クルマ遍歴の中では少数派に位置するBMW
名作『サーキットの狼』や『サーキットの狼II モデナの剣』でカーマニアたちを魅了した池沢早人師先生。昭和では「スーパーカーブーム」を巻き起こし、平成では「輸入車ブーム」の立役者を演じた希代の漫画家であり、自らもカーマニアとして70台を超えるクルマを乗り継いできたという。さらにはポルシェ・カレラカップジャパンでは初代シリーズチャンピオンを獲得するなどレーサーとしても腕を振るう。
池沢早人師が愛したクルマたち『サーキットの狼II』とその後【第16回:BMW M4 クーペ】
一般的には「池沢早人師=イタリアンスーパーカー」のイメージが強いものの、趣味であるゴルフの足として利便性の高いセダンやクーペを乗り継ぎ、その守備範囲は広い。特にポルシェ 911やメルセデス・ベンツAMGなど、質実剛健なドイツ車にも造詣が深く、最近まではBMW M4 クーペを趣味の相棒として従えていた。今回は、池沢先生と共に趣味の相棒として活躍していたBMW M4 クーペにスポットを当て、その魅力について迫ってみたいと思う。
“M”のエンブレムに秘められた特別な思い入れ
ボクが自動車免許を取得してから半世紀以上になる。その間に所有したクルマは正確に把握できていないけど軽く70台は超えていると思う。その多くは欧州車で、国産車はトヨタ 2000GTやニッサン フェアレディZ、ニッサン GT-R(R32)、ホンダ NSXなど僅かに数台だけ。
メーカーで言えばフェラーリやポルシェが多く、一般的に呼ばれるスーパーカーが多いよね。基本的にはTPOに合わせて複数台を所有するのがボクのスタイルで、ドライブを楽しむクルマと趣味のゴルフや日常生活を支えるクルマを分けている。前はゴルフの行き帰りにも走りを楽しむんだとフェラーリなんかで出かけていたときもあるんだけどね。
一般的に「スーパーカー」と呼ばれるクルマはスタイルが美しくエンジン音も官能的。でも、そのメリットは一般生活ではデメリットになることも多い。段差の多い街中ではスポイラーを擦らないように気を遣い、狭い場所には停められないので駐車場探しに翻弄させられる。官能的なエンジン音も早朝にゴルフに出るときは近所迷惑になるからね。
日常の相棒として大活躍したM4 クーペ
そうなると、日常生活で活躍してくれるクルマが必要になるんだけど、実用性だけで選べないのがボクの悪い所。選択肢として利便性に加えて「走りの良さ」がマストな条件になってしまう。これまでにメルセデス・ベンツAMGやマセラティ グラントゥーリズモSなどを乗り継いできたけど、そのどれもが素晴らしいクルマだった。2シータークーペのスーパーカーにも負けないような性能を持っているクルマも多く、高速道路の移動でも実力を発揮してくれた。
そんなボクが最近まで相棒として乗っていたのが2016年式の「BMW M4 クーペ」だ。美しいクーペスタイルだけど実用性も抜群で、リヤシートの居住性も思ったより悪くない。ラゲッジにもゴルフバッグがスッポリと収まるし、分割可倒式のリヤシートを片側だけ折り畳めば3人乗車+3つのゴルフバッグを載せてゴルフ場まで快適に届けてくれる。エンジンは大人しい外観とは裏腹に431psを誇るモンスターだから、まさに「羊の皮を被った狼」だった。今までにBMW系のクルマはBMW M1から始まって、アルピナのB7ターボSやB3ターボ、BMW 135iクーペなどに乗ってきたけどM4 クーペは秀逸だね。
実はこのM4 クーペを手に入れたのは衝動買い。アルピナ B3ターボからの乗り換えで高額査定を貰っていたから、そのディーラーで「次もアルピナかなぁ・・・」と考えながら試乗をしていると、偶然にも友人から連絡が入って急遽M4 クーペを見に行ったんだ。右ハンドルだったのが気になったけど、美しいスタイルとヤス・マリーナブルーのボディを見た瞬間「ビビビ」とくるものがあって速攻で契約しちゃった。ボディカラーのヤス・マリーナはF1GPで使われるアブダビ(アラブ首長国連邦)のサーキット名っていうのもレース好きであるボクの琴線を刺激したのは言うまでも無い(笑)。
良妻賢母でありすべてにおいてパーフェクト
実際に相棒としてやって来たBMW M4 クーペは質実剛健のドイツ車らしい味付けで、全てにおいてカッチリとした印象が伝わってくる。ステアリングは太めで、ファーストカーのポルシェ 911 カレラSに乗り換えた時、ポルシェのステアリングがビックリするくらい細く感じるほど。エンジンは軽くてシャープでパワーも文句ない。直列6気筒のツインターボエンジンだけど、少し大きめのエンジン音の質は悪くない。最高出力が431psだけのことはあり、タイヤが冷えているとホイールスピンするくらいパワフル。ターボ車だけど下からトルクがあってナチュラルで乗りやすいんだよねぇ・・・これが。
昔のターボ車は「ドッカンターボ」が当たり前で、ポルシェ 930ターボやアルピナ B7ターボSなんかはその典型。時代の進化なのかBMWのテクノロジーなのか、最新のターボエンジンは素晴らしい仕上がりになっている。M4 クーペのパワフルさはAMGのC63に通じるものがある。スタイルはエレガントなのに中身は豪快。M4 クーペはスーパーカーにも負けない実力があると思う。唯一の問題点は3ペダルをベースにしたDCTモデルだから、ブレーキペダルが小さいことかな。まぁ、これも“慣れ“の問題のようで気になったのは最初だけだけどね。
でも、BMW M4 クーペってクルマは良妻賢母でありながらもハイスペックな実力を持つ女性のように、全てにおいてパーフェクト。一見、普通のクーペに見えるけど張り出したブリスターフェンダーが肉感的で「ボン・キュ・ボン」(笑)。走らせればトップアスリートにも負けない運動能力を持っている。すぐにクルマを乗り変えてしまうボクが3年間も愛し続け、なんと走行距離は3万km以上も走ってしまったほどだからね。趣味のゴルフや地方の公演会への足としても活躍してくれて、パワフルでありながらも高速道路での快適性も抜群だから本当に運転するのが楽しかった。
最古の“M1”から最新の“M4”まで
足まわりのバランスが良くて、少し固めの乗り心地だけどこれは走るための大きな武器になってくれた。直進安定性はもちろんのこと、コーナーでの接地感が素晴らしい。ステアリングとタイヤが直結しているような感覚があって、自分のイメージしたラインが自由自在にトレースできるんだ。
BMWをベースにしているアルピナは“しなやか”な乗り心地だったから、同じハイスペックのBMWとしては正反対の味付けだよね。M4 クーペは燃費も良く、満タン状態で500kmは走ってくれたから経済性も抜群。満タンにしておけば馴染のゴルフ場まで4往復できる。高速道路での平均燃費は10km/L前後。431psを発揮するクルマなのに普通の乗用車並みの燃費の良さって凄いよね。
最初に手に入れたBMWのモデルがM1(E26)だから、ボクは最古の“M”と最新の“M”を所有した数少ない存在かもしれないね。前にも書いたけど、ボクはモータースポーツが大好きで、ツーリングカーレースで活躍していた“M”は特別な存在なんだ。ボクにはフェラーリやポルシェのイメージがあると思うけど、BMWの“M”というエンブレムには特別な思い入れがある。
“M”のストライブは今でも大きな存在
1980年代の中頃、日本で行われていた全日本ツーリングカー選手権で長坂尚樹選手が乗っていたM1Cやヨーロッパのツーリングカーレースで活躍していたシルエットフォーミュラはかっこよかった。それに70年代後半、フォーミュラのF2ではマーチBMWのワークスマシンが真っ白なボディにMカラーのストライプがメチャクチャきまっていて、あのチャンピオンカーは憧れだった。
その影響もあって自宅のエントランスにある滝やガレージには“M”のストライプを入れてしまった。数々の跳ね馬や猛牛は全て“M”のストライプの入ったガレージに収納されていたってこと。それほど“M”という存在はボクに取って大きな存在なんだ。
もちろん、手に入れたM4 クーペも同様で、美しいヤス・マリーナブルーのボディには“M”のストライプをオリジナルで入れてもらった。まぁ、自画自賛になっちゃうけど超~似合うんだよねぇ。女子受けも良かったし。街中を走っていると子供たちが「カッコイイ~」と言いながら手を振ってくれる。フェラーリやランボルギーニのような華やかさは無いものの、純真無垢な子供たちにはシルエットの美しさや“M”が放つオーラが分かるんだろうね。
BMW M4 Coupe
BMW M4 クーペ
GENROQ Web解説:グッドバランスのM GmbH現行モデル
1972年に創設され、レース車両及びモータースポーツ関連の研究・開発を担っていた特殊部門が「BMW モータースポーツ社」だ。ミュンヘンはプロイセンに拠点を構え、ワークショップ、レーシングエンジンの組み立て、工具製作部門が併設され、生み出された3.0 CSLはヨーロッパ選手権で初優勝を果たした。その後、10年に渡り世界のツーリングカー選手権で活躍を果たし、BMWの優れた性能を世界中に知らしめたのである。
そして1978年にはBMWでは初めて“M”の称号を冠した「BMW M1」のワンメイクースであるプロカーレーシングシリーズが始まり、延べ100万人以上の観客を集める人気イベントへと成長。BMWはモータースポーツの頂点でもあるF1GPへと参戦し、1979年にはニキ・ラウダ、1989年にはネルソン・ピケがシリーズチャンピオンを獲得した。
BMWのモータースポーツ史に栄光の歴史を刻む“M”
1980年からF1GPに本格参戦を表明したBMWはパワーユニットの開発に着手し、1.5リッターの排気量を持つ4気筒ターボエンジンは800psの最高出力を発揮させることに成功。BMW(ブラバムBMW)は1987年までに通算9勝を飾ったのである。1986年にはM3(E30)の登場によって世界のツーリングカーシーンが一変。パワフルな4気筒エンジンとブリスターフェンダーを備えたコンパクトなM3はヨーロッパを始め、日本のツーリングカーレース(グループA)で連勝を飾り、BMWのスポーツカーが高性能であることを証明した。
モータースポーツシーンで輝かしい功績を残したBMW モータースポーツ社だが、1993年に社名を「BMW M(BMW M GmbH)へと変更。現在はBMWのハイパフォーマンス部門としてMモデルを送り出している。BMW M社へと名前を改めたものの、モータースポーツシーンで培ったテクノロジーはサーキットからロードゴーイングカーへとフィードバックされ、究極のダイナミクスを備えたモデルたちはストックのBMWとは一線を画する仕上がりが大きな魅力。車名に“M”の称号を持つモデルたちは「走る喜び」や「操る楽しさ」がより濃厚に味付けされ、カーマニアたちを熱狂させている。
派生バージョンを数多くリリースする人気モデル
今回、ピックアップしたBMW M4 クーペは2014年から日本への導入が開始されたミドルクラスのハイパフォーマンスモデル。BMWの代名詞である直列6気筒DOHCエンジンをツインターボで武装し、最高出力は431psを発揮した。ラインナップにはセダン、クーペ、カブリオレの3タイプが用意されライフスタイルに合わせた選択が可能。
デビュー後にDTMシリーズチャンピオンを記念した特別限定モデルやPerformance Edition/Individual Editionと名付けられた特別仕様を次々と発売。2016年にはM4 DTSが日本国内で限定販売され、同年には最高出力を450psへと引き上げることでよりパワフルなモデルへと進化を遂げた。さらにDTMシリーズチャンピオンの記念モデルとして500psの最高出力を発揮する限定車がリリースされ、M4 GTSと同様のハイスペックが与えられた。
2017年にはM3と同時にマイナーチェンジが実施され、同年には限定モデルとなるM4 CSを販売。2018年にはM4 Competitionにマニュアルトランスミッションを設定し、同年の12月にはM Heat Editionが限定発売。2018年には待望のM4 カブリオレがラインナップに加えられている。
TEXT/並木政孝(Masataka NAMIKI)
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