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スポーツ 2018.7.9

ル・マン初制覇の立役者はアロンソ? 一貴? トヨタの挑戦を追い続けたジャーナリストから見た舞台裏

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“世界三大レース”のひとつ、ル・マン24時間レース。通算20回も挑戦し続けて、ついにトヨタが優勝したのが2018年6月17日。ポルシェワークスが撤退したことでライバル不在とも言われ、「楽勝でしょ?」と思った人も多いかもしれない。しかし、ル・マンが世界一過酷で勝つのが難しいレースであることに変わりはない。2006年のレクサスGSハイブリッドによる十勝24時間レース挑戦からずっとトヨタのル・マン24時間挑戦を取材してきたジャーナリスト、世良耕太氏にトヨタのル・マン初制覇の舞台裏を聞いた。

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――勝てそうで勝てなかったル・マン24時間レースで、ついに、トヨタが優勝しました。しかも、ワン・ツーという完璧なカタチで。「トヨタ以外にワークスがいない状態なんだから、楽勝でしょ?」という人もいますけど。

世良耕太氏:「結果から見たら、楽勝に見えたかもしれないけど、そこはなにが起こるかわからないル・マンですから、トヨタも楽勝と思って臨んではいませんでしたよ。

――優勝の瞬間、ピットの様子、プレスルームの様子はどうでしたか?

「現地は、ポルシェがいるとかいないとか、関係なしでやっぱり勝者を称えるムードでしたよ。僕らも、トヨタが悔しい想いをしてきてるのをずっと見てきていますから、本当に素直に『ル・マン優勝、おめでとう! やりましたね!』という気持ちになったよ」

「ドライバーの中嶋一貴も『ずいぶん長くかかりましたが、ようやく勝ててホッとした』って言ってましたしね。今年、トヨタが勝てなかったらどうしよう、と僕も思っていましたし……」

――ワークスのトヨタとプライベーターでは、マシンの性能差が圧倒的に見えました。

「これも、結果から見たらそうなるんだけど、レギュレーション上は、ものすごくプライベーターが優遇されていたんです。たとえば空力もそうですし。エンジンに至っては、プライベーターの方が使える燃料が多くなっていたので、200psもパワフルになる計算でした」

「トヨタのTS050はハイブリッド・レーシングカーだから、エンジンだけで勝負するわけではないんだけど、200psのエンジン出力差は、最高速でプライベーターが有利になる計算だったんです」

――それでも、トヨタは圧勝した。

「そう。そのくらい今年のトヨタは強かったし、いまのトヨタのハイブリッド・レーシングカーの性能は高いということだったです」
――速いマシンを作っただけでは勝てないのがル・マンなんですよね?

「トヨタもこれまで何度も苦杯を嘗めさせられてきましたからね。残り5分で『ノーパワー!』になって九分九厘手にしていた優勝を逃すとか。そういった意味では、ライバルのポルシェワークスやアウディワークスがいなくても、どんなトラブルが襲ってくるかわからない状況でした」

――それこそ、今年勝てなかったら、というより今年優勝をプライベーターに攫われたら、とんでもないことになる! というプレッシャーも相当だったんでしょうね。

「だから、トヨタは事前に入念な準備をしました。“起こりうるトラブルの可能性”をそれこそ、ありとあらゆるシチュエーションを想定していましたよ」

「タイヤが1輪外れて、3輪になってどうやってピットまで戻ってくるか。給油のタイミングを忘れてピットを過ぎたときに、残った燃料と電力量でどう走らせるか、とか。およそ、『そんなことは起きないでしょ?』ということまで考えて予行練習を重ねていました。実際に、小林可夢偉は、レース終盤、給油のピットインのタイミングを見逃して1周走行する事態になりましたもんね」

――なるほど。今年のトヨタは、ドライバーも豪華でした。フェルナンド・アロンソという現役F1ドライバーのなかでも、最上級、もちろん世界チャンピオン経験者がトヨタに乗りました。アロンソ、トヨタでどうでしたか?

「アロンソは、トリプルクラウンを獲るために、勝てるトヨタでル・マンを戦いたかったんです。F1モナコグランプリはもちろん勝ってますし、今回ル・マンを勝ったから、残りはインディ500だけ、となりましたね」

「トヨタのチームとアロンソの関係はとにかく良好でした。トヨタはチームワークを大切にします。アロンソだけ特別扱いするつもりはなかったし、アロンソも耐久レースモードに気持ちを切り替えていたようでした。チームをなごませるためにカードマジックを披露したりして」

――マツダのル・マン優勝が1991年ですから、ふたたび日本の自動車メーカーがル・マンを制覇するのに27年もかかってしまったことになります。日本人としては、本当に素直にトヨタの優勝を喜びたいと思います。

「そうですね。2006年にトヨタが“ハイブリッド・レーシング”で十勝24時間に出場したときから、僕は間近で取材を続けてきましたから、本当にうれしい」

――トヨタのル・マン初制覇の立役者をひとり挙げてほしい、と言ったら、誰を推しますか? ドライバーの中嶋一貴? アロンソ?

「もちろん、ドライバーも大事です。レースをサポートするエンジニアやメカニックも。でも、ひとり挙げるとしたら……いや、ふたりでもいいですか? ひとりは、今年のTGR(トヨタ・ガズーレーシング)のチーム代表でもある村田久武さん」

「もうひとりは、プロジェクトを始めた当初にモータースポーツ部の部長だった木下美明さんです。村田さんも木下さんも、ル・マンとの関わりが深くて長い。ハイブリッドを使ったレース活動をスタートしてずっと推進してきたのが、このおふたりです」

「とくに村田さんは2006年からずっとリーダーとしてプロジェクトを率いてきました。負けず嫌いな村田さんのリーダーシップがあったからこそ、初制覇までたどりついたのだと思います」

――世良さんは、『トヨタ ル・マン24時間レース制覇までの4551日』という本を上梓(じょうし)しましたね。4551日とは、いつからですか?

「2006年の1月1日からです。この年にトヨタは、ハイブリッドによるレース活動をスタートしたので」

――どんな内容ですか?

「2006年から今年まで、トヨタのル・マン挑戦の舞台裏を描いています。トヨタは、言い換えると初制覇するまで、負け続けたわけです。そのとき、チームのリーダーは何を思い、どう動いたか。スタッフになにを伝え、どう動かしたのか? そのあたりもストーリーの軸に置いています。そのリーダーが、村田さんというわけです」

(INTERVIEW:MotorFan.jp)

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「オマエら、なんのためにレースやっとるんや。勝つためにやっとるんやないんか」

 トヨタは、世界最高峰の自動車レース、ル・マン24時間レースに挑戦を続け、そして負け続けた。最高位は2位。ライバルに歯が立たない年もあった。残り5分までリードして最後の最後に負けた年もあった。その負け続けたチームを率いて、ついに今年、圧倒的な強さでレースを制した。その勝利の舞台裏には、チームをまとめ、鼓舞し、トヨタ式カイゼンを繰り返して勝利を呼んだリーダーの存在があった。
 
『トヨタ ル・マン24時間レース制覇までの4551日』
著者:世良耕太
発売日:2018年7月9日
定価:1620円(本体価格1500円)
商品紹介ページURL:http://www.sun-a.com/magazine/detail.php?pid=10315


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みんなのコメント

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  • caq*****|2018/07/09 19:27

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    F1ファンの視点から見ればアロンソを中心に置きたがるだろけど彼は3人の内のひとりに過ぎない。これは悪い意味じゃなくてやはりトヨタはトヨタドライバーに栄光を手に入れて欲しいと思っていたはず。アロンソもそこは理解していたはずだと思う。見せ場を作って、最後に一貴に渡す。チームプレイでやるのが耐久レースだからね。でもアロンソ本当に嬉しそうな顔してたな。レースって素晴らしいと思いましたよ。
  • jrh*****|2018/07/09 19:21

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    カズキにしろ小林にしろ、日本のトヨタだからこそ「ありき」のドライバー
    当たり前だが、外国のメーカーだったら二人とも選ばれてなかっただろう
    日本車のルマン制覇はすでにマツダがやり遂げているので、
    トヨタとしてはどうしても「日本車、日本人のルマン制覇」をやりたかったのだろう
  • eii*****|2018/07/09 20:06

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    バイクの鈴鹿8時間はもはやスプリントレースと呼ばれるようになっている。本当に24時間という長いレースは想像を絶する戦いだと思います。マシンのセットアップからドライバーの体調、戦略とピットタイムなど考えるだけでも恐ろしい世界だ。ほんとフランス人はすごい、耐久レース大好きなんだよね。ルマンの他にもボルドール24時間ってのもある。これはバイクだけかな?

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