■日本未導入の高級セダン「マキシマ」とは
日本では、近年「SUVブーム」といわれる一方で、「セダン離れ」が叫ばれています。その影響もあって日本の自動車メーカーが国内向けに販売するセダンのラインナップが減りつつあり、日産も例外ではありません。
しかし、海外市場に目を向けると「セダン」の人気は衰えるどころか依然として好評だというのです。
日本市場において、セダンの人気が低迷しているなか、「スカイライン」は2019年夏にの大規模マイナーチェンジを実施し、スタイリングやメカニズムを大幅アップデートしました。しかし、「シーマ」や「フーガ」は小変更を加えつつ長期間にわたって販売しています。
また、日本では2012年にデビューし現在も販売されている「シルフィ」においては、海外市場向けに新開発プラットフォームを使った新型モデルがデビューしているのです。
さらに、「ティアナ」は2019年末で日本向けの生産が終了し、現時点では新型にフルモデルチェンジするという公式発表はありません。
そんなティアナの海外向けモデルである「アルティマ」も驚くほどスタイリッシュな新型へとモデルチェンジするなど、日本市場が置き去りになっている、といってもいいでしょう。
また、北米ではさらに上級かつ新しいラージセダンもラインナップされています。それが日産の上級セダンでV型6気筒エンジンを搭載する「マキシマ」です。マキシマとはいったいどんなモデルなのでしょうか。現地で試乗してみました。
実車を前に感じたのは、驚くほどシャープでアグレッシブなデザインだということです。さすが北米における日産のフラッグシップセダンだけあって、ボディサイズは全長4897mm×全幅1859mmと大型ですが、大型車が多い現地では異様に大きいと感じるほどのサイズでもありません。
それよりも感じたのは、“攻めた”デザインです。日本で売っている日産のセダンは、スカイラインやフーガなどインフィニティ系のモデルはエレガントな雰囲気を醸す一方で、シルフィやティアナは端正ではあるもののあまり個性的ではない意匠で、保守的なデザインです。
一方で、2018年秋にマイナーチェンジを受けてリフレッシュされたマキシマのデザインは、若々しさを全面的に表現したスポーティかつ先進性を感じるものといえます。
上部にツノのように鋭い突き出しがあるヘッドライトや、サイドガラスを絞り込んだような黒いラインのアクセントが入ったCピラーなど、ディテールも攻めています。大きく張り出しているように見えるリアフェンダーも魅力的です。
このチャレンジングなデザインは好き嫌いが分かれることでしょう。しかし日本でも、退屈なセダンではなくこんな攻めたデザインが欲しいと感じる人も多いのではないでしょうか。
ライバルはトヨタ「カムリ」やホンダ「アコード」ですが、それらよりもシャープで若々しさを感じます。
一方、内装デザインは外観ほど攻めたデザインではありませんが、プレミアム感が印象的です。シートは繊細な肌触りが自慢のセミアニリンレザーで、座面と背もたれにダイヤモンドキルト処理が施されていることもあって乗り込む瞬間にラグジュアリーさが伝わってきます。
まるで「キャデラック」などプレミアムブランドのような仕立てに驚きです。ドアのアームレスト部分にまで大胆に本革をコーディネートし、またダッシュボードやセンタコンソールはリアルステッチ入りのソフトパッドを張ってあり、これも上質さを印象付けるポイントといえます。
■アメリカならではのV型エンジンを搭載したマキシマの魅力とは
パワートレインは、3リッターV型6気筒(V6)で、304馬力を6400回転で発生。エンジンの型式がVQ35DEので日本の「エルグランド」に搭載されているものと型式上は同じですが、エルグランド用の280馬力に対して高出力化され、さらには2015年のマキシマのデビューに合わせて構成部品の約6割を新設計としたバージョンに進化しているのがポイントです。
驚いたのは、官能性でした。日産の直列6気筒といえばかつては直列のRB系、最近はVQ37HRなどで躍動的なフィーリングに定評がありますが、マキシマのVQ35DEエンジンもそれらに負けず劣らず音や拭け上がりの爽快感がダイナミック、かつ中回転域で伝わってくる鼓動が心地よく、運転していて気分が高揚してきます。もちろん、高回転まで気持ちよく吹け上がるのはいうまでもありません。
ちなみに北米の日産セダンのラインナップにはひとつ下のポジションに「アルティマ」が存在し、車体は基本設計を共用しているのでこのマキシマとほぼ同じサイズ。しかし、マキシマが6気筒エンジンを搭載するのに対してアルティマは4気筒と差をつけています。
アメリカのドライバーは信号が赤から青になったときに、日本と比べてアクセルを踏み込み気味でグングン車速を上げます。
また、フリーウェイに合流するときにもしっかりと加速します。だから低回転トルクの太い大排気量V6エンジンの特性が求められるのですが、加速時に軽快な音を響かせるマキシマのエンジンはそんなシーンでスポーティな雰囲気を味わえる味付けでした。
一方で、ハンドリングは日本で好まれるようなシャープなフィールではなく、ゆったりとしたフィーリングでした。
クルーズコントロールをセットしてフリーウェイを巡航するときは、直進性がしっかりと確保されているので、ロングドライブでもドライバーが疲労しにくく、また車体のフラット感が保たれているので同乗者も快適。そのあたりはスポーツセダンを自称していつつも、アメリカらしい味付けといえるでしょう。
そんなマキシマに触れて実感した最大の魅力は、やはりカッコいいデザインでした。現行世代(8代目)の初期モデルがデビューしたのは2015年の6月なので、もう4年以上が経過していますが、アバンギャルドで研ぎ澄まされたデザインゆえに、今でも色褪せは全く感じませんでした。
確かに、V6エンジンを積んだプレミアムセダンは、いまの日本では多くの販売台数を見込めないかもしれません。
しかし、せっかくアメリカで販売されているこのクールなセダンを、日本で買えないのはなんとももったいない気がしました。
4気筒エンジン、もしくはこの先進的なルックスにふさわしいハイブリッドシステム(次世代のe-POWERなど)を搭載して日本でも発売したら、歓迎する人は少なくないのでないでしょうか。
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みんなのコメント
セダン頑張って欲しい。
高校卒業時、親父が日産座間工場・相武台寮まで送ってくれました。
もうあれから40年が過ぎてしまいました。
後に初代FFブルーバード1800SSSーEXに乗り換えた親父が「V6の2000ccブルーバード・マキシマ」のカタログを見ていたのを思い出します。