シンガポールGPが開幕する前夜、メルセデスのチーフレースストラテジストを務めるジェームス・バレスは週末の戦いを次のように予測した。
「モナコGPまではわれわれのほうが市街地コースでは速かったが、オーストリアGPからのアップデートではレッドブルのほうがわれわれよりもいい仕事をしていることは、ハンガリーGPでレッドブルがポールポジションを獲得したことでもわかる。その後も、われわれは大きなアップデートはできていないから、このシンガポールGPでもレッドブルが強いだろう」
クビアト11番手「タイム改善の余地があるのは間違いない。バランス最適化が重要に」:トロロッソ・ホンダ F1シンガポールGP
バレスの予想は的中した。金曜日1回目のフリー走行でトップタイムをマークしたのはレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンだった。しかし、バレスの予測は2回目のフリー走行で良い方向に外れる。1回目のフリー走行終了から2時間半後に開始されたフリー走行2回目でトップに立ったのは、1分38秒773をマークしたメルセデスのルイス・ハミルトンだった。
しかし、ハミルトンは「いいスタートが切れたけど、レッドブル勢はまだまだ速そうだから、土曜日の予選ではしっかりとラップをまとめなければいけないけど、それは簡単なことではない」と、レッドブル・ホンダの速さを警戒していた。
じつはフェルスタッペンが記録した1分38秒958のベストタイムは、完璧なラップではなかった。ハミルトンが言うように、マリーナ・ベイ市街地サーキットでは1周をまとめるのが簡単なことではないからだ。
「最終セクターでトラフィックにつかまってしまった」(フェルスタッペン)
フェルスタッペンによれば、ソフトタイヤでアタックする前に行なったハードタイヤでのセクター3のベストタイムから0.2秒しかタイムが向上しなかったという。フリー走行2回目でのフェルスタッペンのハードタイヤとソフトタイヤのセクターごとのタイムは以下の通りだ。
セクター1/27.551秒(ハード)→27.080秒(ソフト)マイナス0.471秒
セクター2/38.874秒(ハード)→37.843秒(ソフト)マイナス1.031秒
セクター3/34.269秒(ハード)→34.034秒(ソフト)マイナス0.235秒
■予選に向けたセットアップを進めるレッドブル・ホンダ
マリーナ・ベイ市街地サーキットのセクター1は、コーナーと呼べるコーナー数は4つしかない高速区間。これに対して、セクター2は7つ、セクター3も9つあり、タイヤのグリップ力は低速コーナーで差が出やすいことは、フェルスタッペンが セクター1で0.471秒しかハードからソフトに履き替えてタイムアップしなかったのに対して、セクター2では1.031秒も速くなっていることでもわかる。
もちろん、タイヤのグリップ力は走行距離とともに落ち、セクター2からセクター3にかけてグリップ力は徐々になくなるので、セクター2ほど向上はしなかっただろうが、少なくともセクター1の0.4秒よりは速くなるポテンシャルはあったはずだ。そうなっていれば、フェルスタッペンのベストタイムはハミルトンと並ぶか、それを上回っていた。
「ここまではマシンに関して、ポジティブな感触をつかんでいる。でも、セットアップはこれで満足ということがなく、常に改善できるものはあるから、今夜はそれについて考えたい。なぜなら、ここでのレースは、予選結果での成績がレース結果の95%を決めるからね」
F1ドライバーとして初のポールポジションを獲得したハンガリーGP。あのときも大きな鍵を握っていたのは、セクター3だった。土曜日の予選で、フェルスタッペンはラップをまとめることができるのか。レッドブル・ホンダの3勝目は、そこにかかっている。
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