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【小松礼雄のF1本音コラム】フロアの違反でグロージャン失格裁定の真実、FIAはプロのスチュワードをフルタイムで雇用すべき

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【小松礼雄のF1本音コラム】フロアの違反でグロージャン失格裁定の真実、FIAはプロのスチュワードをフルタイムで雇用すべき

 現役日本人F1エンジニアとして、ハースF1でチーフを務める小松礼雄エンジニア。F1速報サイトで好評連載中のコラム、今回は第13戦ベルギーGP、第14戦イタリアGPをふり返り。現在のF1で起きている真相と、現場エンジニアの本音を読者のみなさまにお届けします。

 ☆  ☆  ☆  ☆  ☆

【小松礼雄のF1本音コラム】中団を制するハースの今後の課題と強み。マグヌッセンが次のレベルに行くために必要なこと

 夏休み明けの初戦、ベルギーGPにアップデートを投入したのですが、金曜日は想定していたよりもクルマの挙動が良くなく、原因がイマイチ特定できませんでした。その夜のミーティングで土曜日のFP3では、ロマン(グロージャン)はそれ以前の仕様に戻し、ケビン(マグヌッセン)はそのまま新パッケージで走ることを決めました。

 ロマンはFP3の走り出しから感触が良く、直ぐにタイムを出してくれました。ケビンも金曜日の夜に施したセットアップの修正が良い方向へ働き、結果としてふたりとも好感触を得て予選に臨むことができました。

 予選、Q1,Q2はドライで何事もなく2台とも通過しました。予報ではQ3開始直後に雨が降るとのことだったのですが、実際はQ3開始直前に雨が降り出しました。それでも、まだピットウォールから推測できる限りではドライで行けると判断してスリックで2台とも送り出しました(他チームも皆同じ考えでした)。

 しかし、アウトラップでセクター3がもう既にかなり濡れていたので、急遽ピットインしてインターミディエットタイヤに履き替え、3周分の燃料を積んで再びコースイン。(キミ)ライコネンとレッドブルは最初のドライで出て行った時から数周分の燃料を積んでいたので、ガレージには戻らずピットストップでインターに履き替えていました。

 彼らにとって運が悪かったのは雨脚がセッション終盤に弱まり、セッション終了間際が一番コースコンディションが良かったことです。彼らはこの時まで走り続けているだけの燃料が無かったのです。うちはなんとかギリギリ最後まで走れる燃料を積んでいたのでロマンが最後に上手くまとめてくれ5番手という素晴らしい結果をだしてくれました。

 ケビンは残念ながらインターでの1周目にコースオフしてクルマにダメージを負ってしまった為、タイムが出ず9番手に留まりました。決勝は7、8位でフィニッシュし、チーム初となる2戦連続ダブル入賞を達成しました。

 ドライの予選ならおそらくフォース・インディアに勝てたと思いますが、決勝での彼らの最高速を考えると、レースで最後まで抑えきるのは難しかったでしょう。とはいえ、フォース・インディアがミディアムダウンフォースのスパ・フランコルシャン、ローダウンフォースのモンツァで強いことは判りきっていたので、彼らが最も得意とするサーキットでほぼ同じパフォーマンスを発揮できたのは良かったと思っています。

 続くイタリアGPの前にスパでの走行データを解析した結果、新パッケージが良いことが明らかになったので、モンツァには2台とも新パッケージで挑みました。FP1は雨になりましたが、FP2、FP3でのクルマの手応えも良く、自信を持って予選を迎えることが出来ました。

 ロマンはQ3でも素晴らしいアタックを決めて、予選6番手を獲得しました。しかし、ケビンは11番手でまさかのQ2敗退……。2回目のアタックでフェルナンド・アロンソと絡んでしまったわけですが、これは余計でした。アウトラップでケビンはアロンソの後ろを走っていましたが、最終コーナー手前でケビンはタイヤを温めるためゆっくり走っているアロンソを抜いたんです。

■失うものがないフェルナンド・アロンソと予選Q3進出を逃したケビン・マグヌッセン

 アロンソはこんなことをされて黙っているわけはありません。彼は失うものは何もないので、ピットストレートでケビンのスリップストリームに入り、1コーナーをブレーキがロックするところまで攻めました。結果、彼はコースオフしたのですが、2コーナーでコースに戻ってくる際にしっかりとコースを横切ってケビンが普通に走れないようにしました。

 アロンソの取った行動は決して褒められたものではありませんが、ケビンの考えも甘すぎました。結果、ケビンはQ2敗退。普通にやっていればアロンソはQ2敗退で、ケビンはQ3に進んでいたでしょう。失うものがあったのはケビンだけです。アロンソがあのような行動に出てくることは容易に想像できるのに、アウトラップの最終コーナー手前で抜いてしまった。ターン8を越えた時点でマクラーレンとのスペースを作り、それからアタックに入るべきでした。

 実際、ケビンの後ろにいたロマンはターン8出口ですでに危険を察知して、ケビンとの間隔を4秒くらい空けていました。冷静な判断ができていたと思います。逆にケビンはまったく必要の無いことをして自分の予選を台なしにしたので、これはちゃんと反省して見直すべきです。

 そのロマンですが決勝ではスタートこそ悪かったものの、ターン1へ向けてアウト側から冷静にポジションを取り戻し、その後はフォース・インディア勢、カルロス・サインツJr.を抑えて6位でチェッカーを受けました。今回もスパに続きフォース・インディアは速かったです。それを見事に抑えきる素晴らしいドライブだったと思います。しかし、レース後の審議でフロアの規定違反により失格の裁定を下されてしまったわけですが、チームは即座に控訴して現在、その裁判の準備に入っています。

 レギュレーションには、フロア前端のフロントコーナーと呼ばれる角の部分に半径50mmの丸みがないといけないと定められています。しかし、以前からずっとどこまでがフロントコーナーなのかという議論がありました。

 FIAは7月25日にTD(テクニカルデリゲート)033-18という技術仕様書を発行し、各チームに対してイタリアGPまでにクルマをこれに適応させるように通達してきました。そこにはフロントコーナーに該当する箇所がふたつある場合、その2つともに丸みをつけなければいけないと書かれていました。しかし、肝心な「どこまでがフロントコーナーと認識されるのか・どの地点より後ろだったらもうフロントコーナーではないのか」という定義がされていませんでした。

 定義がちゃんとされないということはそこに解釈の余地を残すグレーエリアがあるということです。F1のクルマをデザインする際にはこのようなグレーエリアを自分たちに都合の良いように解釈して有利になるデザインをします。それが普通です。かつてのブラウンGPのダブルディフューザーもしかりです。そこが腕の見せどころになるのです。

 このTDの発行後、我々の空力責任者がFIAの担当者である元フェラーリのニコラス・トンバシスにこのグレーエリアの解釈について質問をしています。その結果、メールで「これならば適用内」という見解を通達されていました。ただし、これはあくまでメール上のやり取りであって、規則として明文化されたものではありません。つまり何の効力もないわけです。

■グレーエリアを攻めるF1マシンの開発背景
■ルノーの訴えF1の政治バトル
■不安定なスチュワード判断

続きはF1速報WEBで掲載中

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