ADAC TCRジャーマニー(ドイツ・シリーズ)のニュルブルクリンク戦に参戦し、初のTCR戦でポール・トゥ・ウィンを達成したティエリー・ヌービル。そのセンセーショナルな活躍を受け、所属するヒュンダイ・モータースポーツとヌービル双方の希望として、来季のWTCR世界ツーリングカー・カップ参戦に向け本格的協議も動き出しているようだ。
WRC世界ラリー選手権で毎年のようにタイトル争いを演じているヌービルは、2019年の第9戦終了時点でランキング3位につけるなど、ヒュンダイ陣営のエースとして戦っている。
ヒュンダイ所属のWRCドライバー、ヌービルがTCR初挑戦でポール・トゥ・ウィン。レコードも更新
そんなヌービルは、ヒュンダイのモータースポーツ部門を置くドイツ国内で、トップカスタマーチームとして活動するリキモリ・チーム・エングストラーのVIPカーをドライブし、TCRドイツの第5戦にゲストエントリー。公式練習からレギュラー勢を圧倒するタイムを記録すると、予選ではTCRのコースレコードも樹立するスピードを披露した。
そのまま土曜レース1で一度もポジションを譲らない完璧なポール・トゥ・ウインで飾り、ヒュンダイ・カスタマーレーシング部門のメンバーやパドックの関係者のみならず、ツーリングカー・ファンにも大きなインパクトを残した。
この結果を受け、ヒュンダイ・モータースポーツはTCRカテゴリー最高峰となるFIAカップ格式シリーズ、WTCRヘの参戦も本格的に協議を始め、初代王者ガブリエル・タルキーニや2019年シーズンでランキング2位につけるノルベルト・ミケリスらとともに、サーキット・レースでもヌービルの才能を世界に披露する機会を検討することとなった。
WTCR参戦の可能性はあるか、との問いに「もちろん、やらない手はないだろう?」と、モータースポーツ情報サイトのTouring car times.comに即答したヌービル。
「夕食の席でその話題になったんだ。もちろん、ヒュンダイとなら本格的にその機会を探ることが可能だし、WTCRのどこかのイベントでワイルドカード枠としてエントリーすることも考えられる」と続けたヌービル。
「でも前提条件として、僕の(本業であるWRC)カレンダーと比べて空いているスケジュールである必要があり、今年はもうその時間はない。年末までビッシリと週末の予定が埋まっているからね。だから、来シーズンに向け機会を探ることになるだろう」
加えてトップドライバーの肌感覚として、世界選手権レベルのシリーズに参戦する際には、今回のTCRジャーマニーとは比較にならないボリュームの準備期間が必要になる、との考えも付け加えた。
「このタイプのマシンで世界レベルのコンペティションに挑む場合、コースも含めて直面する可能性のあるさまざまな問題に対し、より多くの調査と準備が必要になるのは間違いない」と語ったヌービル。
「テストに数日、レースウイークも含めると(WRCから)1週間程度は離脱する必要がある。例えばニュルの週末では最初からセクター3で苦労した。セクター1と2ではつねに最速を争えたけど、続くセクター3でいつもコンマ1~2秒は失っていたんだ。WTCRでそんなレベルの走りは許されない。レギュラー勢と戦うためにはつねに最速を目指し、ドライビングを最適化するより多くの時間が必要だ」
一方、ヌービルのTCRツーリングカー初挑戦の週末を現地で見守り、ドライビングやセットアップの指南役も務めた初代WTCR王者のガブリエル・タルキーニは、この才能豊かなベルギー人ドライバーの最高峰ツーリングカー・デビューに太鼓判を押した。
「すでにティエリーはWTCRでも中団で戦えるパフォーマンスを備えているよ」と、Touring car times.comの問いかけに応じたタルキーニ。
「TCRジャーマニーのドライバー陣も非常に優秀で、上位3~4名は間違いなくWTCRでも通用する。そこで勝利を挙げたんだから、ティエリーがWTCRで戦えない理由がないよ」と続けるタルキーニ。
「正直なところ、このニュルの週末で目の当たりにした適応力には驚くばかりだ。ウエットでは苦労したが、ドライになるとみるみる速さを増し、予選では文句なしの最速だ」
「週末を通じて彼のデータを見ていたが、ブレーキングポイント、旋回、ステアリングアングル、コーナーからの加速、そのどれもが完璧だった。レースでの賢さも披露し、セーフティカー明けのリスタートも完璧にこなした。まるで経験豊富なベテランを見ているようだったよ!」
すでにタルキーニ自身も、ヒュンダイ・モータースポーツの現代表であり、JASモータースポーツ時代から旧知の仲でもあるアンドレア・アダモ(ホンダ・シビックWTCCのチーフデザイナー&開発ドライバーの間柄)に対し、2020年シーズンの早い時期でのヌービル参戦実現を進言したという。
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