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スポーツ 2018.12.12

シーズンオフ技術解説(2):『世界最高のレーシングエンジン』であるF1パワーユニットの劣化対策

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 この5シーズンを通して圧倒的なパワーと高い耐久性を見せたメルセデスのパワーユニット(PU)。前回の技術解説では、その生みの親である人物がF1エンジンの飛躍的な進歩について語ったが、今回はパワーロスの防ぎ方や、2021年以降の新規則について明かした。

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    シーズンオフ技術解説:20年で飛躍的進歩を遂げたF1エンジン。メルセデスが誇る耐久性の高さに迫る

 今のF1パワーユニットは、壊れなければいいというものではない。シーズンを通じて、進化し続けなければならないのだ。

 メルセデスのパワーユニットの生みの親であり、現在メルセデスAMGハイパフォーマンス・パワートレインズ部門のマネージングディレクターを務めるアンディ・コーウェルは、次のように語った。

「シーズン中に1基を使い続けていると、どうしてもパワーが少しずつ低下していく。そこをいかに食い止めるか、エンジニアたちはずいぶん頑張ってくれた」

「かつてのV8エンジン時代は、まったく同じパーツを同じように組み立てたのに、どうしても個体差によるバラツキを防げなかった。それはなぜなのか、どこから起きるのか、徹底的に究明してね。まずはその個体差を、最小限にすることに成功した」

「次になぜ少しずつパワーが落ちていくのか、原因究明に取り掛かった。摩擦による表面の劣化や、ジョイントの劣化なのか、補機類に問題はないのか、かなりのエネルギーを追求に費やしたよ。具体的な部分には、言及できないけどね」

 さらに組み上がってからのパワーユニットへの、細かな配慮も忘れない。

「次のグランプリへの移動に、高度1万メートルの上空を飛ぶことはしょっちゅうだ。その際、PUがどんな状態に置かれているか、しつこいほど確認している。精密機械の塊だからね」

 1基あたりの寿命は、平均6000~8000km。もちろん市販車エンジンとは比べものにならないほど短命だが、発生するパワーも違いすぎる。何よりモータースポーツの歴史において、これほどハイパワーかつ壊れないエンジンは、これまで出現していない。

■ライバルに差をつける最大の武器はMGU-H。新規則による廃止に反対

 費用が高いという大きな欠点はあるものの、現在のF1パワーユニットはおそらく世界最高のレーシングエンジンと言っていいだろう。何しろかつてのV8エンジンよりはるかに強大なパワーを発生しながら、3分の1の燃料しか消費していないのである。

 一方で現行パワーユニットには、「音が控えめすぎる」というファンからの批判、そして「燃費運転を強いられる」というドライバーからの不満も根強い。

 さらにルノーやホンダのように、F1で輝かしい実績を築いてきた世界的自動車メーカーですら、メルセデス、フェラーリのレベルに追いつくのに今も手こずっている。


 そんな状況を一気に打開しようと、FIAとFOMはV6ターボハイブリッドの2021年以降の簡素化を提案した。具体的にはMGU-H(熱エネルギー回生システム)を廃止して、開発費を安く、かつメーカー間の格差をなくす。そして最高回転数を上げることでエンジン音を大きくし、共通パーツを大胆に導入するという案だった。

 しかし、これらの提案が受け入れられることはなさそうだ。ここまで莫大な開発費を投じて現行パワーユニットを作り上げてきた既存メーカーが、一致して猛反対しているからである。中でも、MGU-Hの廃止への拒否反応が強い。

「MGU-Hには、ふたつのアドバンテージがある」と、コーウェルは言う。

「まずこれこそが、エネルギー回生システムの鍵となる技術であること。MGU-Hの進化こそが、ライバルに差を付ける最大の武器であることが、我々も含めエンジンメーカーはよくわかっている」

「そしてこのシステムのおかげで、ターボラグを劇的に解消できるようになった。ターボコンプレッサーは、タービンとコンプレッサーで構成されている。しかしその間に電気モーターとジェネレーター(発電機)を介している。これがMGU-Hでね。ドライバーがスロットルペダルを緩めると同時に、コンプレッサーがターボに代わってエンジン内に空気を送り込む。その結果、タイムラグなしに最適なトルクが使えるわけだ」

「これまでは単なる排気熱として空中に霧散していたエネルギーの約5%が、このシステムのおかげで回収されるようになった。ようやく実用化できたこの貴重な技術を、自動車メーカーが簡単に手放すとは思えない」

 ということでV6ターボハイブリッドシステムは、今後もF1で使われることになるだろう。迫力ある音の問題をどうするかは、また改めて考える必要がありそうだ。

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(AUTOSPORT web )

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