トヨタのル・マン挑戦は過去19回行われ、20回目にして初めて勝利を手に入れた。ハイブリッド車での挑戦も2012年に始まり、今年で7年目。やっと勝てた。ル・マンは簡単には勝たせてくれなかった。
ハイブリッド車でのル・マン挑戦をずっと見続けてきた身としては、今回の勝利はこれまで溜まった鬱憤を吐き出す場になるはずだった。喜びが爆発し、天にも舞い上がる気持ちになれるはずだった。しかし、実際にはそうはならなかった。
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レースが進み、勝利が確信されてくると、気持ちが妙に落ち着いてきて、心の中にあったはずの爆発物はどこにも見当たらなくなった。そして、チェッカーフラッグ。ああ、終わった、という感情が湧いてきただけだった。
トヨタで、TMGで、同じように永年ル・マン勝利を願って働いてきた人たちも、勝利に対してそれほど爆発はしていなかったように思えた。感激に涙しているのは、ル・マン・プロジェクトに携わってそれほど時間の経っていない人ばかりだった気がする。なぜだろう?
ひとつには、永年勝利を待っている間に、待つことに慣れてしまったからではないか。
「また勝てなかった、来年こそ」
「また勝利を逃した、次は必ず」
そうして7年。その間に待つことに慣れ、耐えることに慣れ、我慢することに慣れた。そして我慢は、勝利した今も気持ちの中に存在し、喜びを爆発させることを抑えようとしている。喜びを自らの内側に向けて爆発させるだけだ。
トヨタのル・マン勝利は文句なく偉大な勝利だ。だが、この勝利がしっかりと認識されるのは、少し時間が経ってからではないか。つまり、ル・マンの歴史の中でそれが語られ始めた時のような気がする。
ポルシェはハイブリッド車でつい最近ル・マンを勝利している。それも2度も。しかし、ル・マンでのポルシェの勝利が語られるのは、歴史の中に埋もれかかった20世紀の話ばかりだ。21世紀の勝利はまだ語られることを拒んでいるかのようだ。
トヨタの勝利もおそらくポルシェのそれに似て、いま暫く時間が必要なのだろう。そして、勝利の現場で喜びを爆発させることの出来なかったトヨタのスタッフや、そして我々も、時間が経った中で、ル・マンの歴史を語る中で、改めてトヨタの勝利を認識するのではないか。
「あのとき、私たちはル・マンに勝ったのだ」と。
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