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衝撃の予選と大荒れのサバイバル戦。新時代スーパーフォーミュラ開幕戦で見えた5つのポイントとレースクオリティの懸念

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衝撃の予選と大荒れのサバイバル戦。新時代スーパーフォーミュラ開幕戦で見えた5つのポイントとレースクオリティの懸念

 予選に続き、決勝も荒れた展開となったスーパーフォーミュラ第1戦。新型車両SF19と新オーバーテイクシステムの導入によって、スーパーフォーミュラは新しい時代へと突入したが、その初戦はどのような内容となったのか。評判どおりのパフォーマンスに、実戦で初めて明かになった変化、そして懸念点を含め、ドライバー、チームスタッフの声、そしてメディアの視点で、第1戦鈴鹿サーキットの週末を振り返る。

 さまざまなトピックスや、昨年までのSF14のレースでは見られなかった光景が多く現れた開幕戦。いきなり結論からになるが、今回の第1戦を見ての昨年との違いを、以下の5つのポイントに絞ってみたいと思う。

キャシディ、「最初は苦戦していたから勝てたことが不思議だった」/スーパーフォーミュラ第1戦決勝トップ3会見

●新型車両SF19の走行パフォーマンスは抜群も、レースでは意外なウイークポイントも
●新オーバーテイクシステムで接近戦、順位変動が増加
●ソフトタイヤとミディアムタイムの予想以上のギャップ
●予選Q1の難しさと、予選の勢力図
●トラブル、アクシデントが多く、レースクオリティに懸念。今後はドライバーの体力も心配

●新型車両SF19の走行パフォーマンスは抜群も、レースでは意外なウイークポイントも
 まずは新型車両SF19について。テストでのタイム、パフォーマンスがそのまま実戦でも発揮され、想定通りで世界に誇るワンメイクシャシーと言える出来映えと言えるが、レースでは意外な部分に落とし穴があった。

 実際にはシャシー以外の部分になるが、決勝日の午前フリー走行で平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)の車両のタイヤのホイールナットが緩み、平川はマシンを止めた(決勝はタイヤアクシデントでリタイア)。決勝ではTCS NAKAJIMA RACINGの2台がピットでのタイヤ交換後、アレックス・パロウが左フロント、牧野任祐が右リヤのホイールナットが緩んでしまい、リタイヤに追い込まれてしまった。

 今年からホイールナットの素材はこれまでのアルミニウムに加えて鉄も使えるようになり、チームによって素材の選択、そして使用の仕方や管理のノウハウは大きく異なるという。新型車両とのマッチングはテストで試しているとはいえ、どのチームも決勝のレースディスタンスは初めて。ナカジマレーシングは9年ぶりにポールを獲得し、フロントロウを独占してのスタートだっただけに、ホイールナットでのトラブルにチームの落胆ぶりも大きい。

「もっとチームがしっかりしていかないと、これではドライバーの頑張りだけという状況になってしまいますよね。レースはチャンスが得られたときにきちんと結果を出さないといけない。実際、最後まできちんと走っているクルマがありますので、何が悪いのか調べてどうにか対策しないといけない。チームとしての力をきちんと上げていかないといけないと思っています」と話すのは牧野任祐の担当、岡田淳エンジニア。

 予選でデビュー戦でポールポジションという鮮烈なデビューを飾りながら決勝ではリタイヤに終わった牧野は「ちょっと……なんて言葉にしていいのかわからないですけど……悔しいレースになってしまいました。ピットアウト直後は別に異変はなかったんですけど、セーフティカー明けにリヤが何かおかしいと感じていました。クラッシュする直前は明らかに挙動がおかしくなって、どうすることもできませんでした」とトラブルの状況を振り返る。

 ホイールナット以外でも、関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、そして石浦宏明(P.MU/CERUMO · INGING)がピットストップ時にギヤトラブルに見舞われ、ふたりともマシンをガレージに入れてしまうことになった。

 関口は1速、2速、5速のギヤを失ってしまい、石浦も「僕が1速で停止線に止まったと思っていたんですけど2速だったので1速に落としたらギヤが1速と2速の中間のところにあって、そこで駆動がかかってギヤを失ってしまいました」と話すように、SF14の時には起きなかったというギヤトラブルが多発。今後はチーム側でも警告アラームを取り付けるなどして対応していくという。SF19の完成度が高かった反面、厳密にはシャシーの部分ではないが、ホイールナットとギヤがウイークポイントであることが明らかになってしまった。

■レースでは新オーバーテイクシステムが効果的に稼働。アクシデント多発の要因
●新オーバーテイクシステムで接近戦、順位変動が増加
 レースをご覧になった方はお分かりのように、サイド・バイ・サイドが増え、オーバーテイクシーンも随所に見ることができた。ビジュアル面でも視認性はSF19の時よりアップしているのではないだろうか。次の項目に挙げたソフトタイヤとミディアムタイヤのタイム差が大きいことも、順位の入れ替わりが多い展開の要因となった。

●ソフトタイヤとミディアムタイムの予想以上のギャップ
 実質、開幕前の2回のテストではレースディスタンスを通して走ることができなかったため、ソフト/ミディアムタイヤの比較やライフは手探りな状況で開幕戦を迎えることになった。結果としてはソフトタイヤでのラップタイムがミディアムタイヤを大きく上回り、ソフトタイヤのライフは想定以上に長かったようだ。

 2位になった山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が会見で「ミディアムとソフトというより、ハードとソフトというくらいグリップ差が大きい感じですね。ミディアムをあんなに機能させられないとは思わなかった」と話せば、中嶋一貴(VANTELIN TEAM TOM’S)は「タイヤの特性はちょっと理解するのが難しい」と表現。石浦宏明は「今後はレースでミディアムタイヤでの周回をできるだけ少なくして、ソフトタイヤを長く使う戦略になるので、次から週末の組み立ても変わってきますね」と、実戦でのタイヤの印象に多くのドライバーが驚かされた様子で、まだまだ、タイヤ特性は掴み切れなさそうだ。

●予選Q1の難しさと、予選の勢力図は大きく分かれる傾向か
 ソフトタイヤでのグリップは多くのドライバーが手応えを感じている一方、ミディアムタイヤに関してはほとんどのドライバーが自信を得られていないようで、予選Q1はグリップ感が薄いままアタックに入る状況となったようだ。そのためか、今回の予選Q1では飛び出しやスピンなどが多発して3度も赤旗中断する内容となった。ほとんどのドライバーが『予選Q1を突破できれば』が最初の目標になっており、20台から12台に一気に台数が絞られるQ1はどのドライバーにとっても週末最初の鬼門となる。スターティンググリッドが重要なフォーミュラレースながら、ポールポジションを争うQ3と同等に昨年以上にQ1の緊張感が高いのが興味深いところだ。

 また、テストで好調だったチームがそのまま上位グリッドを獲得しており、SF19の一発の速さに関してはナカジマ、インパル、、ダンデライアン、KONDOが抜けている印象だ。予選Q3では参加した8台のウチ、結果的に上位4台がホンダ勢、5~8番手がトヨタ勢となったエンジンウォーズも今後の展開を見守りたい。

●新人ドライバーにトラブル、アクシデントが集中
 予選で3度赤旗が提示され、決勝では4度セーフティカーが導入されるという荒れた週末となった開幕戦。新型車両導入で勢力図がリセットされながらも、結果的に昨年最終戦での表彰台3人が今回の決勝でもトップ3になったことには偶然ではないだろう。開幕戦のレースは荒れた展開となったが、その要因としてマシントラブルだけではなく、レースのモラル/認識の違いと、ドライバーレベルの差の大きく目立つことになった。

 今季のスーパーフォーミュラには7人のルーキードライバーがシリーズ参戦することになったが、決勝では5人がリタイアとなった。もちろん、ドライバーの責任ではないトラブルも含まれているが、外国人ドライバーを中心にクラッシュや危険な飛び込みが多く見られた。中嶋一貴とハリソン・ニューウェイは予選でもクラッシュし、決勝でも再び絡んで2台ともにリタイアとなったが、その内容がある意味、衝撃的だった。

 高速コーナーのデグナーひとつ目で中嶋一貴のインにニューウェイが飛び込み、ニューウェイが一貴を押し出すように2台は高速状態のままコースアウト。ラインが実質1本しかないデグナーひとつめのでのオーバーテイクに、多くのレース関係者が首を傾げた。

■デグナー進入で飛び込まれた中嶋一貴「あそこで入るのはどう考えても無理です」
 ニューウェイにはペナルティポイントが加算されたが、被害を受けることになった中嶋一貴は「(アクシデントの前から相手が)来たがっているのは見えていたんですけど、あそこのデグナーで入るのはどう考えても無理です(苦笑)。相手が前に出ているわけでもないので、こちらも退くわけにもいかないし無理ですよね。と、(ニューウェイに)コースサイドで伝えたら、一応冷静になったみたいで理解はしてくれました。(オーバーテイクが)行けると思ったみたいですが……」と相手との認識の違いの大きさに戸惑う。

 石浦も開幕戦後、今回のレース内容に警鐘を鳴らす。

「レースのルールを知らないドライバーが何人かいたので、危ないですよね。セーフティカー中に後ろからインに飛び込んでくるドライバーもいたようなので(苦笑)。僕もシケインでまったくスペースがないところに飛び込んで来られて接触を受けました。ちょっと心配になるレベルでバトルをしているドライバーがいるので、スーパーフォーミュラのレベルを下げないでほしいと思います」と石浦。

 レース後のペナルティも7つを数え、4度のセーフティカー導入の事実だけでなく、先ほどの高速デグナーのクラッシュだけでなく130Rでの単独スピンからの大クラッシュなど、大事故になりかねないシーンが目立った。

 アグレッシブなドライバーが増え、バトルやオーバーテイクが増加することはもちろん歓迎したいし、それこそレースの醍醐味でもある。だがその反面、接触やクラッシュのリスクも増えることになる。海外からの参戦を幅広く受け入れれば受け入れるほど、ドライバーのスキルやモラルの差は大きくなることは間違いなく、それを一概に規制することは難しい。

 それでも、レースとしてのクオリティだけでなくドライバーやコースサイドのオフィシャルの方たちの安全性にも関わる問題だけに、F1に参戦するにはにスーパーライセンスが必要なように今後は最低限のモラル、そしてドライバースキルの何かしらの基準は必要となるのかもしれない。SF19のパフォーマンスが高いだけにドライバーへの技術、身体への負担も増しており、夏場になればレースでの脱水や集中力低下などの点でも懸念されるポイントになる。

 以上のように開幕戦はさまざまな意見が交錯するレース内容となったが、その賛否はともかく、このままでは第2戦以降も荒れたレース内容となることは必至。今回のような展開もレースのひとつと言えばそれまでだが、セーフティカーの導入タイミングやトラブル、アクシデントで勝敗が決まるようなレースではなく、やはり新時代のスーパーフォーミュラは昨年最終戦のようなトップドライバー同士のクリーンバトルで勝敗が決まるレースであることを願うばかりだ。




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