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【津川哲夫2018年私的ベストメカ1/5】もはや高周波レベルのサスペンション制御。ヒーブコントロールに込められた英知

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【津川哲夫2018年私的ベストメカ1/5】もはや高周波レベルのサスペンション制御。ヒーブコントロールに込められた英知

 2018年はハード・フロントサスペンションが流行った。パワーユニット/エンジン(PU)は開発が進み、すでに1000馬力を超えていると言う。しかし、タイヤの性能は大きく変わらず、構造的にも硬く内圧も高目の設定が推奨されており、縦と横方向のグリップバランスも取れていない……。

 さらに2018年はシャークフィンやミッドウイングが規制され、リヤエンドのダウンフォースの獲得が難しくなってしまった。これらの傾向に対処するために加速・減速・コーナリング・トラクション……等でのエアロバランスの制御が重要な役割を担ったのだ。

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 その結果、フロアのレーキ角制御がひとつのトレンドとなった。車体の前傾角のことだ。もっとも強い角度のレッドブル、その一方、最小限に留めたのがメルセデスで、中間的なのがフェラーリと別れた。いずれにしても、2018年シーズンはほとんどのチームがレーキ角制御を重要課題としていたのだ。

 レーキ角制御はフロントサスペンションの動きを最小限に留め、リヤサスペンションの上下動による姿勢変化を積極的に利用する。その結果、フロントはソリッドに近く、サスペンションの上下動は最小限に抑えられロールもなく実に硬くなる。こうなるとタイヤの特性と相まってフロントグリップの限界はピーキーで、簡単に限界を超えてしまう。

 そのため、チームはこの硬いサスペンションのわずかな稼働を確実に制御しなければならず、これに全チームが複雑なヒーブサスペンションを採用して対応することとなった。わずかな稼働、ストロークはもはや高周波振動、これにタイヤの空気圧によるスプリング効果が加わる。タイヤの空気圧はダンパーのような物理的な緩衝器の装着は不可能、空気のなすがまま。したがってこの空気圧の振動も含めてフロントサスペンションの振動を征することがレーキエアロの制御と言うわけだ。

 フロントの振動をヒーブサスペンションが受け止め、ここで振動の入力と反力の眼界を抑えている。写真はザウバーのヒーブコントロールユニット。向かって左側に傘スプリング(1)が密集して装着されていて、本体のダンパー部分(2/青い色の部分)まで隙間はほとんどなく、左右からの圧縮で動くのはこのわずかな隙間の合計分となる。

 ダンパーエンド、向かって右側のアルミ色の部分にはおそらくイナーター(3)が装着されていて、ここで振動の加減速を緩衝していると考えられる。現実のサスペンションは動かなくてもタイヤの振動を入力(フォース)として受け止め緩衝しているのだ。ハードサスペンションながらミクロの世界での振動が実に繊細に制御されているが現在のF1マシンなのだ。

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