エンスージアストのあいだで、“ヤングタイマー”ないしは“ネオ・クラシック”と呼ばれる1980~1990年代のクルマは、今やクラシックカー ワールドにおいても確たる地位を獲得した。とくにフェラーリは、モデルによっては超高値で取引されている。
なかでも2シーター V8ミドシップモデルの人気は凄まじい。「328」や「F355」などは世界中のエンスージアストたちから寵愛を受けている。個体によっては新車価格をうわまわる金額で売買されているケースもある。
1994年登場のF355。しかし328とF355のあいだに位置する「348」は、なぜか現代のマーケットにおいては少々不人気。日本の中古車マーケットでは、もっとも高価な348より、もっとも安価な328がずっと高値で取引されているのが、長らく通例となっている。それは日本に留まらず、欧米のクラシックカー マーケットでも概ね変わらない。
その理由を考察する前に、まずフェラーリ「348tb/348ts」について振り返ろう。
348tb/348tsは、328GTB/GTSの後継車として、1989年のフランクフルト・ショーでデビュー。「288GTO」や「F40」で試行されたノウハウが投入された。
ヘッドカバーを赤く塗られた90度V型8気筒DOHC32バルブエンジンは、328以前の横置きから縦置きレイアウトに変更。ボア×ストロークともに拡大され、排気量3405ccに。結果、最高出力は300psに達し、最高速度は275km/hを実現した。
5速MTのみのトランスミッションは、1970年代中盤に活躍したフェラーリF1マシン「312T」シリーズとおなじく、ホイールベースが必要以上に伸びないよう横置きとされ、車名の“t(transverse:トランスバース=横置き)”の由来にもなった。
新技術を多数搭載した348tb/348tsは、先代の328シリーズより扱い易く、かつ高性能化を実現、1990年代フェラーリの、商業的成功を暗示するモデルになったのだ。
328を上回る走行安定性348tb/348tsが日本国内で正式発表されたのは1990年。筆者は同年、フェラーリの日本総代理店(当時)だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モータース)に入社した。したがって、348tb/348tsの人気ぶりを当事者として見ただけに、フェラーリ・ファンたちから貶されてきたような“駄作”とは、どうしても思えない。
1975年登場の「308GTB」を起源とする328シリーズがコンサバだったのに対し、348tb/348tsは革新的な技術を多数搭載した。たとえば、縦置きエンジン+横置きトランスミッションなどは、当時、かなり実験的な機構だった。
それゆえか「ハンドリングがトリッキー」「高速走行時の直進性に問題あり」などと言われたようであるが、果たして本当にそうだったのか?
当時、328GTSのデモカーを使用した新人研修で、フェラーリの運転を習い覚えた身からすると、348tbの走りっぷりは安定感抜群。高速安定性の高さに感動したことを、約30年を経た今なお鮮明に記憶している。
不確定要素の連鎖生産初期モデルは、電子制御系などのトラブルが若干多かったせいか、今でも“壊れやすい”という風評が独り歩きしている。
しかし、それらのトラブルにかんしては、早い時期から改良が施されていた。とくに1993年モデルとして登場した大規模改良版の「348GTB/GTS」、そして量産ミドシップ・フェラーリ初のフルオープンモデル「348スパイダー」は、細部を大幅にブラッシュアップし、信頼性が大幅に向上した。
348シリーズは、シャシーも革新的だった。フェラーリ製ストラダーレの常套だった鋼管スペースフレームではなく、初のスティール製モノコックを採用した。このことが、ピューリタン的フェラーリ愛好家の不興を買ったと見る向きもある。しかし、もしそうであるとするならば、シャシーの多くを共用するF355シリーズが今なお大人気であることと矛盾が生じる。
348シリーズは、いくつかの不確定要素が相まって、比較的手頃な相場が形成されているのが実情である。ただし、ここ数年のクラシックカー マーケットでは、あらゆるフェラーリの相場が高騰しているため、348シリーズもようやく正当な評価を受けるようになってきた。
それでも328やF355と比べれば、安価で入手できるケースがほとんど。とはいえ、性能を考えると、むしろリーズナブルではないか? とも思えてしまうのである。
文・武田公実
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