10月8日、栃木県のツインリンクもてぎでスーパーGT公式テストの1日目の午前/午後の走行が行われたが、今季GT300クラスのランキング6位につけるHOPPY 86 MCには、第3ドライバーとして小高一斗が乗り込んだ。
小高は1999年神奈川県生まれ。カートを経てFIA-F4にステップアップし、今季は第3戦富士から参戦し、現在ランキング3位。また9月29~30日にはスポーツランドSUGOでの全日本F3選手権にHANASHIMA RACINGからスポット参戦し、代替開催の第9戦で1ポイントを獲得した。
【タイム結果】スーパーGT公式テスト ツインリンクもてぎ 10月8日午後
そんな小高にとって、いわゆる“ハコ”のレーシングカーは初めての体験。松井孝允と坪井翔というふたりの先輩ドライバーから、午後のセッション2の終盤にステアリングを受け取ると、GT500との混走からGT300の専有走行までの8周をこなし、1分50秒275というベストタイムをマークした。
「若干怖かったですけど、正直面白かったです」と小高は初めてドライブしたGT300マザーシャシーの感想を語った。ただ、走り出しはGT500との混走だった上に、バックモニターが接触不良で見えていない状態だったという。
「まだ何もかも分からないですし、死角もフォーミュラに比べると多いし、そのなかでミラーしか(後方確認できるものが)ない状態で。そこでうしろからパッシングされても、心の準備もできてない状態でした(苦笑)」
ただ、3周ほどこなすと専有走行になったこともあり、「そこからは落ち着いて走れました」という。「クルマの印象としてはF3よりもパワーはあるけど、コーナリングはスピードはF3の方が速い。F3とF4の中間くらいの印象でした。自分が知らない速度域ではなかったので、そこは大丈夫でした」とGT300にも慣れることができたという。
初めてのハコ車だけに「自分がクルマのセンターにいないので、車幅感覚がまだちょっと(笑)」と苦笑いしたが、「でもすごく面白かったですね」と小高はGT300初ドライブを楽しんだ様子だった。
■土屋監督「いつでもドライバーふたりがいなくなるリスクがあるということ」
そんな小高のテストでの起用だが、いったいなぜなのだろうか? 土屋武士監督に聞くと、「ウチは“次に来る”ドライバーをいつも乗せてるから。(山下)健太も、坪井も。それに小高のことはスクール(編注:フォーミュラトヨタ・レーシングスクール。土屋は講師を務めている)で全部見ているからね。速いのは分かっているし、早くこういう雰囲気を経験しておいた方がいいと思うから」と教えてくれた。
ただ気になるのは、果たして小高を来季起用するつもりで乗せたのだろうか……? ということだ。ズバリ直撃すると、「ウチは『ふたりともいなくなるんじゃないか』というドキドキ感がありますから」と今季ドライブしているふたりが移籍する可能性について触れている。
「普通に考えたら、坪井はGT500デビュー戦でいきなりトップを走った男ですよ。来年ウチにいるわけないじゃないですか(笑)」と土屋監督。
「孝允も、SUGOの予選で一緒に乗っている坪井もビックリするようなタイムを出してきた。坪井はいま誰もが欲しがるドライバーで、そんな坪井にサーキットによっては勝っちゃう孝允がいる。そういうポテンシャルがあるふたりがウチにいるということは、いつでもいなくなるリスクがあるということ」
この話を横で聞いていた松井は「オファーこないかな~(笑)」とおどけたが、土屋監督の心配はあながち冗談ではないだろう。土屋監督はもしふたりともチーム離脱……となった場合は、自らの現役復帰すらあるとほのめかした。
「もしふたりいなくなったら、クルマを作れるドライバーがいなくなっちゃうから。このふたりがいなくなって、例えば一斗を乗せることになったら、野放しにするわけにいかない。自分が乗らないと何言ってるのか分からないだろうし(笑)」
当然ながらまだ来季のドライバーラインアップはGT500も決まっていないが、少しずつ動き始めているのは間違いない。小高の起用は、つちやエンジニアリングの来季に向けて、そして小高の将来に向けたものということだ。
「GT3より、このクルマで速ければGT500に乗れる、使い物になるというのがみんな分かってきてくれていると思う。ここを育っていくのがいいと思う」と土屋監督は、“GT500ドライバー育成マシン”としてのマザーシャシーの有効性を語ってくれた。松井も坪井も、このHOPPY 86 MCをドライブすることでクルマ作り、タイヤ作りを大いに学んでいる。小高も同じ道を歩むのだろうか……? 来季のストーブリーグに向けた注目のポイントとなりそうだ。
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