鈴鹿サーキットで行われたBHオークションSMBC鈴鹿10時間耐久レース。130Rでクラッシュを喫したニック・キャシディ(#27 HubAuto Corsa)は、チームのために何としてもマシンに乗ってピットに戻りたかったと語った。
ヘイキ・コバライネン、ニック・フォスターとともに#27 HubAuto Corsaをドライブしたキャシディ。自身も経験豊富な鈴鹿での10時間レースに臨んだが、決勝では数々の不運に見舞われた。
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開始1時間30分を迎えるところでは、ヘアピン手前の右コーナーでコースオフしコントロールを失った#98 ARROWS RACINGのホンダNSX GT3にヒットされてスピン。この時ステアリングを握っていたキャシディは再スタートを切ったものの、クラッシュの影響で左リヤタイヤを破損。しかしそれ以外は無事で、タイヤ交換をしてコースに復帰した。
その後#27 HubAutto Corsaはトップ10圏内も見える位置につけていたが、開始から6時間を迎えようとしたところで130Rでスピンを喫し、アウト側のスポンジバリアにクラッシュ。一瞬、バリアにマシンが乗り上がるほどのインパクトだった。
その時の状況を、キャシディはこのように語った。
「1回目のクラッシュは、他のドライバーにヒットされて避けようがなかった。2回目のクラッシュの時はずっとプッシュし続けている状態で、1周前にはベストタイムを出せていた。さらにペースを上げて走っていたらクラッシュしてしまった」
130Rでクラッシュする4周前にドライバー交代していたキャシディは、タイヤとマシンの状態も良く、トップ集団より約1秒速いペースで周回していた。クラッシュ直前のセクタータイムでも自己ベストを記録していた。上位進出がかかった重要な場面で、攻めている最中でのコースオフだったようだ。
その後一度はマシンを降り、ヘルメットも脱いだキャシディだったが、レースへの復帰は1%も諦めていなかった。激しいクラッシュだった割には右フロント部分以外は無事の状態で、マーシャルに直談判し再乗車を試みたのだ。
キャシディは、右フロントタイヤから白煙を巻き上げながらという状態だったが何とか自走でピットまで戻ってきた。
「何とかピットに戻りたいと思っていたから、正直クルマを降りたくなかった。でも、マーシャルからは(安全のため)クルマを降りるように言われた」
「僕は日本語を上手く話すことはできないけど、それでもマーシャルに掛け合って『クルマは大丈夫だと思うから、また乗り込んでピットまで戻りたい』と言った。ピットに戻ることができれば、チームは必ず修復してくれるから、みんなのために何としても動き出さなければいけないと思った」
最後までピットに戻ることを諦めなかったキャシディ。ピットに帰ってくる途中のコックピットでは、このようなことを考えていたという。
「チームのために絶対戻りたいと思った。ピットに帰ってくることができれば、チームがクルマを修復をして、またコースに復帰できるかもしれない。そして最後にフィニッシュできれば本当に素晴らしいことになると思った」
「クラッシュした時点で、僕たちの勝負権がなくなったことは分かっていた。それに僕にとっては結果は何も変わらない。フル参戦しているわけではないから、僕個人としてはチャンピオンシップに関係ない」
「だから、(ピットレーンを走っている時は)ずっとチームのことだけを考えていた。最後まで走って完走することができれば、悪い結果だったなりにも、ひとつの救いになるかもしれないと思ったからだ。最後、クルマが復活して無事にチェッカーを受けられたのは、良かった」
チームは約2時間40分かけてマシンを修復し、チェッカーまで残り1時間を迎えるところでコースに復帰。その際にはグランドスタンドで観戦していたファンからも、たくさんのエールが贈られた。結局、トップから78周遅れの総合32位でフィニッシュとなったが、トラブルやアクシデントに見舞われても最後まで諦めずにゴールする姿は、今年の鈴鹿10Hで大きな感動を呼ぶシーンのひとつとなった。
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