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【トロロッソ・ホンダF1コラム】ライバルとのマシン性能差が露呈か、シンガポールGPの惨敗で見えた厳しい現実

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【トロロッソ・ホンダF1コラム】ライバルとのマシン性能差が露呈か、シンガポールGPの惨敗で見えた厳しい現実

 中団グループトップを争うという期待を持って臨んだF1第15戦シンガポールGPだったが、トロロッソ・ホンダは完全なる惨敗に終わった。そこから見えてきたのは、予想以上に厳しい現実だ。

 金曜フリー走行ではアタックラップでのハイパーソフトタイヤのウォームアップに苦戦し、セクター1ではフロントが温まりきらず、セクター3ではリヤがオーバーヒートし、マシンバランスが刻々と変わっていってしまうという問題に苦しんで一発のタイムが出せなかった。しかしそれはアタックラップに限った話で、タイヤ温度が安定するロングランのペースは悪くなかった。

F1 Topic:トロロッソ・ホンダが得意のシンガポールで失速したふたつの理由

 金曜夜のデータ分析でタイヤのウォームアップは解決できたが、予選では下位に沈んだ。


 チーフレースエンジニアのジョナサン・エドルスは「Q2ではQ1の時よりも風が強く、ウチのクルマは空力センシティビティがあまり良くないから他よりもレスダウンフォースの状態で走ることになってしまった」とデータ上でもダウンフォース損失が見られたことを明らかにした。

 しかし最大の問題はそれではないと言う。

「ひとつ上のマーカス・エリクソンとは0.3秒差だったが、その上は1秒差だった。それはマシンセットアップでは取り返せない差だ。仮にアンチロールバーや車高などのセットアップが完璧だったとしても、1秒も遅くなるようなことはない。つまりマシンパッケージの基礎的な問題だというわけだよ」

 問題は、「とにかくグリップが欠けていてコーナーで遅いこと」と語る。

 全開区間でコンマ数秒ずつ失うことは覚悟の上でダウンフォースを最大限に付けてコーナーで稼ぐつもりだったが、コーナーでもライバルより遅かった。特にエイペックス付近でのボトムスピードが低かったとエドルスは説明する。

 シンガポールのマリーナベイ・ストリート・サーキット自体は、昨年カルロス・サインツJr.が4位入賞を果たしたように伝統的にトロロッソが得意としてきたサーキットであり、マシンセットアップの方向性が間違っていたということは考えにくい。

 となれば従来と違う要素であるハイパーソフトタイヤをマリーナベイ・ストリート・サーキットに合わせて使えるマシンに仕上げきれなかったということが考えられる。モナコやカナダではハイパーソフトを上手く使うことができたが、低速の90度コーナーが連続するシンガポールではそれが上手く行かなかったのかもしれない。それがトロロッソ・ホンダSTR13の根本的な特性に起因するものなのか、修正が可能なものだったのか、それを理解することは今後のレースだけでなく2019年シーズン型のマシンにも繋がるはずだ。

「パッケージといっても空力だけでなくライドハイトであったりセッティングやタイヤの使い方など、どこがどう影響して今回このパッケージの戦闘力になったのか、それをしっかりと解析してこの先に繋げていくということをやらなければなりません。セッティングで直せるものなのか、直せない持病のようなものなのか、セッティングで助けられるけど完全には直らないのか、それはこれから分析しなければなりません」(ホンダF1田辺豊治テクニカルディレクター)

■ギャンブルには成功したものの、戦略につまずいたピエール・ガスリー


 決勝では15番・17番グリッドスタートゆえにハイパーソフトでスタートするギャンブルを敢えて選んだ。周りと同じウルトラソフトタイヤで同じ戦略を採っても、入賞圏までポジションアップできるほどのチャンスは巡ってこないからだ。

 スタートでピエール・ガスリーが12番手まで浮上したのは、ギャンブルが成功したからだ。そこからのペースも、前のニコ・ヒュルケンベルグ(ルノー)についていき、後ろのザウバー勢に脅かされることはなかった。

 しかしタイヤがタレてきた15周目あたりからはペースが落ち、苦戦を強いられた。ここでピットインせず26周目まで引っ張ってしまったのが失敗だった。

「思っていたよりもデグラデーションが大きくて15~6周目にはタイヤがタレ始めてしまってかなり苦しんでしまった。そこから26周目まで引っ張ったけど、それはかなりタフだった。ウルトラソフトに履き替えてからは(セルゲイ・)シロトキンに抑え込まれたりブルーフラッグの混乱があったり、もうめちゃくちゃだったね。そのあたりで15~20秒は失ったし、レースはかなり妥協を強いられてしまった。いずれにしても今週末の僕らにはトップ10圏内で争う力はなかったけどね」(ガスリー)

 しかし、15周目に早々にピットインを済ませたヒュルケンベルグに較べ、ガスリーは26周目まで引っ張ったことで、ヒュルケンベルグのピットストップ前は1.2秒だった両者の差は12秒まで広がってしまった。そしてヒュルケンベルグが10位でフィニッシュしたのに対し、ガスリーは14位に終わった(ロマン・グロージャンの5秒加算ペナルティで、ガスリーの順位が繰り上がって最終結果は13位)。

「デグラデーションはほぼ我々の想定通りだったんだ。しかしガスリーについては本来想定していたよりも長く引っ張ってからピットインさせざるを得なかった。そうしていなければ極めて遅いウイリアムズ勢のトラフィックに捕まってしまってさらに大きくタイムロスすることになっていたはずだからね。もし本来の予定通りに20周目あたりでピットインしてウルトラソフトでもっと長く走ることができていれば、結果は変わったかもしれない」

 エドルスがそう語るように、トロロッソは中団勢の最後方にいたウイリアムズ勢を見て、彼らと充分なギャップができるまではピットインしたくなかった。しかしガスリーの低下したペースを見れば、それは現実的ではなかった。ヒュルケンベルグと同じタイミングでピットインしていれば、傷口はあそこまで広がることはなかったのだ。

■第9戦オーストリアGPの空力アップデートに失敗しているトロロッソ・ホンダ


 ヒュルケンベルグと同じタイヤを履いていたのだから、ガスリーは10位争いができたはずだった。それが入賞の望みのないレースになってしまったのは、ハイパーソフトでスタートするギャンブルが失敗だったからではなく、ギャンブルに成功したにもかかわらずその後の戦略が失敗だったからだ。

 ただし、純粋なペースが足りないことも事実だった。
「ピットインした直後に新品のウルトラソフトを履いたガスリーは、それまで争っていた相手であり25周も古いウルトラソフトを履いた(シャルル・)ルクレールとほぼ同じペースでしかなかった。つまり我々のクルマはそれだけ遅かったんだ、残念ながらね」(エドルス)

 第13戦ベルギーGPと第14戦イタリアGPでの好走が示したように、今のF1はパワーユニットの性能よりもマシン性能と戦略が大きくモノを言う。得意なはずのサーキットでも簡単に下位に転落してしまうほど、その影響は大きいのだ。

 実を言えば、第12戦ハンガリーGPからの3戦連続の好走は、コンディションやライバルの失策に助けられたものでもあったとチームは見ている。

「スパやモンツァではある意味、我々よりも上位にいたはずのマシンが予選や決勝で本来の力を発揮することが出来なかったことでああいった結果になったと分析しているが、今回はほぼ全てのマシンが本来の力を発揮したことで実力通りの結果になったんだ。このような結果になってしまったのがなぜなのか、同じようなサーキットであり競争力を発揮することができたモナコやハンガリーなどのサーキットと較べて何が違ったのか、それを分析して原因を究明する必要がある」

 つまり、ハンガリーでは予選の雨、ベルギーやイタリアではザウバーなどライバルが自滅したことであの位置まで浮上することができたが、トロロッソ・ホンダの本来の実力はシンガポールのような中団グループの下位だったのではないか。シンガポールでは、外的要因がなくその実力通りの結果が露呈しただけではないかというわけだ。

 実際のところ、STR13は第9戦オーストリアGPで投入した新型フロントウイングが失敗で実戦使用できず、基本的な空力パッケージはシーズン序盤戦とほとんど変わりがない状態だ。ルノーやザウバーが急速にアップデートを進める中で、相対的にマシンのパフォーマンスが低下しているのは否めない。

 はたして、シンガポールGPの結果が今のSTR13本来の実力なのか、他に何らかの要因があって実力を発揮しきれなかったのか。日本のファンにとっては、日本GPを前に大きな不安に直面することとなった。次戦ロシアGPまでにその答えが見付けられることを願いたい。

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