人間の声から作り出した固有の生体認証IDをナットに刻む
1月28日、フォードは愛車のホイールを盗難から守るために3Dプリント技術を用いたロックナットを開発したと発表した。
この新しいロックナットには、一般的に市販されているロックナットと同様、ナットを緩めたり締めたりするときに使う専用アダプターを用いるが、そのアダプターをナットにかみ合わせる溝の形状が非常に特殊なものとなっているのが特徴だ。
このロックナットに刻む溝は、そのクルマの持ち主など、人の声を形にしたもの。人間の声は、網膜や指紋などと同様に固有の生体認証IDとして使用できるのだ。
このロックナットの場合、たとえばそのクルマのオーナーに「私はこのフォード・マスタングをドライブします」といった声を最低1秒間録音し、ソフトウエア上でその音波を物理的に印刷可能なパターンに変換。このパターンを円形に変えて、ロックナットおよびアダプターに刻む。これにより、世界にひとつの実に複雑な溝を持つホイールロックナットが誕生する。
これを実現したのが3Dプリント技術だ。この特殊なナットは耐酸性、耐腐食性に優れたステンレス鋼を使用し、3Dプリンターによって形成。完成後に多少の研磨を加えれば完成だ。
いまでこそ3Dプリント技術は珍しいものではなくなったが、フォードでは30年以上にわたりこの技術を使用して、新型車を開発する時間を短縮させるためにプロトタイプ部品を造ってきた。さらに華麗なドリフト走行を披露することで世界的に有名なラリードライバー、ケン・ブロックが乗る「Hoonitruck(フー二トラック)」に搭載するエンジンのインテークマニホールドや、WRCに参戦しているMスポーツのフィエスタWRCのウインドールーバーなどは、この技術によって生み出されたものだ。
また同社の工場では現在、3Dプリント技術を使用した組み立てラインツールを使用している。これは従来のツールに比べて最大で50%軽量化できることで、繰り返し使う作業スタッフの物理的ストレスを軽減し、製造品質が向上。さらに生産ラインの工作機械に使用される各種安全装置にも活用することで、オペレーターのケガを防ぐことにも役立てられている。
今後同社では、この3Dプリント技術を用いて「フォードGT」や「フォーカス」、「マスタングGT500」に使用するパーツを作成する予定とのことだ。
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っていうか溝自体が複雑になったとしても、きっちりこの形でなくとも外せるだけのトルクで回せるキーを作られたら意味ないのでは?