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ベルガーが語るDTMの18年とこれから「魅力あるレースの提供を続ける」

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ベルガーが語るDTMの18年とこれから「魅力あるレースの提供を続ける」

 2018年限りでメルセデスAMGが撤退し、19年からはアウディとBMWの2社によって争われることになるDTMドイツツーリングカー選手権。シーズン開幕を前にした4月20日、ミュンヘンで『シーズン・ウォームアップ』と題したイベントが行われたが、このなかでDTMを運営するITR e.Vのゲルハルト・ベルガー代表が、ITR招待メディアの質問に答え、シリーズの今後とスーパーGTとの交流戦等、多くの質問に答えた。その一問一答をご紹介しよう。

■我々は自信をもってDTMを運営している
──「DTMはすでに滅びている」、「近々終焉を迎えるのではないか」という声も周囲からは聞こえているが、そのような世間の声に対してはどう考えるか。
ゲルハルト・ベルガー(以下GB):「滅びる」ということは長い活動を終えた後に出てくる言葉で、DTMはそこまで長い歴史はまだない。私も含めて、ITR e.Vのメンバーが一新され、いままさに新生DTMを築いているときに、終焉などということを考える気は毛頭ないよ。2019年にメルセデスがDTMから撤退するが、それがDTMの終わりを決定づける意味合いではない。

2020年クラス1実現に向け動き本格化。“ファイナル”はGT500も統一エアロ

──以前にもオペルが撤退して、6年間をアウディとメルセデスの2メーカーでシリーズが展開したときは、ファンも離れずうまく機能していたが、今の時代も同じようなフォーマットで、メルセデスが去った2019年以降も運営できるのか? それとも別案を用意する必要があるのか?
GB:2019年以降のアイデアについては、アウディとBMWは非常にDTMに対して協力的だし、支えてくれている。DTMは自動車メーカーがモータースポーツを通したプロモーションを行うために、ベストなプラットフォームだと考えている。そしてドイツ国内に留まらず、インターナショナル化へと動き始めているので、もちろん望むところは新たなメーカーの参戦だが、それに対する話し合いの機会はITRやDTMとしても喜んで受け入れてるし、さまざまな話し合いを重ねる上で、新たに見えてくるものや発見もある。メルセデスが抜けた後の運営に関しては、すでにハードワークが続いているが、今まで経験してきたさまざまな役職の経験から、そんな状況には慣れているし、私個人はまったく問題なく前向きに捉えている。

──それでも現時点で、他に参戦を希望する新たなメーカーが現れないということは、DTMの組織に何か問題があるのではないか?
GB:DTMが第一に課していることは、魅力あるレースを提供することであって、それに対して懸命に努力をしている。新たなメーカーが参加する、しないというのはDTMが病的におかしな組織だからということではないと断言できる。我々は自信をもってDTMを運営しているし、私がドライバー時代だった最盛期のF1の時のような、満員の観客で溢れるホッケンハイムを観る限り、DTMが消滅しかけているとはとても思えない。多くのファンが楽しみにしてくれている、こんな盛況な状況でなぜメルセデスが撤退を決めたのかが疑問なところだが、大メーカーの指針転換は誰にも変えることができない。
■日本メーカー参戦の意志はない。交流戦という目標は早期に
──2019年は、恐らく過渡期としてアウディとBMWの2メーカーで運営するDTMになると思うが、希望すれば2019年から新メーカーやチームの参戦は可能なのだろうか?
GB:DTMのシステムは非常にシンプルだ。参戦したいメーカーは今から準備して、2019年に参戦ができる。それほどフレキシブルな組織だ。実際それに対応できるように、2019年用の詳細なレギュレーションもすでにでき上がっている。

──DTMは現在ワークスチームで運営されている。ここにワークスドライバー以外のプロやプライベーターが参入することができるのかどうかを教えてほしい。
GB:すでにこのテーマに関しても、話し合いはすんでいる。プライべーターの参入は大歓迎だし、プライベーターがワークスから購入する、または借りるマシンやパーツは型落ちのものではなく、ワークス同様に最新のものを使用しなければならない。プライベーターにも実力次第で優勝する可能性があるというのが条件だ。そうすれば、ワークスチームやドライバーもうかうかしていられない状況になり、レースが面白くなる要素のひとつだと考えている。これも私の手がけるDTMの課題のひとつで、ザクスピードやアルピナ、シュニッツァー等が活躍していた昔のDTMのように、メーカーがワークス活動と並行して数多くのプライベーターをサポートして賑わっていた時代を取り戻したいんだ。そして、メーカーやチームの枠に捕らわれず、ポテンシャルを発揮したチームやドライバーに平等にチャンスが与えるという条件を作ることなのだ。

──昨年のDTM最終戦ホッケンハイムでは、日本からニッサンとレクサスがゲストとして来独して念願のパレードランが叶い、スーパーGT最終戦もてぎではDTMが招待され、同様にDTMマシンの日本での初お披露目が叶い、両国で大盛況となったが、日本メーカーのDTMシリーズ参戦はあるのか?
GB:日本のメーカーがDTMにシリーズ参戦するという意思は、残念ながらまったくない。それと同様に、ドイツのメーカーがスーパーGTに参戦する意思もない。しかし、クラス1のレギュレーション共通化により、レース形態は違えども、日本とドイツで同じ基準のマシンが走ることによって日独合同のレースが開催できるという条件が揃うんだ。日独の交流戦を開催するということが今のいちばんの目標だし、この目標はかなり早くに達成できると考えている。現在も引き続き、さまざまな詳細をどちらの国のレースの基準に合わせるか、ということはポジティブな方向で話し合っている。

──今季のDTMマシンは30%の空力削減を課したが、クラス1ではさらにそれを削減する予定か?
GB:それはない。日本からはアンダーボディの基準に関してなど、細かい提案がいくつかあるのは事実だが、それらの小さなことについては特に大きな問題視はしていないし、ITRとGTアソシエイションの話し合いで必ず解決する問題だ。2019年のDTMのエアロダイナミクスのレベルは今季のモデルとほぼ変更はないが、来季からDTMに新たに導入する4気筒ターボエンジンのポテンシャルレベルは、現行エンジンよりも飛躍的に上がるだろう。
■「DTMのコストはGT3なみ」
──DTMでは数年前からコスト削減が提言されているが、具体的にコスト削減とはどういう面で行われているのか?
GB:私はF1というまったく違う世界から来たので、DTMの共通パーツのシステムにはとても共感している。F1の開発費用は天井知らずで、各自が好きなようにバジェットを費やせる世界だが、それをF1以外のモータースポーツでやってしまうと成り立たなくなる。共通パーツを使用することで、その開発費用はかなり削減されているんだ。DTMに参戦するメーカーやチームに費用面で正常な運営を促すには必要不可欠なシステムだと感じているし、共通パーツを使用するにしても、エンジンは独自開発が可能な部分があるので、メーカーの個性がなくなるわけではない。その分、性能調整やパフォーマンスバラスト等の部分は排除して、純粋にチーム力やドライバーの腕で勝負させる方が重要だと思っている。

──DTMのおおよその開発や運営費の金額は教えてもらえるのだろうか?
GB:具体的な金額の提示は控えるが、DTMの開発費用の目安はGT3と同レベルだと言える。それほどに敷居が低いのだ。世間ではDTMに必要な金額は300万~500万ユーロ(日本円約4億~6.6億円)が必要だと噂されているのは知っているが、決してそんなことはない。DTMにおいて共通パーツの採用を今後も続けるには、モータースポーツにおいて政治的な部分を払拭する目的もあるのだ。パーツを自由化すると、恐らくメーカーはあの手この手とレギュレーションの抜け道を探るべくいろいろな裏の手を考えてしまう状況になり、悪循環に陥ってしまう。それによってメーカーは開発にどんどん費用を費やす羽目になってしまうからね。

──GT3の話題が出たが、日本のようにGT3マシンをDTMで走らせることは構想の中にあるか?
GB:まったくない。GT3とは、私にとってはカスタマーのためのレーシングカーという位置付けで、完全なプロレースのDTMと、GT3はまったく別のカテゴリーだと考えている。アマチュアやセミプロも参戦するGTレースの中で、バランス・オブ・パフォーマンス(BoP)で性能を調整されることには異議はないが、DTMとはプロドライバーのみが参戦するカテゴリーなので、プロにBoPやサクセスバラストを課す必要性はないと考えている。

──DTMにおける自動車メーカーの役割とは?
GB:DTMに参加する自動車メーカーは、テクノロジーにおいて自動車業界を率いるような立場でなければならないと思っている。DTMに参戦するマシンのベースとなるモデルは、アウディRS5、BMW M4、メルセデスベンツC63 AMGのように、3メーカーを代表する最先端のテクノロジーが搭載された素晴らしいハイパフォーマンスカーであることは言うまでもない。それを買い求めるユーザーは、決してそのハイテクノロジーだけに惚れ込んで購入するのではなく、よりスポーティな走りを楽しみ、クルマからダイレクトに得られるエモーショナルなフィードバックを期待している。それにはDTMを通じたプレミアムブランドのイメージ戦略は非常に重要になるし、販売戦略も活性化させる。それらのクラスを所有しようとするユーザーにとっては、自動車=単なる移動手段ではない。車体価格が安くて、動けば良いというような自動車を作るメーカーは、DTMには相応しくないのだ。

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