現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 全身でフェラーリの歴史を感じ取る博物館【第12回 ムゼオ・エンツォ・フェラーリ】

ここから本文です

全身でフェラーリの歴史を感じ取る博物館【第12回 ムゼオ・エンツォ・フェラーリ】

掲載 更新
全身でフェラーリの歴史を感じ取る博物館【第12回 ムゼオ・エンツォ・フェラーリ】

フェラーリには、オフィシャルのミュージアムが2つある。ひとつはマラネッロ本社から歩いていける距離にある「ムゼオ・フェラーリ」。そしてもうひとつは、モデナにある「ムゼオ・エンツォ・フェラーリ」だ。

今回紹介するのは、ムゼオ・エンツォ・フェラーリ。開館日は、2012年3月10日。当初は、エンツォの誕生日である2月18日に開館する予定だったが、天候不順のために延期されたという経緯がある。

2代目にして熟成感すら漂う新型CLAの完成度

ミュージアム棟の屋根には通気ダクトが。フェラーリ車の各部に入れられるエアダクトを彷彿とさせる。開館当初の正式な施設名は、「ムゼオ・カーサ・エンツォ・フェラーリ」。エンツォ・フェラーリ生家博物館とでもいおうか。ミュージアムは、極めて未来的な有機的なラインをもつ建物と、イタリアのどこにでもありそうな2階建ての煉瓦積みの建物のふたつで構成されている。

古い建物は、正真正銘エンツォの生家。板金工であったエンツォの父が建てた住居兼工房だった建物だ。現在はリノベーションされて、展示&ワークショップ棟に生まれ変わった。

施設内の展示スペース。リニューアル前は、ここからガラス越しにエンツォの生家を眺めることができたという。エンツォの生家は、生前のエンツォによって売却されていたこともあり、ミュージアムの施設とするためにかなり苦労したというエピソードが残っている。

カナリア・イエローの屋根とファサードのガラスのカーブした壁が特徴的なミュージアム棟は、フューチャー・システムズを主催していた建築家ヤン・カプリッキーの設計。しかしコンペで彼の案が選ばれたものの、夭折したためにフューチャー・システムズの当時のスタッフであるアンドレア・モルガンテが完成させた。

真っ白な空間に鮮やかなクルマがよく映える。このあたりの見せ方はさすがフェラーリといったところ。カナリア・イエローは、モデナの市旗にも使われるモデナのシンボルカラーであり、エンツォが好きだった色でもある。そのカナリアイエローの屋根には、5つのエラのようなスリットが2列並んでいる。クルマ好きであれば、それがフロントフェンダーやボンネットに穿たれた通気ダクトがモチーフであることにすぐに気がつくだろう。博物館の屋根のスリットは、自然換気と自然光を取り入れる役割を担っている。

リニューアル後に設けられたミュージアム棟の壁面。壁にはタルガフローリオでレースデビューしたエンツォが描かれている。航空写真で見る博物館の2つの建物は、古い生家を黄色い屋根のミュージアム棟が飲み込まんとするかのような印象だ。ミュージアム棟の高さは12m。これは展示&ワークショップ棟と同じレベルにするためだ。黄色い屋根は3300平方メートルの広さを誇り、アルミ製である。ちなみにこのミュージアム棟は、2013年の王立英国建築家協会によるスターリング賞を受賞している。

正面の壁面だけでなく、天井と両サイドの壁もスクリーンとして使われる。12.5度の傾斜がつけられたガラス張りのファサードからミュージアム棟に入ると、見下ろすようにして館内を見渡すことができた。正面から見て左にある緩やかなスロープで地下の広いエリアへとアプローチしながら、展示車両を鑑賞するという流れだ。

屋根のスリットからの自然光は、半透明の白いスクリーンによって拡散され、展示車両を優しい光で包んでいた。白いスクリーンは、いわばデュフューザーの役割を担っていたということだろう。ガラスのファサードから入ってくる自然光もあり、柱など一切ない館内は、全体的に明るく、巨大な真っ白なひとつの空間であった。館内がライトアップされる夜などは、ガラスの壁を通して外からでもミュージアムの全景を眺め渡すことができた。

壁のスクリーンではフェラーリの歴史を辿る映像が上映される。上映は1時間ごとに設定されている。これは、はじめてこのミュージアムを訪れた2013年11月に受けた印象だ。

その数カ月後、2014年2月に再び訪れた時には、ミュージアム棟はすでにリニューアルが施された後であった。ミュージアムはフェラーリの直接管理となり、その名も「ムゼオ・エンツォ・フェラーリ」へと改名されていた。

新しくなったエンツォの生家をリノベーションした展示&ワークショップ棟。ここにはフェラーリのエンジンが展示されている。エンターテインメント空間へと変貌リニューアル後の大きな変更点は、館内に入ってすぐのところにできた黄色い壁だろう。壁の一部に設けられた出入り口からミュージアム内部へと入ると、かつてと同じ白い壁と天井の大空間はそのまま健在。車両が散りばめられるように展示されているのも同じ。

違うのは、ファサードのガラス壁と天井から自然光が入らなくなった点だ。これは、おおよそ1時間おきに館内全体を使ったムービーを映し出すためである。照明が落とされた館内は暗くなり、新たに設けられた壁をメインスクリーンとして、フェラーリの歴史を辿るムービーが上映されるようになったのだ。左右の壁や天井もスクリーンとして用いられ、19台のプロジェクターによって映像が投影される仕組みとなった。

エンツォを振り返る部屋は、彼が万年筆でサインする際に紫のインクを使っていたことにちなんで、全体が紫色に照らされている。展示車両をただ静かに鑑賞するだけではなく、繭の中にいるようなミュージアムの真っ白な空間全体を使って、音楽と映像に包まれるというプラスの体験は鮮烈にして新鮮。ヤン・カプリッキーの当初のプランニングにはなかったであろう空間の使い方は、ミュージアム棟に新たな価値を加えることに成功したといえるだろう。

歴史ある建物の展示&ワークショップ棟も生まれ変わった。かつては仕切りで区切られて光で演出された展示内容が、建物の構造をそのまま利用したシンプルな展示へと変更された。

展示内容もエンツォゆかりのものばかりではなく、フェラーリの歴代エンジンをテーマごとに見せるというものに変更され、見応え充分だ。

とあるイベントのガラパーティで訪れた際のミュージアム。着席してフェラーリを眺めながらの食事は最高だ。ミュージアム棟は、冬場は18時、夏場は19時以降にプライベートパーティやビジネスディナーなどのイブニングイベントで使用することもできる。あるイベントのガラパーティに出席したことがあるが、歴代フェラーリに囲まれながらのディナーは格別なひとときだった。こうしたパーティでは、オリジナルの映像を流すことも可能とのこと。フェラーリ好きのカップルなら、ウエディングパーティーをムゼオ・エンツォ・フェラーリで催してみてはいかがだろう。

ちなみに、マラネッロにあるムゼオ・フェラーリとはシャトルバスで行き来することができる。展示されている車両は、展示テーマによって入れ替えられるので、事前にホームページで確認してから訪れることをオススメする。

Museo Enzo Ferrari
ムゼオ・エンツォ・フェラーリ
開館時間:9:30~18:00(11月~3月)、9:30~19:00(4月~10月)
休館日:12月25日、1月1日
所在地:Via Paolo Ferrari, 85, 41121 Modena
TEL:+39 059 4397979
URL:https://musei.ferrari.com/en/modena

文・尾崎春雪 編集・iconic

こんな記事も読まれています

マツダ、欧州で3列シートSUV「CX-80」を初公開
マツダ、欧州で3列シートSUV「CX-80」を初公開
月刊自家用車WEB
トヨタ新型「“9人乗り”ミニバン」発表! 全長4.4m級から選べる「超静音モデル」! 精悍顔の「新プロエース」に反響も…約643万円から英に登場
トヨタ新型「“9人乗り”ミニバン」発表! 全長4.4m級から選べる「超静音モデル」! 精悍顔の「新プロエース」に反響も…約643万円から英に登場
くるまのニュース
知らない土地を走るときは「ローカル・ルール」にご注意!「名古屋走り」や「茨城ダッシュ」の意味をご存知ですか?
知らない土地を走るときは「ローカル・ルール」にご注意!「名古屋走り」や「茨城ダッシュ」の意味をご存知ですか?
Auto Messe Web
マツダばかりの2日間! 「MAZDA FAN FESTA 2024 IN TOHOKU」は老若男女がモータースポーツを楽しめるコンテンツ満載だった
マツダばかりの2日間! 「MAZDA FAN FESTA 2024 IN TOHOKU」は老若男女がモータースポーツを楽しめるコンテンツ満載だった
WEB CARTOP
【日本にも導入予定】マツダ、3列SUV「CX-80」を欧州で発表…伸びやかなスタイリング
【日本にも導入予定】マツダ、3列SUV「CX-80」を欧州で発表…伸びやかなスタイリング
driver@web
これもフォーミュラEの魅力? 日産ローランド、エネルギー節約の団子レースは「新しいファン層を作るきっかけになる」
これもフォーミュラEの魅力? 日産ローランド、エネルギー節約の団子レースは「新しいファン層を作るきっかけになる」
motorsport.com 日本版
GB350からエクステリア全部変えた! 高コストな燃料タンクまで新作したGB350Cの開発者に聞く
GB350からエクステリア全部変えた! 高コストな燃料タンクまで新作したGB350Cの開発者に聞く
WEBヤングマシン
大人にゃ出せないアイディア力! 中高生が自由な発想で競った「モビリティデザインコンテスト」に脱帽!!
大人にゃ出せないアイディア力! 中高生が自由な発想で競った「モビリティデザインコンテスト」に脱帽!!
WEB CARTOP
トヨタ自動車がスポーツメディアを立ち上げ…『トヨタイムズスポーツ』開始
トヨタ自動車がスポーツメディアを立ち上げ…『トヨタイムズスポーツ』開始
レスポンス
DAZNの人気F1番組にレギュラー出演できる! 『WEDNESDAY F1 TIME』PRアンバサダーオーディション開催。エントリーは4/29まで
DAZNの人気F1番組にレギュラー出演できる! 『WEDNESDAY F1 TIME』PRアンバサダーオーディション開催。エントリーは4/29まで
motorsport.com 日本版
1990~2000年代の国産スポーツって軒並み価格高騰かと思ってた! 「こんな値段で買えるの?」的中古スポーツ4選
1990~2000年代の国産スポーツって軒並み価格高騰かと思ってた! 「こんな値段で買えるの?」的中古スポーツ4選
WEB CARTOP
次期ホンダ「CB1000ホーネット」「CB1000R」にもEクラッチ採用!? レブル250/CL250に続くのはCB1000系か
次期ホンダ「CB1000ホーネット」「CB1000R」にもEクラッチ採用!? レブル250/CL250に続くのはCB1000系か
WEBヤングマシン
トヨタ、ランドクルーザー250を発売 2.8Lディーゼルと2.7Lガソリンを設定 520万円から
トヨタ、ランドクルーザー250を発売 2.8Lディーゼルと2.7Lガソリンを設定 520万円から
日刊自動車新聞
正確、確実、多用途! ダイナミックな走行テストを受ける新型「BMW X3」
正確、確実、多用途! ダイナミックな走行テストを受ける新型「BMW X3」
LE VOLANT CARSMEET WEB
ロータリーエンジン復活へのノロシ!? 半世紀前に登場した近未来デザインスーパーカー マツダ「RX500」が実車展示 その深い歴史とは
ロータリーエンジン復活へのノロシ!? 半世紀前に登場した近未来デザインスーパーカー マツダ「RX500」が実車展示 その深い歴史とは
VAGUE
マツダ新型「最上級セダン」世界初公開!? “横一文字”テール&「後輪駆動」採用!? 新型「マツダ6!?」まもなく中国に登場か
マツダ新型「最上級セダン」世界初公開!? “横一文字”テール&「後輪駆動」採用!? 新型「マツダ6!?」まもなく中国に登場か
くるまのニュース
チームメイトに敗北が続くシャルル・ルクレール、言い訳はなし? 「彼はシンプルに良い仕事をしてる」
チームメイトに敗北が続くシャルル・ルクレール、言い訳はなし? 「彼はシンプルに良い仕事をしてる」
motorsport.com 日本版
トヨタ プリウス、13万台をリコール…走行中にドアが開くおそれ
トヨタ プリウス、13万台をリコール…走行中にドアが開くおそれ
レスポンス

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村