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【崖っぷち折原コラム】若年化が進むスーパーフォーミュラに挑むオールドルーキー、千代勝正の本音と手応え

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【崖っぷち折原コラム】若年化が進むスーパーフォーミュラに挑むオールドルーキー、千代勝正の本音と手応え

 3月12-13日、鈴鹿サーキットで行われたスーパーフォーミュラの合同テスト。1日目のテスト終了後に、B-Max Racing teamが今季のドライバーを発表した。千代勝正、30歳を超えるルーキーが誕生したのだ。

「5年前は必死にシートを探したのに、全然手が届かなかったのに。決まるときはあっさり決まるもんですね。」と、千代はなんとも微妙な表情で呟いていた。

【タイム結果】スーパーフォーミュラ2018年第2回公式合同テスト/3月13日午後

 ルーキーとしてスーパーフォーミュラのマシンに乗るとなれば、真っ先に気になるのが体力面だ。そのことをぶつけると、「『いつチャンスがあるかわからないから、準備だけはしておけ』って本山(哲)さんに言われていたので、なんとかなっています。でも、想像以上だったので全然、足りていませんけど(笑)」と、はにかむように教えてくれた。

 今のスーパーフォーミュラは、ハイダウンフォースでコーナーが速い。コーナリングスピードだけみれば1年前のF1並だ。

 同じルーキーでも松下信治や福住仁嶺、平川亮はGP2やLMP1でそのスピードを体感している。対して千代はキャリアのほとんどをGT系のレースで積んできた。彼にとっては、経験のないスピードでコーナーに飛び込まなければならないわけだ。

 千代以外は、全員そのスピードを経験している。これは相当なハンデだろう。実際に初日は2~3秒の単位でライバルたちから遅れていた。

 それでも「こんなタイムでも、首とかヤバそうなんですよ。これでタイムが上がったら、どうなっちゃうんでしょうね」と語る表情は、新しい玩具を与えられた子供のように笑みが溢れていた。

 今のスーパーフォーミュラマシンに乗るにあたり、ドライバーにとって大事な能力について聞くと誰もが同じように言葉を返す。ただ、B-Max Racing teamの監督となった本山が面白い話をしてくれた。

「たとえば、予選のタイム差が0.1秒だったとしても、レースが終わる頃には30秒、下手すれば1分近く差がつく。それは、その0.1秒をどう捉えるかなんだよね。本当に0.1秒しか差がないのか、実は大きな差があるのか。そこを見極められるセンスが大事なんだよ」と本山。



 感覚としてしか理解できなかったが、さすがに日本一速い男の名を継承するドライバーの言葉だと感心させられる。

 そのセンスを千代に感じたのかと本山に聞くと。「まだ1日しか乗ってないわけだから、わからない。ただ、GT500でもトップタイムを出してくるし、フォーミュラに乗りたいと言うハングリーさは買いだよね」と話した。

 とは言え世の中、そんなに思うように行くわけもなく、千代は2日目のテスト終盤まで思うようなタイムは出せないままトラブルからかコースアウトしてしまう。

 今回の千代のチャレンジもここまでかと思い、僕はコースに撮影に出た。すると陽が傾きかけた頃、ゼッケン50の千代が走り始めた。その時は「ようやくクルマが直ったのか」くらいしか思わず、撮影に没頭した。

 すべてのテストスケジュールが終わり、コースから歩いてピットに戻る。千代はどんな表情でテストを終えたのか気になり、ピットを覗いて見た。すると、チームの雰囲気がワントーン明るくなっているように思えた。

 千代も、それまでの緊張した面持ちとは打って変わって充実した顔つきだ。

 何事か聞いてみると、タイムを一気に詰めたとのこと。12番手タイムをマークし、「良いテストになったみたいだね」と話しかけると、「ええ、得るものの多いテストになりました。でも何より最後にタイムを出せたのが良かったです。やっぱりタイムを出して、ドライバーがチームを引っ張らないとダメですよね」といつもの力強い眼差しで話した。

 ダテに海外で揉まれてきたわけじゃない。耐久チャンピオンとなり、GT500でメーカーのニッサンの看板を背負っているドライバーだ。どうすればチームが盛り上がり、自分を向いてくれるのかは、しっかりとわかっている。

 本山監督の助言も大きかったと思うが、たった1日半乗っただけでタイムを大きく更新してチーム全体に「やれる」と思わせた。そしてその事を意識してやってのけたのだ。

 小林可夢偉が昨年KCMGに移籍して、1年でトップチームに並ぶ速さを見せ始めた。今年は千代、本山の子弟コンビがB-Max Racing teamをトップの一角に押し上げるかもしれない。そんな戦国模様の展開を想像するだけで、今からスーパーフォーミュラの開幕が楽しみになる。

——————————–
折原弘之 1963年1月1日生まれ
1980年の東京写真専門学校中退後、鈴鹿8時間耐久レースの取材を皮切りに全日本ロードレース、モトクロスを撮影。83年からアメリカのスーパークロスを撮影し、現在のMotoGPの撮影を開始する。90年からMotoGPに加えF1の撮影を開始。現在はスーパーフォーミュラ、スーパーGTを中心に撮影している。

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