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20代最後の夏に、リカルドが決断。ルノー移籍へと傾かせた大きな要因【今宮純のニュース考察】

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20代最後の夏に、リカルドが決断。ルノー移籍へと傾かせた大きな要因【今宮純のニュース考察】

 F1ジャーナリストの今宮純氏がF1界でホットな話題をその裏事情を推察しながら紹介する連載コラム。今回は予想外のルノー移籍を決断したダニエル・リカルド、そして今後の動向が注目されるフェルナンド・アロンソの状況などを紹介。 

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フェラーリのみせる“奇妙な”加速。エネルギーマネジメントに秘密あり

■20代最後の夏に、リカルド決断


 ハンガロリンクテスト初日に参加したその3日後、リカルドの“2019年ルノー契約”が発表された。サマーブレイクショック、このタイミングを密かに狙っていた(かのように)。

 長年所属したレッドブルにけじめをつけたこの行動、セバスチャン・ベッテルのケースを思い出させる。2014年の日本GP土曜朝に離脱を突然発表、『ベッテル・ショック』と報じられた。フェラーリ移籍は最終戦アブダビGPで発表されたが10年以上在籍した組織に、“辞表”を急に出したあのときの行動と今回の『リカルド・ショック』は似ている。

 リカルドは19年もとどまるだろうという見方が周囲に流れ、本人も「サマーブレイクが終わるころにははっきりする」とコメント。

 しかし、先月からなぜ契約(調印)が延び延びなのか、彼の真意に個人的に疑問を抱いていたら……。

1:マックス・フェルスタッペン、ファーストな雰囲気
2:フェルスタッペンとステータス(年俸)の差異
3:2019年はホンダPU(パワーユニット/エンジン)にスイッチ決定
4:エイドリアン・ニューウェイの契約は18年まで(来季は未定)
5:他チーム以上に頻繁なプロモーションの拘束

 リカルドの決断には、こうしたネガティブ要因が彼をルノーに向かわせたのだろうか?

 また、ルノー移籍へ傾いた理由として以下の要因も考えられる。

1:ニコ・ヒュルケンベルグではなく7勝の実績ある自分がファーストに
2:活動予算増強中のルノーが3000万ドル(約33億円)以上をオファー(フェルスタッペンとほぼ同額)
3:ホンダは2019年トロロッソとレッドブルに同等待遇の供給、一方のルノーは完全ワークス体制
4:ルノーは、FIA要員も引き抜き、700人規模スタッフ体制に増員
5:飲料メーカーCMタレント役からの解放……。

 たしかにルノー現有戦力は“古巣”よりも劣っている。だが新たにチームリーダーとして戦う意欲、三十路前の彼の真意と受けとめよう。ベッテルは27歳でハミルトンは28歳で決断、リカルドも29歳で決断した。

■タイムリミットが迫るフェルナンド・アロンソの決断、8月19日WEC戦前後に注目?!


 コクピットにいない週末を楽しんでいるのか、あるいは多数の関係者と協議する多忙な日々を過ごしているのか。フェルナンド・アロンソの後半戦はベルギーGPでなく、8月19日のWECシルバーストーン戦から始まる。

 ル・マン24時間に続きトヨタで連勝を目指すこの日、インディ・シリーズ第14戦ソノマがある。先日、マイケル・アンドレッティが「このレースのころまでに19年について決断を」と発言。F1か、インディか、WECか、タイムリミットが近づきつつある。

 マクラーレンのザック・ブラウン代表はアロンソとは長期契約があると言う。そこで気になること。大物ドライバーは契約時に、『パフォーマンス条項』を契約書類の項目の中に入れるものだ。たとえば「シーズン前期までに〇位以上でなければ契約を見直す」とか、大物アロンソならばそうした条件を担保していると考えられる。

 F1をこのままマクラーレン・ルノーで走り続けるのを仮にプランAとしよう。プランBは他チームへの移籍、8月8日時点で2019年契約が決定済みのF1ドライバーは6人、フェラーリのシートひとつが空いている。セルジオ・マルキオンネ氏の急逝で新首脳陣体制に変化したフェラーリ、アロンソ側がコンタクトをとるのは自然な流れだ。新CEOのルイス・カミレリ氏とは旧知の間柄なのだから。

 プランCはアメリカ・インディ転向。そこで気になるのはトヨタとのWEC契約があり、現在ホンダ・エンジン使用のアンドレッティ・チームには行けない。だが昨年、一時彼のチームがシボレーにスイッチする動きがあり、実現はしなかったもののもしアロンソが彼のもとに来るなら、シボレー獲得とともにビッグスポンサーも望めよう。アンドレッティも待っている。

 アロンソの2019年動向にはルノー、シボレー、トヨタ、ホンダも絡まり合っていると思われる。さらなる“プランU(ウルトラ)”もありえるのだろうか。8月19日からはまたレース by レースが続く。「フェルナンド早く決断・発表を」とメーカーやチーム関係者何人もが迫っているこの夏である。

■ピエール・ガスリー株が急上昇、自ら“アピール宣言”も


 ハンガリーGPの4位入賞が絶好のアピール・レースになったピエール・ガスリー。5日後に『リカルド・ショック』がレッドブル・グループを襲ったからだ。

 彼らが今年カルロス・サインツJr.をルノーに“レンタル移籍”した際、レッドブルのシートに空きが出たら呼び戻すと公言。ならば8月4日に即『サインツ復帰』を発表するタイミングがあったはず。だが、それはなかった。フェルスタッペンとサインツを組ませたら、15~16年の“不仲騒動”になるのは必至。いまやエースのマックスは抵抗し、サインツもNo.2扱いは拒むだろう。

 そこで第3の男、ガスリーが登場する。ハンガリーGP後、「僕はタイヤ・マネージメントに自信を持てる、大きな進歩をやり遂げた」と自ら宣言。これはヒュルケンベルグに対し、予選は同等でも決勝のタイヤ・マネージメントが見劣りするサインツを意識したコメントに聞こえる。

 もしレッドブルがガスリーを昇格させた場合、トロロッソ・ホンダは窮地におちいる。あくまでサインツをグループ傘下にとどめるのなら、トロロッソにまわす選択がある。だがサインツ自身にはマクラーレンからの“ラブコール”が届き、再びトロロッソか新天地マクラーレンか、彼も決断すべき夏となった。

 ――サマーブレイクまっただなかの“シートバトル”。熱戦の口火をきったリカルドは誰よりもいま、夏休みを満喫していることだろう。

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