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【トムス東條エンジニア特別寄稿】対応できなかった雨の走行。それでも狙える予選トップ10《DTM×スーパーGTインサイド1》

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【トムス東條エンジニア特別寄稿】対応できなかった雨の走行。それでも狙える予選トップ10《DTM×スーパーGTインサイド1》

 史上初となる、DTM第9戦のシリーズ戦に参戦するスーパーGT500クラスのマシン。初めてのサーキットに経験のほとんどないタイヤの習熟。チームはどのようにメニューを進め、そして対応していくのか。日本を代表するエンジニアのひとりでもあるLEXUS TEAM TOM’Sの東條力エンジニアが現場からお伝えします。1回目は木曜日のスーパーGT専有のテスト走行、そしてDTMの公式セッション初日となる金曜日の模様からお届けします。

☆  ☆  ☆  ☆  ☆

「衝撃的なインパクト」ハンコックのレインに苦戦するGT500勢。DTM攻略はタイヤがカギ

2日間の設営・準備作業を終えて、木曜日にスーパーGT専有の走行時間(1時間×2回)を頂きました。

ホッケンハイムの朝の気温は8℃。走行時間の10:00になっても、気温12℃・路面温度は13℃までしか上がらず、肌寒いなか、ニック・キャシディが#37 DTM仕様(LEXUS TEAM TOM’S)で走行を始めました。

順調にセッティングを進め、午前中のセッションでは1分30秒936のトップタイム。しかし、DTM開幕戦ホッケンハイムの予選PPタイムは1分28秒972とのことですので、現状で1秒程度は詰めておかないと予選は厳しいものとなるでしょう。

午後のセッションでは、平川亮がドライブしました。走り出しはレースラップタイムの確認を行い、その後ニュータイヤを入れましたが、午前中のタイムを越えることができませんでした。GT-R、NSXも同様でしたので、午後のトラックコンディションが悪かったということなのでしょう。そこから深追いすることはしませんでした。

BMWのマルコ・ウィットマン選手と再会のご挨拶。午前中のタイムを率直に話したところ、そんなに悪くはないと思うとのこと。彼の経験から、ホッケンハイムは路面コンディションの変化がとても大きいため、ラップタイムだけで評価するのは難しいとのことでした。

DTMはハンコックのワンメイクタイヤを使用します。我々はハンコックの上手な使い方を知らないため、事前にハンコックのエンジニアとミーティングの機会を頂きました。イニシャルプレッシャーの規制値やキャンバーに対する考え方等、興味深い内容もありました。

レース用タイヤの内圧はレギュレーションで決められていて、『1.3bar/25℃』を下回らないこととあります。実際のレース相当の温間予測値では、かなりのハイプレッシャーになることが予測され、当然ながらデグラデーションも大きくなるはずです。

これを確認するため、午後の走り出しでは10周程度の連続周回を重ね、各種データを取得することができました。そこで得られた情報から個々のタイヤ消費エネルギーや滑り量などを算出し、コースレイアウトの特徴をつかみつつ、ドライバーからのコメントの裏付けを確認して走行2日目に備えました。

今のところ、非常に順調です。

■一転、万事休すとなった、初めての雨の走行でのクラッシュ。かなりナーバスになったニック
金曜日、DTMとの混走が始まりました。

コンディションはウエット。ドライバーはニック。慎重にグリップを確かめながらインストレーションラップを2分14秒5で終えましたが、3周目の第3セクターでウォールへヒットしてしまいました。

万事休す。

ピットへ戻った#37号車は右フロントを大きく破損して、朝の走行をわずか実質の計測1周で取りやめることになりました。

BMWのティモ・グロック選手の計測1周目は1分58秒950でしたから、その差は12秒。ニックは最大限の注意を払っていたにも関わらずクラッシュしてしまい、かなりナーバスになってしまいました。しかし、同じポイントでGT-Rの松田次生選手もコースアウトを喫し、#1ジェンソン・バトン選手も含めてスーパーGT勢は揃って下位へ。我ら日本勢はワンメイク仕様のハンコックタイヤと冷たい雨に、まったく対応できていませんでした。

午後のセッションへ向けてメカニックは修理を行い、エンジニアはハンコックタイヤに合わせるセットアップを探ります。走行前には雨が上がり、弱いながらも日差しがあって路面はほぼドライ。全車ドライタイヤを装着してコースイン。

#37号車は平川亮がステアリングを握り、レース用タイヤのスクラブとクルマのチェックを兼ね、1周回でピットへ。ピットストップシミュレーションをフルで行った後、徐々にスピードを上げてタイムを刻んでいきました。

終盤までトップから1秒落ちの5番手をキープ。2セット目のニュータイヤで、さらなるタイムアップを目指しましたが、タイヤが完全に発動する前にセーフティーカー訓練に差し掛かってしまい、タイムアップを果たすことができませんでした。

しかし、少なくともドライの予選では戦える感触を得ることができたので、明日の予選がドライならばトップ10入りを目指せると思います。ただ、雨の場合にはグリップ不足が明らか。DTM勢のように走り出しからすぐにグリップを得られるような工夫が必要です。

追記:アストンマーティンチームのセットアップ/アライメント作業を見学していると、メカニックが快くピット内へ通してくれました。

サーキットでのアライメント作業は、PIT内に水平面を作る簡易定盤、4輪の輪荷重を測定するコーナーウェイトゲージ(重量計)、ダミーホイールなどで構成され、その他にも車高を測定する水平バーと直定規、トーインを測定する糸やゲージ、キャンバー計測用の角度計など多くの機材が必要となり、それに伴う配線や記録するためのノートやパソコンを広げる必要があり、作業環境は雑多になりがちです。

アストンマーティンではレーザーを使って糸や車高測定バーに代わる面や線を描き、ダミーホイールx定盤マウントの荷重データをワイヤレスで飛ばして表示・保存できるシステムが構築されていて、非常に合理的な測定できるシステムを採用していました。アライメントに必要なすべての機材がコンパクトに収納されているため、作業環境としては非常にシンプルで美しいものでした(イタリア製でコンプリート販売されています)。

一方、BMWチームのアライメント作業では糸を張ってトーインを測定し、直定規で車高を読み、エンジニアがノートにメモを取りながらのオーソドックスなスタイル。トムスもこのスタイルで行います。

これはこれで合理的に計測が出来るので悪くはないと思いますが、作業環境を改善するという意味ではデジタル化も悪くないのかなと感じました。

しかし、アストン方式では車両の軸とアクスルの位置や軸にずれが出やすいと思うので、管理には3D測定器が必須となるはずです。サーキットでは輸送を含めて取り扱い環境が非常に悪いため不意のトラブルもあると思われ、ここはハイテク化よりも質実剛健が必要。BMWも同じスタイルですし、従来通りのスタイルでよさそうです。

(土曜日編につづく)

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