昨年までFIA-F2選手権を戦い、今季は国内トップカテゴリーに参戦している福住仁嶺、牧野任祐の両選手が、揃って日本GPに姿を見せた。初日フリー走行では、トロロッソ・ホンダのガレージに直行。山本尚貴選手のF1デビューに立ち合い、エンジニアと山本選手との無線交信を90分間みっちり聞いた。はたしてその貴重な経験から、ふたりは何を感じたのだろう。
――ふたりはセッション中、ずっとガレージで無線交信を聞いていました。まずはどんな感想を持ちました?
牧野任祐(以下、牧野):かなりたくさん、しゃべってましたよね。尚貴さん自身は、最初から普通に走れていたと思います。普通にセットアップとか変更しながら、バランスはどうだこうだとエンジニアとやり取りしていた。まるでもう何度も、F1のセッションを経験していたみたいでした。
福住仁嶺(以下、福住):普通のレースの週末みたいに、落ち着いた感じだったね。走り始めから、普通に乗ってたし。
牧野:最後の最後に、「ちょっとベルトが長かったかな」って無線が入ってた(笑)。それ、最後になって言う?みたいな。
ルクレール4番手「速さがなくて驚いた。自分の走りもまだ完璧ではない」:フェラーリ F1日本GP金曜
――ハーネスが緩んだということ?
牧野:よくわからないですけど。
福住:全般的なシートポジションのことじゃないですか。今回1回限りじゃなくて、来年以降を見据えてるのかな、みたいな。
――山本選手が、一方的にコメントしていましたか?
牧野:いえ、そうじゃなかったですね。
福住:エンジニア側が、いっぱいしゃべっていましたね。僕はむしろ、そのことに驚きました。僕らのカテゴリーとF1との違いがまさにそこだなと思ったんですけど、情報がはるかに多くて、エンジニアとドライバーの双方が話さなきゃいけないことが山ほどある。そしてドライバーはその間ずっと、いろんな操作をやり続けているわけです。
牧野:ステアリングのスイッチ操作とかね。たとえばブレーキングのシェイプを、変えたりしていたでしょ。僕はあれが、一番驚きました。
――ブレーキングのシェイプとは?
牧野:(ブレーキのトルクマップ上の)立ち上がりの角度なんですけどね。ブレーキの効き方の調整ですけど、そんなの僕たちにはないし。
福住:とにかくチーム側で見られる、走行中のデータがものすごくたくさんある。コース上でクルマに何が起きているか、それがチーム側でリアルタイムでわかってる。
■知り尽くした鈴鹿サーキットならではのアドバンテージ
――山本選手はこのコースを、知り尽くしていると言っていい。初めてのF1マシンを運転する上で、それは大きなアドバンテージになったと思いますか?
牧野:だと、思います。とはいえ最初はミディアムタイヤで、かなり抑え目に走っていましたね。あまり(回生エネルギーの)チャージもせずに。クールダウンラップも入れずに、3周ぐらい走り続けたり。そのあとソフトタイヤに履き替えてからは、(ダニール・)クビアトと同じようなメニューに切り替えていましたね。
福住:十分に、速かったんじゃないですか。
――クビアトの0.1秒落ちです。
牧野:クビアトはニュータイヤでなかったことを差し引いても、速かったと思います。
福住:初めて乗ってあのペースは、さすがです。あとは今後、また走る機会があったとして、海外の知らないサーキットでどれくらい行けるか。決して簡単ではないと思いますけど、尚貴さんならやってくれると思います。
――去年まで海外でやってたふたりとしては、自分たちも乗りたかった?
福住:それはもちろん、そうですよ。
――まだ、あきらめてないよね?
ふたり:もちろんです。
――またF2に挑戦したい?
牧野:その可能性もあるし、国内のレースで頑張ってスーパーライセンスポイントを積み上げて行く道もありますし。
福住:とにかく夢は全然捨ててないし、夢に向かって前進して行こうと思っています。
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