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価値あるミドルセダン──新型キャデラックCT5試乗記

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価値あるミドルセダン──新型キャデラックCT5試乗記

キャデラックの最新ミドルセダン「CT5」に小川フミオが試乗した。ライバルに対するアドヴァンテージは?

活発な走り

セクシィなスポーツ・サルーン──新型メルセデスAMG・E63 S 4MATIC +試乗記

2021年1月16日に日本発売が始まったキャデラック「CT5」。アメリカ車の最高級ブランドであることはよく知られているけれど、いまのキャデラックはドイツ車のような性能を持ち、装備は豊富。かつ、CT5は日本の路上でも扱いやすい。

CT5は、日本に導入ずみのCT6の下に位置づけられるセダンだ。最大の特徴は「若いユーザーによさをアピールしたい」と、日本ゼネラルモーターズが言うところ。それだけに、ハンドリングのよさと、クーペ・ライクといわれる躍動的なシルエットと、そして高品質のオーディオなど快適装備の充実ぶりは、特筆点だ。

試乗したのは「CT5プラチナム」。全長4925mmのボディに、1997cc直列4気筒ガソリンターボ・エンジンを搭載する。同時発売された「CT5スポーツ」とのちがいは、スポーツが全輪駆動であるのに対してプラチナムは後輪駆動方式を採用している点だ。

活発に走る、というのが総じての印象だ。とりわけ運転が好きなひとなら飽きないだろう。177kW(240ps)の最高出力と、350Nmの最大トルクを持つエンジンは、このクルマに充分、いや、それ以上。

アクセルペダルの踏みこみに敏感に反応するし、ステアリングはシャープだし、ドライバーとの一体感が強い。

ドライブモードセレクターが備わっていて、プラチナムのばあい、「スポーツ」「ツーリング」「雪/凍結」「マイモード」が選べるようになっている。雪は出力をしぼるモード、マイモードは、ステアリング・ホイールをまわすさいのパワーアシスト量の増減や、変速タイミングなどを好みで設定できる。

プラチナムのばあい、スポーツモードにすると、シフトアップのタイミングが遅れ、エンジン回転を3000rpmから上まで引っ張るようになる。サウンド(吸気音を思わせるエンハンスしたもの)もけっこう勇ましい。

上りと下りが連続するようなワインディングロードでは「スポーツ」モードはかなり楽しそう。でも東京の市街地では「ツーリング」で充分というのが私の感想だ。

低い回転域でも、加速性はじゅうぶん。路面の凹凸などをきれいに吸収する快適な乗り心地のこのクルマのキャラクターによく合っている。より積極的に走りを楽しみたいひとには4WDの「スポーツ」がいいと思う。

素晴らしいオーディオ・システム

シートの座り心地もよく、自動車専用道を巡航すると、米国うまれのセダンの美点がしっかり出ていると感じる。長い距離を疲れないで走っていきたいひとには、とてもよい選択になるだろう。

後席スペースもじゅうぶん広い。それでも、ファストバック的な印象のシルエットなど、いまのセダンのトレンドであるクーペ・ライクなスタイルだ。近年、ひとりかふたりで乗ることが多いひとは、4ドアセダンでもパーソナルな雰囲気を好む傾向になるという。CT5はそんな嗜好にぴったりなデザインだ。

私がもうひとつ、興味ぶかかったのは、オーディオだ。ボーズ社の「Performance Series サラウンドサウンド」という15スピーカーのシステムが標準で組み込まれている。このシステムの音づくりが、クラブっぽい。かなりの低音が強調されているのだ。

私はまずスライ&ザ・ファミリーストンの『There’s a Riot Goin On』(1971年)をかけてみた。リミックス盤なので、それなりにインパクトのある音であると思ったものの、そのあと試しにとテイムインパラの『The Slow Rush』(2020年)を聴いた。

すると、まさにいまっぽい音。ドンドンッと低音が響く。テイムインパラはこんなサウンドを作ろうと思っていたのか? と、CT5に乗って初めて知った。家のオーディオシステムでは(ある意味)品よく聴こえすぎたのがわかったほどだった。

ユニークなのは、オーディオのコントローラーだ。インフォテインメントシステムは基本的に10インチのモニターコントローラーで操作するものの、オーディオのオン・オフやボリュウムだけは、物理的なダイヤルでおこなう。私は車内で音楽を聴くことが多いので、便利なシステムであると思った。

高い価格競争力

HDカメラやレーダーおよび超音波センサーによる安全運転支援システムは充実している。CT6でいちはやく搭載したデジタルタイプのルームミラーをCT5も採用した。

ナビゲーションシステムにも感心した。ゼンリンと共同開発のDR(自律航法)マップマッチング対応のクラウドストリーミングナビなので、地図の更新が早く、かつ正確なのだ。2019年の当初はいまひとつ動きに問題があったものの、いまや使い勝手ばつぐんである。

CT5プラチナムの価格は560万円。ボディサイズではメルセデス・ベンツ「Eクラス」やBMW「5シリーズ」、アウディ「A6」に近いものの、価格ではメルセデス・ベンツ「Cクラス」やBMW「3シリーズ」、アウディ「A4」に近い。

ちなみに、さいきん乗ったセダンで感心したのがアウディ「A4」だった。ガソリンとディーゼル、ふたつのパワートレインがあり、どちらも気持ちよく走るクルマである。

A4セダンは全長が4760mmとCT5よりコンパクト(サイズ的には4940mmのA6のほうが近い)であり、駆動方式も前輪駆動(4WDのクワトロもラインナップ)であるいっぽう、価格は「A4 35TDI アドバンス」で538万円、「同S line」で585万円。さらにCT5と同等のオプションをつけると、価格はそれ以上になる。

4WD対決では、CT5スポーツの620万円にたいして、A4 45 TFSI quattroは580万円。ただしやはり、オプションで価格差は逆転してしまう。つまり、CT5の価格競争力は高いのだ。

560万円のセダンが若いひとむけかどうか? 価格的にはやや疑問も残るものの、少なくとも、気持ちが若々しくなることはたしかだ。その意味では60歳をすぎていても、じゅうぶんに乗る価値がありそうだ。

左ハンドルしか設定がないので、ユーザーを限定してしまうかもしれないのが残念だけれど、駐車場などで一瞬の不便さをガマンできるなら、私はクルマ好きに勧めたい。

文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)

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みんなのコメント

1件
  • せめて、価格設定が税込み500万円にしてくれないと買う気になれない!
    600万円も出すくらいなら、400万円の車と200万円の車を1台ずつ買いますよ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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