コンセプトモデルの発表以降、世界的な注目を集め、「スーパーGT」GT500クラスでは2014年にホンダのベース車両として登場したホンダNSX。日本での市販車リリース開始は昨年2月。塚越はNSX納車後、クルマで移動できるサーキットにはNSX+スーツで移動している。
「NSXはホンダを代表するスポーツカー。僕たちはそのクルマでレースをしている。だから、市販化される話を聞いたときから、自分のお金で購入して、所有すると決めていました。僕は、プロのレーシングドライバーはまわりの方々から『プロのレーサーってすごいな、カッコいいな』と思われないといけないと考えています。モータースポーツの人気やステータスは野球やサッカーのそれらと比べるとまだまだですが、たとえば一流の選手が一堂に会する機会があったら、NSXで乗りつけて、『プロのレーサーはカッコいいね!』という印象を残さないといけない。レースでも街中でも。レースで結果を残してこそですが、一流のアスリートという見方をされること。それは、トップドライバーの責任でもあると思います。スーツで移動するようにしたことも同じ思いからです」
すさまじいデザインへのこだわり。ホンダNSXとコラボする『セイコー アストロン』スペシャル限定モデルを最速チェック
スーツでの移動は2年目ということで、「自分のスーツスタイルはいまも模索中」という塚越だが、「スマートに見えること」を意識しているという。
「あまりごちゃごちゃしないようにしています。そのかわり、ちょっとしたアクセントとなるアイテムをワンポイントで入れて、トータルでスマートな感じを出せるように。ネクタイ、タイピン、そして時計。その意味でも、今回の〈セイコー アストロン〉のNSXコラボレーションモデルにはとても興味があるんですよね」
〈セイコー アストロン〉もHonda NSXも、世界の時計史と自動車史において重要な一章を占める。セイコーがプライドとリスペクトを込めて送り出したのが、SEIKO ASTRON Honda NSX Limited Editionだ。
「〈セイコー アストロン〉のNSX限定モデルを初めて見たとき、ここまでNSXに寄せたということにかなり衝撃を受けました(笑)。裏ぶたはホイール、文字盤はグリル、りゅうずはインテグレーテッド・ダイナミクス・システムのダイヤル、ストラップはインテリアの『Black and Red』のコンビネーションカラー、ストップウオッチボタンはアルミ製のスポーツペダルがそれぞれモチーフですし、ベゼルの『308』という数字や10時位置側面の『CMH』というアルファベット3文字などはそれぞれ、NSX欧州仕様の最高速度、米オハイオの工場のある都市圏の空港コードだと教えてもらって初めて分かりました(笑)。ケースは純チタン製ということで、非常に軽くて着け心地もいい。なによりルックスが目を引きますよね」(塚越)
今回のNSX限定モデルにおいて、セイコーがここまで徹底的にNSXの世界観を追求したことには理由がある。それは、〈セイコー アストロン〉がセイコーのヒストリーを綴るうえで極めて重要なモデルの遺伝子を受け継いでいるからだ。
話は1969年まで遡る。いまでこそ腕時計で一般的となったクオーツ式(※)だが、それまで腕時計では機械式(ぜんまい式)しか存在しなかった。
しかし69年、セイコーが世界で初めて腕時計でクオーツ式を登場させる。それが〈クオーツ アストロン〉。時間精度で機械式をはるかに上回るクオーツ式の腕時計は瞬く間に普及。世界の人々のライフスタイルを一変させる“クオーツ革命”とも言うべき出来事だった。
その先進性追求というアティテュードを受け継ぎ、世界初のGPSソーラーウオッチとして2012年に誕生したのが〈セイコー アストロン〉なのである。〈セイコー アストロン〉は光エネルギーを動力源とし、地球上のどこにいてもGPS衛星の電波を受信後すぐにタイムゾーンを修正。現在地の正確な時刻を表示する。そうしたバックグランドが、NSX限定モデルでも一切の妥協を許さなかったのだ。
「スーツにも合うような大事な時計をひとつかふたつ、メンテナンスしながら使っています。年式が誕生年と同じのものを探してみたりもしていますが、ストーリーがあると愛着も湧きます。ですから、今回のNSX限定モデルは、NSXが好きな方、時計を大切に使ってくれる方に選んでほしいですね。それくらい、NSXの世界観と、〈セイコー アストロン〉という時計の由来や歴史が詰まっていると思います」
※クオーツとは、水晶振動子に電圧をかけることで規則正しく振動する性質を利用して調速を行なう、電池を動力源とした機構。1秒間に32,768回という水晶振動子の振動をIC回路が正確に検知し、1秒に1回の電気信号に変換。その電気信号によってステップモーターが歯車を動かし、秒針が1秒進むというメカニズム。
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