現行の世界耐久選手権(WEC)LMP1クラスは2019~20年シーズンで幕を引く。2020/21年シーズンからは新しいレギュレーションのもとで新シリーズが始まり、より市販車に近いシルエットのクルマが主役として登場する。まだ呼び名は決まっていないが、スーパースポーツカーだとか、ル・マン・ハイパーカーだとか、GTプロトタイプと呼ばれることになりそうだ。
この新しいシリーズ、現行のシリーズと大きく変わる点はより市販車に近づいたスタイルになるということ。ちょうど1990年代終盤に登場したFIA・GT選手権の参加車に似たクルマになるかもしれない。当時注目の的だったのはメルセデスGT1。外観は市販車CLKのスタイルだが、中身は強烈なレーシングカーだった。
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この新シリーズの指針を決めたのは、9カ月にわたるACO(フランス西部自動車クラブ)、WEC、FIA、自動車メーカー、チームによる討議。その結果、性能的に現行のLMP1ハイブリッドに近いモノになり、ル・マンのラップタイムは3分20秒前後を予想しているらしい。技術的にはフロントにKERS(運動エネルギー回生システム)を搭載したハイブリッドの4輪駆動。これは市販車との技術共有を進めることに繋がる。技術レギュレーション設定に参加した自動車メーカーはトヨタ、マクラーレン、BMW、ポルシェ、フェラーリ、アストンマーチン等だ。
このコンセプトに沿ったクルマの開発はあちこちで聞かれるが、実際にはまだどこのメーカーも研究段階。その中で最も早くプロトタイプを披露したのがトヨタで、今年のオートサロンで発表したGRスーパースポーツがそれだ。ル・マンではトヨタの記者会見の席上、本社副社長でガズーレーシング・カンパニーの友山茂樹社長が紹介した。
このトヨタの取り組みに、ピエール・フィヨンACO会長はこう言う。
「まず最初に、私はこのクルマの美しさが好きです。素晴らしいシェイプです。このエクステリアこそ我々が新しいルールのもとで求めているものです。シャシーは現行のTS050 HYBRIDと同じで、ボディワークが異なります。これこそ我々が求めるそのものなんです」
「トヨタは2020年以降の新シリーズに参戦することを発表しましたが、他にも多くのメーカーが興味を持ってくれています。我々は過去9カ月に渡って議論してきました。経費削減を掲げますがハイブリッド・システムの採用を決定し、自動車メーカーが参戦する意味があると同時にプライベート・チームも参加しやすいようにしています」
FIA・WECのジェラルド・ヌブー代表も同意見だ。
「トヨタが発表したGRスーパースポーツは素晴らしいクルマだ。我々はトヨタが最後のメーカーになってもWECに残ってくれて、今回ル・マンに出走してくれていることに感謝している。トヨタはこれまでもル・マンに一定のサイクルで参戦してくれていた。そのトヨタが新シリーズへの参加も発表してくれ、それに続く自動車メーカーが出て来ることを期待している。我々は非常に楽観的だ」
「今回トヨタが扉を開いてくれたが、7年前に彼らがハイブリッド・システムを持ち込んだ時とまったく同じ状況だ。トヨタは常にイノベイティブだ」
2020年からの新シリーズは、まずトヨタが扉を開いた感がある。多くのメーカーがトヨタに続くことになるだろう。
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