイントの詳細は明らかにしなかったが、「山本尚貴の過去3年間のSLポイントではSLを発給するに十分ではなかった」(マイケル・マシ/F1レースディレクター)ことを認めている。

■フリー走行限定のスーパーライセンス取得にも大きな壁

 ただし、山本尚貴の場合、F1マシンを走らせるのは日本GPの金曜日だけなので、完全なSLは必要ではなく、フリー走行を参加するためだけなら、SLポイントは25ポイント以上あれば良い。ところが、その場合、グランプリ週末以外に現行のF1マシンで300km以上の走行経験が義務付けられている。

 ところが、ここで問題となったのが、『現行のF1マシン』という条件だった。これはパワーユニット(PU/エンジン)を搭載した14年以降のマシンを意味するのだが、山本尚貴サイドがこれまで取得していたSLポイントが十分ではないと認識したとき、今年のインシーズンテストが終了していた。

 そのため山本尚貴が現行のF1マシンを走らせるにはプライベートテストしかない。だが、その場合は2年落ち(17年)以前のマシンしか許可されていないのだが、2年より前にホンダがパートナーを組んでいたのはマクラーレンで、レッドブルとトロロッソもホンダ以外のPUを搭載していたため、事実上実現不可能な状態だった。

 そこで山本尚貴サイドは、当初ペナルティポイントを科されずシーズンを終えた場合に付与される『ボーナスポイント』を合算して41点にしようとした。ところが、山本尚貴が参戦していたスーパーフォーミュラとスーパーGTは、FIAが直轄するカテゴリーではなく、ボーナスポイントの対象外シリーズだったため、ボーナスポイントの2点を得ることができなかった。

 そのような状況で、動いたのがFIAだった。FIAが目をつけたのが山本尚貴の今年の成績だった。それは、山本尚貴が今年のスーパーフォーミュラで最終戦を前にしてランキングトップにいたからだ。もし山本尚貴が日本GP終了後の10月27日に開催されるスーパーフォーミュラ最終戦に参戦しなくとも、2019年のスーパーフォーミュラでシリーズ5位以上は確定しているため、過去3年間(39点)ではなく、今年を含めた3年間の成績でSLポイントを計算しようという措置だった。

 これによって、山本尚貴のSLポイントは、18年のスーパーフォーミュラ1位の20点に、18年のスーパーGT1位の15点、17年スーパーフォーミュラ9位の1点に加え、19年に獲得するスーパーフォーミュラ5位以上の7点+αとなり、合計43点+αとなった。

 マシによれば、「この件に関しては、10月4日にドイツ・ケルンで開催された世界モータースポーツ評議会(WMSC)において討議が行われ、WMSCは山本尚貴に対してSLを発給するという最終決断を下した」という。そして、「これは、フリー走行限定ライセンスではなく、正式なSLである」ことも付け加えた。

 今後の山本尚貴のF1活動は未定だが、正式なスーパーライセンスを取得したことで、山本尚貴は今後3年間、正ドライバー、サードドライバー、金曜日ドライバー、テストドライバーなど、さまざまなチャンスが広がったことだけは確かだ。

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