加速を控えめにし、素直なドライブフィールを実現
BMWの電動モデル(BEV)専用ブランド「BMW i」が、ローンチからちょうど十年の節目を迎えた昨年。BMW iは、本格的なBEVブランドとしていよいよ第2ステージを迎えた。その手始めとして、SUVのiX3に4ドアクーペのi4、そしてフラッグシップのiXという3モデルを発表し市場へ導入し始めている。
中でも注目すべきはiXである。他のエンジン車とベースを共有する2モデルとは違って、iXのみBEV専用のプラットフォームを使っているからだ。全長は5m近く、ホイールベースも3mというから、日本では大型SUVの部類に入る。車名にXが入っているからこちらとしてはSUVという認識になるが、悪路を平然と走破するような物々しさや図々しさなどはまるでなく、ユニークなマスクとシンプルな面構成のエクステリアのためか、デザイナーズカーといった印象の方が強い。
最も好みの分かれるところは、かつてなく縦長(戦前のモデル並みか?)となったキドニーグリルだ。キドニーグリルあってこそのBMWデザインなのだから絶対に必要なことは分かる。とはいえ、BEVだからもはやエアの取り入れ口としての機能性はない。では、なぜ大きくする必要があったのか。
それは決してデザインのためではなかった。最新モデルに不可欠な装備類、例えばカメラやレーダー、センサーなどを裏に装備するために大きくなったのだ。このあたりの事情はエンジン車でも同じで、BMWに限らず似たりよったりである。 ある意味、好みの別れるエクステリアデザインよりもインテリアの方がiX最大の魅力だろう。見た目には、ほとんどコンセプトカーのような雰囲気である。BMW車が今後すべてこのデザイン文法になるとは思えないし、スポーティさを忘れてほしくもないけれど、シートやコンソールまわりのモダンファニチャーのようなあつらえは女性ユーザーを中心に多くの賛同者を得ることだろう。
ディテールの凝りようも楽しく新しい。巨大なコクピットディスプレイはBMWの伝統にのっとってドライバーオリエンテッドに曲げられている。今後の主流となるだろう、カーブドディスプレイだ。ステアリングホイールも個性的な六角形。このところのジャーマンBEVはクラシックなハンドルからの脱却を図りたいようだ。
その他スイッチやレバーなどの操作系ディテールもひとつひとつが極めてモダンにデザインされており、これまでのコックピット機能部品とは一線を画している。 iXには、2種類のパフォーマンスと3グレードを用意した。いずれも、前後に電気モーターを備えた四輪駆動モデルである点が、SUVスタイルながらFRのiX3とは異なる。
システム総合出力523psをうたう上級グレードのxDrive50に試乗した。まず驚いたのが重厚感あふれるライドフィールだった。BMWらしくない、というと語弊があるかもしれないが、少なくとも今までのエンジン搭載BMWと同じようなドライブフィールの車ではなかった。従来のように機敏で思いのままのハンドリング性を提供するのではなく、素直に心地よく走り抜けることを重視した動的パフォーマンス、とでも言おうか。だから「駆け抜ける歓び」で育った筆者のような昔ながらのBMWファンは、“あれれ?”っと驚くほかなかったのだ。
BEVらしく加速パフォーマンスはすさまじい、と言いたいところだけれど、これまた抑え気味である。必要十分な速さだ。テスラのように思わずのけぞるほどの加速ではない。実はそれもまた運転しやすさ=素直なドライブフィールにつながっている。とびきりの加速は高性能モデルに特化したBMW MブランドのBEVにとってあるのだろうか。ともあれ、実用域におけるノーマルなモデルたちにスーパーカーのような強力なダッシュなど必要ないことは明白だろう。
結論を言うと、BMWはiXでラグジュアリーの新境地を開こうとしたのだと思う。自ら運転を楽しむ時代から、移動そのものを快適に過ごす空間への転換、とでも言おうか。生粋のBMWファンには嬉しくない傾向かもしれないが、ラグジュアリーセグメントに身を置くハイブランドとして、次世代ラグジュアリーカーのあり方をにらむ重要な布石になるモデルであると思う。 BMW iXのカタログを見る文/西川淳、写真/柳田由人【試乗車 諸元・スペック表】●xドライブ50 4WD型式ZAA-22CF89A最小回転半径6m駆動方式4WD全長×全幅×全高4.96m×1.97m×1.7mドア数5ホイールベース3mミッションその他AT前トレッド/後トレッド1.66m/1.69mAI-SHIFT-室内(全長×全幅×全高)-m×-m×-m4WS◯車両重量2530kgシート列数2最大積載量-kg乗車定員5名車両総重量2805kgミッション位置不明最低地上高0.2mマニュアルモード-標準色アルピン・ホワイトオプション色ミネラル・ホワイトメタリック、ソフィストグレーブリリアントエフェクト、ブラック・サファイアメタリック、ファイトニック・ブルーメタリック、ストーム・ベイメタリック、アヴェンチュリン・レッドメタリック、ブルー・リッジ・マウンテンメタリック掲載コメント-型式ZAA-22CF89A駆動方式4WDドア数5ミッションその他ATAI-SHIFT-4WS◯標準色アルピン・ホワイトオプション色ミネラル・ホワイトメタリック、ソフィストグレーブリリアントエフェクト、ブラック・サファイアメタリック、ファイトニック・ブルーメタリック、ストーム・ベイメタリック、アヴェンチュリン・レッドメタリック、ブルー・リッジ・マウンテンメタリックシート列数2乗車定員5名ミッション位置不明マニュアルモード-最小回転半径6m全長×全幅×全高4.96m×1.97m×1.7mホイールベース3m前トレッド/後トレッド1.66m/1.69m室内(全長×全幅×全高)-m×-m×-m車両重量2530kg最大積載量-kg車両総重量2805kg最低地上高0.2m掲載用コメント-エンジン型式HA0002N0 / HA0001N0環境対策エンジン-種類電気モーター使用燃料電気過給器-燃料タンク容量-リットル可変気筒装置-燃費(10.15モード)-km/L総排気量-cc燃費(WLTCモード)-燃費基準達成-最高出力258ps最大トルク/回転数n・m(kg・m)/rpm290(29.6)/5000エンジン型式HA0002N0 / HA0001N0種類電気モーター過給器-可変気筒装置-総排気量-cc最高出力258ps最大トルク/回転数n・m(kg・m)/rpm290(29.6)/5000環境対策エンジン-使用燃料電気燃料タンク容量-リットル燃費(10.15モード)-km/L燃費(WLTCモード)-km/L燃費基準達成-
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みんなのコメント
こんなもんを「次世代のラグジュアリー」とか、外車ヨイショも大概にしろと言いたい。
1000万円以上払って、貧相なステアリングを握った時、何を感じるのだろうか位書いたら良いのに。