現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > 【小松礼雄のF1本音コラム】タイヤを保たせられず痛恨のノーポイント。マグヌッセンが最速タイム記録も「価値はない」

ここから本文です

【小松礼雄のF1本音コラム】タイヤを保たせられず痛恨のノーポイント。マグヌッセンが最速タイム記録も「価値はない」

掲載 更新
【小松礼雄のF1本音コラム】タイヤを保たせられず痛恨のノーポイント。マグヌッセンが最速タイム記録も「価値はない」

 現役日本人F1エンジニアとして、ハースF1でチーフを務める小松礼雄エンジニア。F1速報サイトで好評連載中のコラム、今回は第15戦シンガポールGPをふり返り。現在のF1で起きている真相と、現場エンジニアの本音を読者のみなさまにお届けします。

* * * * * * *

【小松礼雄のF1本音コラム】中団を制するハースの今後の課題と強み。マグヌッセンが次のレベルに行くために必要なこと

 シンガポールGPはハイパーソフトタイヤのグレイニングがひどく、長い周回数が保たないことは、早い段階から分かっていました。予選ではロマン(・グロージャン)がQ3に進出して7番手を獲得していましたが、逆にフリー走行で速いタイムを記録していながらも、Q2で敗退していたマクラーレンの(フェルナンド・)アロンソ(11番手)とルノーの(カルロス・)サインツJr.(12番手)がレースでは怖い存在になるということは明らかでした。

 というのは、ハイパーソフトを履いて7、8、9、10番グリッドからスタートするよりも、ウルトラソフトを履いて決勝をスタートできる11、12番グリッドの方がレースでは有利になるからです。仮にトップ3チームの速さがあれば、第1スティント中に後ろとの差を広げて、ピットストップ後に遅いクルマに引っかかることもありません。

 ハイパーソフトでスタートしたドライバーは、タイヤの摩耗的にどうしても15、16周でピットインせざるを得ないわけですが、その時点ではまだバックマーカーをクリアできるほどのタイムを築くことは中団のチームには不可能です(セルジオ・ペレスが良い例でした)。
 
 しかもシンガポールはモナコの次に抜けないサーキットですので、いったん遅いクルマに引っかかると、どんどんタイムをロスして、どうしても不利な展開となってしまいます。

 さらにロマンの状況を悪くしたのが、ウイリアムズの(セルゲイ・)シロトキンの存在でした。セーフティカー導入中の3周目にピットインしたシロトキンは、その後ゆっくりしたペースで走行を続けていました。できる限り周回数を伸ばそうという考えだったと思いますが、彼の後ろにつまったことでロマンのレースは事実上、終わってしまいましたね。でもハイパーソフトがまったく保たなかったので、どうしてもあのタイミングでピットインせざるを得なかったんです。

 同じハイパーソフトでスタートした(ピエール・)ガスリーや(ダニエル・)リカルドが26、27周目までハイパーソフトを保たせたのはすごいと思いますが、仮にロマンがその周回までピットストップを延ばせたとしても、ウイリアムズはクリアできてもザウバー勢の後ろでコースに戻ることになったと思います。彼らにつまっている間に、結局アロンソとサインツJr.に抜かれてしまうので、状況はあまり変わらなかったと考えています。

■グロージャンの青旗無視は10秒ペナルティでも仕方ない

 また、ロマンはシロトキンとのバトルによる青旗無視で5秒ペナルティを科されましたが、あれは当然の裁定だと思っています。レギュレーションでは、対象車が1.2秒以内の差に入って青旗が振られた場合、最初の機会で抜かせるようにと定められています。

 ロマンの場合、ターン22の手前で青旗が振られていたので、ターン1までとは言わなくても、ターン7のブレーキングでは絶対にレースリーダーの(ルイス)ハミルトンを抜かせるべきでした。しかし、シロトキンとのバトルで熱くなっていたロマンがハミルトンを先行させたのはターン14の手前でした。
 
 しかもハミルトンはロマンとシロトキンのバトルにつまった結果、2番手の(マックス)フェルスタッペンとの差をすべて失っていました。それだけに、ペナルティを科されたのは当たり前だと考えています。仮に5秒ではなく10秒のペナルティを科されても仕方がなくらいです。

 僕らがレース中にドライバーに伝えているのは、「あとX周でリーダーの青旗にかかるから、抜くチャンスはそれまで。だからX周以内に抜かないとダメ」ということです。
 
 逆に、バトルの最中に自分たちのドライバーが前にいる場合は、「あとX周で後ろのドライバーに対して青旗が出る。そうすれば少し余裕ができるから、それまで絶対我慢しろ」というように伝えます。

 今回のケースに関して言えば、エンジニアがロマンに青旗を伝えるタイミングが少し遅かったことに関しては、反省しなければいけません。実際にはターン3で彼に伝えているのですが、もしターン1よりも前に伝えていれば、メインストレートが1本目、ターン7でストレートが2本目という意識になるので、ターン7で抜かせないとダメだということはロマンにももっと明らかになったと思います。
 
 でも、ドライバーのステアリングに青旗の表示はずっと出ているわけですから、ロマン自身ももっとしっかりと対応するべきでした。

■まさかのマグヌッセンのスランプ
■ファステストタイム記録の背景
■F1日本GPに向けたハースの目標順位

続きはF1速報WEBで掲載中

こんな記事も読まれています

ホンダアクセス、新型ヴェゼル用・純正アクセサリーを発売開始
ホンダアクセス、新型ヴェゼル用・純正アクセサリーを発売開始
月刊自家用車WEB
これからの物流の要となる小型EVトラック普及の鍵! EV充電スポットが「小型EVトラック」にも開放された
これからの物流の要となる小型EVトラック普及の鍵! EV充電スポットが「小型EVトラック」にも開放された
WEB CARTOP
横浜ゴム「GEOLANDAR X-CV」「GEOLANDAR A/T G31」がトヨタ 新型「ランドクルーザー250」に新車装着
横浜ゴム「GEOLANDAR X-CV」「GEOLANDAR A/T G31」がトヨタ 新型「ランドクルーザー250」に新車装着
くるまのニュース
スフィアライトから「純正LEDフォグパワーアップバルブ」が発売
スフィアライトから「純正LEDフォグパワーアップバルブ」が発売
レスポンス
明るい話題だけではやっていけない。メルセデスF1代表、終わらない苦戦から「チームが一歩踏み出す必要がある」
明るい話題だけではやっていけない。メルセデスF1代表、終わらない苦戦から「チームが一歩踏み出す必要がある」
motorsport.com 日本版
WRC育成2期生、初のターマック戦『クロアチア・ラリー』を完走。グラベルクルーとの連携も経験
WRC育成2期生、初のターマック戦『クロアチア・ラリー』を完走。グラベルクルーとの連携も経験
AUTOSPORT web
どこがどう違う?ボルボの最新コンパクトEV「EX30」とレクサス「LBX」を徹底比較
どこがどう違う?ボルボの最新コンパクトEV「EX30」とレクサス「LBX」を徹底比較
@DIME
日本で大人気の「軽自動車」なんで海外で売らないの? コンパクトで「燃費・性能」もバツグン! “高評価”でもメーカーが「輸出しない」理由とは
日本で大人気の「軽自動車」なんで海外で売らないの? コンパクトで「燃費・性能」もバツグン! “高評価”でもメーカーが「輸出しない」理由とは
くるまのニュース
レクサス、新型SUV「GX550」を今秋に発売! さらに100台限定で“オーバートレイル+”も先行抽選販売へ。
レクサス、新型SUV「GX550」を今秋に発売! さらに100台限定で“オーバートレイル+”も先行抽選販売へ。
くるくら
レクサスが新型「GX550」の限定モデル“OVERTRAIL+”を抽選で発売
レクサスが新型「GX550」の限定モデル“OVERTRAIL+”を抽選で発売
@DIME
F2王者プルシェール、F1参戦叶わなければインディカーフル参戦も視野に? オーバル挑戦にも前向き「チャンスがあれば当然やりたいよ」
F2王者プルシェール、F1参戦叶わなければインディカーフル参戦も視野に? オーバル挑戦にも前向き「チャンスがあれば当然やりたいよ」
motorsport.com 日本版
ノンジャンル220台のマニアック車が集合…第15回自美研ミーティング
ノンジャンル220台のマニアック車が集合…第15回自美研ミーティング
レスポンス
全国各地で地震が多発! クルマまわりの防災設備をさらに強化しつつ「モバイルトイレ」にも期待【連載 桃田健史の突撃!キャンパーライフ「コンちゃんと一緒」】
全国各地で地震が多発! クルマまわりの防災設備をさらに強化しつつ「モバイルトイレ」にも期待【連載 桃田健史の突撃!キャンパーライフ「コンちゃんと一緒」】
LE VOLANT CARSMEET WEB
6速MT搭載! マツダ「小さな高級コンパクト」あった!? クラス超え“上質内装”×めちゃスポーティデザイン採用! 登場期待された「斬新モデル」とは
6速MT搭載! マツダ「小さな高級コンパクト」あった!? クラス超え“上質内装”×めちゃスポーティデザイン採用! 登場期待された「斬新モデル」とは
くるまのニュース
人気の無料地図アプリ「グーグルマップ」の道案内はまだ“純正カーナビ”にはかなわない!? 使いこなすのに覚えておくべきアプリの“クセ”とは?
人気の無料地図アプリ「グーグルマップ」の道案内はまだ“純正カーナビ”にはかなわない!? 使いこなすのに覚えておくべきアプリの“クセ”とは?
VAGUE
郵便局の集配車が「赤く蘇る」、KeePerが8000台を施工
郵便局の集配車が「赤く蘇る」、KeePerが8000台を施工
レスポンス
トヨタ「GR86」とスバル「BRZ」がそれぞれ「良いクルマ」を目指したら、驚くほど似た味付けになってしまいました
トヨタ「GR86」とスバル「BRZ」がそれぞれ「良いクルマ」を目指したら、驚くほど似た味付けになってしまいました
Auto Messe Web
7月にマイナーチェンジ版が生産開始! 新型「BMW i4」「BMW 4シリーズ グランクーペ」、テクノロジーとデザインを刷新へ
7月にマイナーチェンジ版が生産開始! 新型「BMW i4」「BMW 4シリーズ グランクーペ」、テクノロジーとデザインを刷新へ
LE VOLANT CARSMEET WEB

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村