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スポーツ 2018.9.7

佐藤琢磨を長年追う松本カメラマンが明かすポートランド戦“勝利の秘策”

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 F3時代に渡英した頃から佐藤琢磨を撮り続けている松本浩明カメラマン。ロングビーチでのインディカー初勝利、歴史的偉業となったインディ500制覇とこれまで琢磨の勝利をファインダー越しに見続けてきた松本カメラマンは、今回のポートランド戦でのインディカー3勝目をどのように感じたのだろうか。

■佐藤琢磨は本当にベテランになった
 佐藤琢磨のインディカー通算3勝目は、過去の2勝(2013年ロングビーチ、2017年インディ500)とチェッカーまでの過程が違っていたし、レースの流れを思い返すと本当にベテランになったなぁという感慨も一入だ。

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 インディカーで9年目。151戦も走った。F1では91戦だったから、その1.5倍以上だ。そんなにキャリアがあっても、毎年1カ所や2カ所は初めて走るサーキットやトラックがあるのだから、モータースポーツの歴史の長さと奥の深さに呆れてしまう(笑)。

 琢磨が日本人ドライバーとして残している数々の記録も、その長い長い歴史の中のわずかな1ページか、2ページ程度だろう。それでも今の円熟期の琢磨のレースは、見るに値する。いや、この目に留めておかなくてはならない。その記した足跡をくっきりと後世に残すためにも。それが今の仕事のような気さえする。

 このポートランドの週末に、サーキットを離れて和食を食べながら琢磨にインタビューをする時間をもらった。それは別企画でジョーダン・ホンダでF1デビューした時のものだった。そのインタビューが掲載される号についてはまた後日紹介するが、15年以上も前の話に花が咲いた。咲きまくった。満開だった(笑)。

 F1に乗っていなければ、インディカーに来ることもなかったろうし、イギリスF3でチャンピオン取らなければ、F1には乗れなかった……。

 そうやって振り返れば、F3時代の成功がなければ、インディ500日本人初優勝の偉業にも辿りつけなかったし、こうしてポートランドで美酒に酔っていることもなかった。レースキャリアというのは、すべて繋がっている。

 レースウイークの水曜日。琢磨とトラックウォークをした。かく言う僕もポートランドは初めてだ。長いストレートの後からターン1~2と続くシケインはコンクリート。その後、ターン4からはオーバーテイクの難しそうなグルっと回り込むコーナー。長いバックストレッチの後の高速シケイン……。緑も多く1周が短くて平坦なポートランド・インターナショナル・レースウェイだ。

「オーバーテイク出来るのはターン1とターン6~7の進入かな。バックストレッチのシケインは狭いしイン側を抑えられたら、無理……」

 琢磨は要所要所でレースを想像しながら1周を歩いた。

 木曜日にテストデイが設けられたこともあって、クルマは前向きに仕上がっていた。ただ午前中にタイムが出るものの、午後に気温が高くなるとバランスを崩すのが、今年レイホールのチームが抱えていた問題で、ここでもその性格が悪戯した。

 琢磨は土曜午後の予選でグループ2に入り、Q1突破を逃すどころかグループ10番手、総合20番手のグリッドに。予想だにしないグリッドだ。1周57秒あまりでラップし、トップから1秒以内に20台が収まるような大接戦。100分の1、1000分の1秒差が運命の分かれ目だった。

 20番手からのレースをどう戦うのか?

 それがすべてだった。AJフォイト時代には後方からスタートに慣れていたし(笑)、ピットストップステラトジーを変えて前に出たレースもあった。それもうまく運んだとして4位、5位になるのが精一杯だった。 

 3ストップが定石のレースなら、2ストップでいく。それが作戦だろうが、イエローコーションが必要だし、そのタイミングが必ず琢磨の味方をしてくれるかわからない。だが、琢磨の性格からして20番手スタートで、何もしない手はないだろう。

■佐藤琢磨が語った勝利の秘策
 そして、見事優勝を手にした。レース後、琢磨はレース戦略の種明かしをしてくれた。

「予選が終わった後に、エディ(ジョーンズ)と話して、クルマの足回りはほぼ決まっていた。クルマは決して悪くなかったんです。エアロバランスだけ日曜の天気を見て決めようと思っていました」

「エンジニアたちがいろいろシミュレーションしてくれて話したんですけど、2ストップでいくのはペースも落ちるし難しいと。必ず1回イエローがなくちゃいけないし、ずっとグリーンの可能性もあるから。でも3ストップでいったところでなかなか抜けないし、15位になるのが精一杯なら、2ストップに賭けようって。僕はずっとそのつもりだった」

「実はレースはダウンフォースを少し削ってるんです。僕より削ったクルマはなかったんじゃないかな。どうしてかと言うと、2ストップだとしたら、前のクルマのスリップに入って引っ張ってもらうんだけど、単独走行になる時間が必ずあって、その時にすごく燃料を消耗するんです」

「だから、ダウンフォースを削って抵抗をなくした。またそうすることによって、ターン1と高速シケインの10~11で抜かれなくなるし、ターン6~7の進入で抑えさえすればなんとかなる。その自信はあったから」

「ライアン(ハンター-レイ)との勝負になって彼の後ろにいた時に、彼は逃げたけど無理には追わなかったんです。追えば最後のスティントで燃料が厳しくなるから。彼は僕が燃料をセーブしているのを知っているから、ピットストップでのマージンを稼ぐために逃げたんでしょうね」

「最後のピットは彼が先に入ったし、僕がピット終わって出た時には彼の前に出られた。あれが勝負のポイントだった」

「トップに立った時も、98%くらいの走りでタイヤを労わりながら走ってました。彼は最後に必ずアタックに来ると思ったし、そうなった時にタイヤが終わっていないように。ダウンフォースを削った分、タイヤには負担がかかるので、そこは注意しながら走ってましたね」

「プレッシャー? 長いことレースしてますからね。いい緊張感の中で最後はバトルを楽しんでましたよ(笑)」

「無線でチェッカードフラッグ!って、言われたんだけど、その後ろでピットのみんながキャーキャー言ってるのが聞こえたんで、うれしかったけど、思わずプッ!吹き出しそうになりましたよ……」

 勝者は雄弁なものかもしれないが、琢磨のコメントが、レース前の我々の疑問をひとつずつ解きほどくようで面白かった。


 インディカーでこんなレースをするのは、スコット・ディクソンか、エリオ・カストロネベスかと思っていたが、まさか勝利をさらうとは思っていなかった。良くて5~6位くらいかと。2ストップ作戦を取ることを想像していたにしろ、仰天の結果だった。良い意味での琢磨の裏切りだった。

 冒頭に書いたように琢磨の過去の2勝は、ロングビーチもインディ500も予選までに完全にクルマを仕上げ、予選グリッド前方からのスタートだった。予選20番手からの優勝なんて、琢磨の長いキャリアでも初めてのことだ。

 初めて走ったコースでいきなり優勝というのは、強いて思い出せるのは2000年にフランスF3に遠征し、スパで優勝した時だろうか……。

 そんなことなど、いろいろ思い出しながら長いフライトに乗って日本に帰ってきた。

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(AUTOSPORT web )

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