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【ヒットの法則138】アルファ・ブレラはジウジアーロによる華麗なるハッチバッククーペ

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【ヒットの法則138】アルファ・ブレラはジウジアーロによる華麗なるハッチバッククーペ

2005年のジュネーブオートサロンで発表されたアルファ・ブレラが実際に公道を走り始めたのは2005年末のことだった。2003年に登場したアルファGTとは一線を画し、アルファGTVの後継と言われた次世代スポーツクーペはどんなモデルだったのか。テスト車両は当初設定されたFFの「2.2JTS」と4WDの「3.2 V6」、本格生産が開始されたばかりのタイミングで行われた試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年1月号より。タイトル写真はブレラ2.2JTS)

アルファGTVの後継モデルという位置づけ
場所はフィアットのテストコース、バロッコ。初めて陽光の下で目にしたブレラは、これまで何度かショー会場で見てきたブレラより格段に格好良く感じられた。

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アルファ159とイメージを共にする突き出たノーズと先端に収まるアルファロメオの盾、それを引き立たせるかのような左右の3連のプロジェクターランプ。思いのほか張り出したフェンダー、クーペらしく寝かされたAピラーと小さなアーチ状のグリーンハウス、サイドマーカーランプから始まるキャラクターラインはリアまで回り込み、吊り目風のテールランプを取り囲んで終結する。

リアのウインドウはアルファ147風の個性的な5角形を描き、左右デュアル出しのマフラーエンドはバンパー内にビルトインされる。

ブレラのディメンジョンを明確に表しているのが真横からの低く構えたシルエット。意識的に大きく取ったオーバーハングの先端からAピラーへの流れがロングノーズを強調し、太く力強いCピラーからテールエンドへと斜めにスロープしていく様は、切り詰められたホイールベースと相まって止まっていながらにして、走りを予感させるに十分だ。

ブレラは2002年のジュネーブショーでデビューした。この時点で単なるプロトタイプでないことはデザイナーであるジョルジョ・ジウジアーロ自らが明言していた。それを実証するかのように、この年のスーパーカーラリー「パリ~モンテカルロ」で早くも全開で疾駆する姿を披露した。

そして、このいわゆる「ブレラ顔」は、その後、アルファロメオすべてのモデルに伝播していく。この顔こそがアルファロメオそのものであると言わんかのように。

そしてアルファ156の後継として、本当の「ブレラ顔」を持ったスポーツセダン、アルファ159が登場する。かくして、すべてお膳立てが揃ったところで本命ブレラの登場と相成ったのだ。

このブレラはアルファGTVの後継モデルという位置づけになる。ピニンファリーナ・デザインのGTVはアルファ155ベースで1995年デビューだからすでに10年以上を経ている。GTVには同時にデビューしたスパイダーが用意されていたことからも察せられるように、ブレラにもスパイダーが追加されるのは当然のこと。事実、今回のバロッコ取材時もテストコース内を走る「ブレラ・スパイダー」の姿があった。その幌を見事に収めたオープンのスタイリングも大いに魅力的だったことを付け加えておく。

アルファにとってブレラは、旧くは6C2500SSヴィラデステ、1900SS、アルフェッタGT、そしてアルファGTVの延長線にあるとする。つまり、アルファを代表するスポーツクーペとしての立ち位置であることを意味している。

対して2003年にデビューしたアルファGTは、ジュリエッタ・スプリントやジュリア・スプリントGTの延長線上とされるから、ブレラとは車格的に一線を画し、よりマニアックな世界を構築している。同様なクーペでありながら、アルファの歴史が2車の棲み分けを可能にしているのだ。

ガラスルーフがもたらすブレラならではの明るさ
前置きが長くなってしまった、話をバロッコに戻す。トリノからクルマで1時間ほどのところにあるバロッコは、今でこそフィアットのテストコースとして知られているが、元はといえばアルファロメオのテストコースだった。

アルフィスタにとっては、ムゼオがあるミラノ郊外のアレーゼと共にここは聖地なのである。そのバロッコで新世代アルファスポーツと対峙できることは幸せとしか言いようがない。

ブレラのボディをさらに仔細に見ていこう。本当の「ブレラ顔」は一見アルファ159だが微妙に違いを見せている。例の盾は小振りとなり、その上部にあったクロームはなくなりスッキリさせている。盾の下部は159のようにバンパーのリップ部には繋がってなく、その分バンパーのインテークのエリアは大きく確保されている。

大きく見ればバンパー形状の違いなのだが、ブレラならではのシャープさが演出されているのだ。リアに回ると中央にいつものエンブレムがあり、それがゲートの取っ手を兼ねている。そして、ユニークなことにその下にブレラのエンブレムが収まる。

排気量を示すようなものは一切用意されず、2.2JTSと3.2 V6を見極める手立てはホイール越しに覗くブレーキローター径の大小でしかない。

アルファ159と共通のドアハンドルを引いて大きめのドアを開く。取っ手を含めたドア内張りのデザインこそアルファ159と異なってはいるものの、インパネ周りのデザインはアルファ159と共通である。

唯一異なるのは、より繊細さを増したメーターの刻みぐらいである。個人的にはここは普段接する箇所だけにブレラならではの個性を演出して欲しかった。トランクオープナーのボタンはセンターコンソールボックスの内側にある。これはスパイダーを想定しての指定席だと思う。

アルファらしい細身のヘッドレスト一体となったシートに収まり、見上げるとガラスルーフによる明るい世界が広がる。これはブレラの最大のポイントで、クローズドボディでありながらもオープン的な光を感じることができるのだ。3分割の電動式シェードが用意され夏場の暑さを凌ぐことも可能とする。

振り返るとリアにはあくまでも「プラス2」としか思えないシートが備わっている。実際、座ってみてもフットスペースもヘッドスペースもミニマムと言っていいレベル。このあたりはアルファGTVも同様だったから、スポーツクーペと割り切るしかない。

このリアシートは分割可倒式でラゲッジスペースを拡大することも可能だが、最大600Lの容量は弟分であるGTに及ばない。

軽快スポーツの2.2JTS、豪快スポーツの3.2V6
まずは2.2JTSに乗り込む。電動アジャストでシートポジションを合わせ、アルファ159と同じくキーをスロットに差込みスターターボタンを押す。節度感はあるものの、相変わらずストロークの大きいシフトを1速に入れる。

走り始めてすぐに感じるのがクイックになったステアリングだ。アルファ159をベースとしていながらも、ホイールベースを175mm切り詰めたことや、それに合わせたサスペンションのジオメトリー変更が効いているのだろう。

確認したところによれば、ダンパーもスプリングもアルファ159とは異なっているとのことだ。アルファ159がセダンとして敢えてステアリングをダルに設定しているのに対し、ブレラはスポーツ指向を明確に打ち出している。

直噴化されたエンジンは相変わらずフレキシブルだ。ロングストロークを利して2000rpmあたりから十分実用的なトルクを引き出してくれる。6速MTは1速こそ低めだが、そこから先はギア比がクロスしているためシフトワークを楽しむことができる。

その気になればキッチリと6800rpmまで引っ張れるのもいい。6速での100km/h巡航は2900rpmで、ここからのレスポンスも鋭いから、シフトダウンせずとも加速態勢に持ち込める。車重はアルファ159より20kg軽い。そのためギア比は同じながら、メーカー値による0→100km/h加速は0.2秒短縮され8.6秒とされている。

この2.2JTSは全体に軽快感に溢れている。先のクイックなステアリングに加えて、フロントの荷重が少ないためだろう、FFにもかかわらずコーナーでノーズがスッと入っていくのだ。それでいてステアリングを通してのインフォメーションはしっかり伝わってくるから安心して舵を当てられる。アルファ159にはなかったこのスポーツ性こそがブレラならではの持ち味と言える。

タイヤは17インチと18インチを試したが、パワーやサスペンションとのバランスでは肝心の軽快感を失わない17インチが好印象だった。

続いて3.2 V6に「テストコース内のみ」という条件で乗る。3.2 V6はアルファ159と同じくトルセンCデフを用いた4WD機構「Q4システム」を採用している。この新しいV6は旧V6に比してトルクフルなることが売り。6速で1500rpmなんていうずぼらなドライビングも許容してくれながら、一度鞭を当てれば4000rpmから上のアルファ流豪快ドライビングの世界へ瞬時に持ち込める。

高回転でのレスポンスの良さとサウンドの心地良さには、ヘッドチューンのアルファの意地が込められている感じがする。ちなみに6速での100km/hは2200rpmと余裕綽々の領域だ。

2.2JTSの軽快感に対して3.2 V6は「力ずく」と言えばいいのか、豪快な走りが楽しめる。4WDとパワーを利してコーナーではともかく正確に舵を当てていれば良く、そこを抜けての立ち上がりではリアからのトラクションを感じながら矢のような加速に持ち込める。こちらもメーカー値によれば、アルファ159比で110kg軽くなったため0→100km/h加速は0.2秒縮まり、6.8秒をマークしている。

タイヤに関しては17インチが軽快感を伴うのに対して、18インチは突き上げが大きいもののグリップの高さが感じられる。バランス的には18インチの方に軍配を上げたい。

2006年4月には日本導入、続いてスパイダーも!
ブレラはスポーツドライビングを楽しむとともに、そのスタイリングを楽しむクルマでもある。その意味では2.2JTSが本命なのかもしれない。185psのパワーは街乗りから高速まで十分にこなしてくれるし、17インチタイヤをセットしての軽快感と乗り心地の良さはオールマイティとも言える。むしろ持てるポテンシャルをフルに引き出す楽しみが残されている。

対して3.2 V6はブレラのGTA的な存在である。260psのパワーは豪快さを引き出すのに十分なばかりか、Q4システム+18インチタイヤがもたらす安定感は半端なスポーツカーをも凌駕する。とは言ってもサーキットを楽しむクルマではなく、あくまでもスポーツ心を楽しむクルマであろう。

その点では3.2 V6の価値は高い。このブレラはアルファ159と同様に目下のところ6速MTのみの設定だ。ともに3.2 V6にはATを組み合わせる予定だが、現在はまだ手付かずの状態だ。

一方、ブレラの場合、2.2JTSにも6速ATを検討しているという。アルファ159の2.2にはセレスピードが予定されているから、クルマの性格分けをキッチリ行うということなのだろう。通常は共用化が進められるが、こんなところもアルファらしい。

ブレラのヨーロッパでの販売は2006年1月からで価格は3万4000~4万5000ユーロ(約476~630万円)と発表された。製造はバロッコから50kmほどトリノ寄りにあるピニンファリーナのサンジョルジョカナベーゼ工場で行われ、年産ではクーペが1万2000台、スパイダーが7000台を予定していて、プラス10%の増産には対応可能という。ブレラのスパイダーは2006年3月のジュネーブショーで披露される。

日本へのブレラの導入は2006年4月が予定されている。1月のアルファ159に続く2006年の日本でのアルファロメオ攻勢、アルフィスタならずとも大いに期待したい。(文:河原良雄/Motor Magazine 2006年1月号より。日本導入は2006年4月、グレードは「2.2JTS」と「3.2JTS」の2タイプだった)



アルファロメオ アルファ ブレラ2.2JTS(2006年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4413×1830×1372mm
●ホイールベース:2525mm
●車両重量:1470kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:2198cc
●最高出力:185ps/6500rpm
●最大トルク:230Nm/4500pm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FF
※欧州仕様

アルファロメオ アルファ ブレラ3.2 V6(2006年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4413×1830×1372mm
●ホイールベース:2525mm
●車両重量:1630kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3195cc
●最高出力:260ps/6200rpm
●最大トルク:322Nm/4500pm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:4WD
※欧州仕様

[ アルバム : アルファロメオ アルファ ブレラ はオリジナルサイトでご覧ください ]

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  • この当時のアルファロメオのデザインは神がかってた。
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